「今は派遣社員だけれど、この先は直接雇用されたい!」というとき、
「紹介予定派遣」を利用してみたいなあ…。でもイマイチだったら、直接雇用を断ることはできるの?
こんな疑問が出てくるかもしれません。
「働いたうえで断る」のはけっこう気まずいですし、かといってそのまま雇用されるのもツライですよね。
そこでこの記事では、「紹介予定派遣」で直接雇用を断ることはできるのか、断るポイントや「紹介予定派遣」の基本ルール、メリット・デメリットまでご紹介します。
僕が以前、派遣会社の営業ではたらいていたときの実体験もまじえて、解説しますよ。
「紹介予定派遣を利用するうえで、ギモンをなくしたい!」というときは、ぜひご覧ください。
◆「派遣社員についての情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「派遣社員とは?わかりやすく解説」
紹介予定派遣で直接雇用を断ることはできる?
まずは、紹介予定派遣で直接雇用を断ることはできるのか、確認しましょう。
紹介予定派遣で直接雇用を断ることはできる
紹介予定派遣で、派遣先との直接雇用を断ることはできます。
断っても、何も問題はありません。
逆に、直接雇用を断らず、入社後2ヶ月ほどで辞めてしまうほうが怖いです。派遣先から、なぜかこちら(派遣会社の担当営業)が怒られてましたから…。
これは、紹介予定派遣制度が「派遣先と派遣労働者の希望が合った場合に、直接雇用を行う」という主旨のため。
派遣先と派遣社員がお互いを見極めることができ、安定的な直接雇用につなげるための制度です。
断りづらいとは思いますが、制度の目的を思い出し、自分の意思をしっかりと担当営業に伝えましょう。
紹介予定派遣で直接雇用となるのは約半数(データから)
日本人材派遣協会のデータを見ると、下図のとおり紹介予定派遣で直接雇用となるのは約半数であることがわかります。
たとえば、2018年度は30,117人が紹介予定派遣によって派遣されましたが、直接雇用となったのは15,453人で、全体の51.3%。
ほかの年もだいたい同等の比率です。
このデータでは、断ったのが派遣先・労働者どちらなのかは不明ですが、半数が直接雇用にならない事実を知っていれば、断るのも気が楽になりますよね。
紹介予定派遣で直接雇用を断るときのポイント
次に、紹介予定派遣で直接雇用を断るときのポイントをご紹介します。
断る連絡は派遣元に、できれば直接担当者に伝える
紹介予定派遣を断る連絡は、派遣先ではなく派遣元(派遣会社)の担当営業にしてください。
それと断るときは、できるだけメールなどではなく、直接会って伝えましょう。
メールでは、次項でご紹介する「断る理由」がしっかり伝わりません。
すると担当営業としては、
断った理由をちゃんと話してくれないから、次にどの会社をすすめればいいのかわからない…。しばらく仕事を紹介するのはストップするか…。
と判断する可能性大です。
直接会って、断る理由ととも「次はできればこういう会社を紹介してほしい」と伝えましょう。
紹介予定派遣で断るときは、気まずくても「理由を明確に伝える」
紹介予定派遣で断るときは、気まずくても「理由を明確に伝える」ようにしてください。
これは前項と共通するのですが、「断る明確な理由」がわからないと、担当営業としては次の仕事をご紹介しづらくなってしまいます。
たとえば、
えっ!断った理由ですか?いや~、なんとなく…
と言われると、もうどうしようもありません。
ちゃんと会話して、真意をくみとってくれる担当営業もいますが、そうでない人なら「もうこの人にお願いするのヤメよう…」でおしまいです。
気まずくても「じつは、派遣先の社員さんからセクハラまがいのことを…」など、具体的に伝えれば、担当営業のほうでも対策がたてられます。
できるだけ、事実をありのままに伝えるようにしましょう。
派遣前の「企業との面接後」に断ることも可能
紹介予定派遣ではたらく前の「企業との面接後」に、派遣に行くことを断ることもできます。
「企業との面接」というと、どうしても企業側(派遣先)が選ぶことだけを考えがち。
ですが面接は同時に、派遣社員側が派遣先を選ぶための機会でもあります。
そのため、面接で訪問した職場の雰囲気や仕事内容が、「あまりにも思っていたものと違う」ようなら断りましょう。
その違和感が多少であれば、ガンバってみることをおすすめします。「行ってみたら、なかなか良かったです!」というスタッフさんがけっこういましたから。
ただし「企業との面接後」に断るときでも、前項のように「明確な理由」を、担当営業に伝えることは忘れないでください。
紹介予定派遣では企業側が直接雇用を断ることもある
ここまでは「派遣社員側が断ること」を考えてきましたが、紹介予定派遣では企業側(派遣先)が断ることもあります。
あくまでも「派遣先・派遣社員の両方が同意したとき」のみ直接雇用というルールですので、これはしょうがないですね。
公的なデータはありませんが、僕の経験では「派遣先側が断る」が1/3、「派遣社員側が断る」が2/3という感じでしたね。
ちなみに派遣先が断ったとき、派遣会社が求めれば、派遣先はその理由を明示しなくてはなりません。
「この会社には入りたかったのに…」というときは、担当営業をとおして、断られた理由を聞いてみると今後にいかせますね。
紹介予定派遣の基本ルールをご紹介
次に、「紹介予定派遣」の基本的なルールをご紹介します。
[ルール①]紹介予定派遣とは、直接雇用を前提に派遣として働く制度
「紹介予定派遣」とは、派遣先での直接雇用を前提として派遣社員としてはたらく制度で、登録型派遣の一形態です。
わかりやすく図解すると、まず派遣社員としてはたらくとき、「派遣社員(C)」と雇用関係にあるのは「派遣会社(A)」となります(下図左)。
その後「派遣先(B)」と「派遣社員(C)」のどちらも同意すれば、「派遣社員(C)」と「派遣先(B)」が雇用関係です(下図右)。
1999年に導入され、2003年の派遣法改正によって条文に明確化されました(労働者派遣法2条)。
基本的なルールは一般の派遣と変わりませんが、「紹介予定派遣」独自のルール(「履歴書送付・面接OK」や「派遣期間6ヶ月まで」など)も。
ぜひこの記事で、「紹介予定派遣」のルールを確認して、あまりよくない派遣先や派遣会社にダマされないよう役立ててください。
[ルール②]紹介予定派遣の流れ
「紹介予定派遣」の流れは、大まかには次のようになります。
一般の派遣では原則禁止されている「派遣先への履歴書提出や面接(上記4)」が許されているのも、紹介予定派遣の特徴です。
また、あくまで「派遣先と派遣社員、両方の合意(上記7)」によって直接雇用されます。
派遣終了後、強制的に直接雇用されるものではありませんので、安心してください。
[ルール③]派遣期間は最長6ヶ月
「紹介予定派遣」としてはたらくとき、派遣期間は最長6ヶ月です。
6ヶ月以内であれば、派遣先が自由に期間を決めていいことになっています。
これも公的なデータはありませんが、僕の経験では「3ヶ月」が最も多く、次いで「1~2ヶ月」、その次が「6ヶ月」でした。
3ヶ月が多いのは、やはり「紹介予定派遣」を「試用期間」としてとらえている派遣先が多いためかもしれません。
少し古いデータですが、2012年の調査結果では、試用期間がある企業の65.7%(中途採用の場合)で、試用期間が3ヶ月となっていました(労働政策研究・研修機構の調査より)。
[ルール④]直接雇用後の試用期間は原則としてない
「紹介予定派遣」で直接雇用となってから、試用期間は原則としてありません。
これは、「派遣期間が試用期間にあたる」という考え方によるもの。
厚生労働省でも「試用期間を設けることは望ましくない」として注意喚起をしています(労働者派遣事業関係業務取扱要領にて)。
ただし、あくまでも「望ましくない」であって、ゼッタイに試用期間を設けてはいけないわけではありません。
それでも「直接雇用後に試用期間があるかどうか」は、派遣先と派遣会社での「派遣契約」によって、ほとんどの場合は担当営業は知っているはず。
紹介予定派遣ではたらき始めるとき、派遣会社の担当営業に「直接雇用後に試用期間がありますか?」と聞いてみましょう。
[ルール⑤]必ず正社員になれるわけではない
「紹介予定派遣」で直接雇用されるといっても、必ず正社員になれるわけではありません。
「有期雇用(期間の定めのある雇用契約)」でも問題ないため、契約社員というケースもありえます。
僕が派遣会社の営業をしていたときは、「正社員」と「契約社員」は1:3くらいでした。
さすがに「パート」ってことなはかったですが…
直接雇用されてから、
えっ!正社員じゃなくて契約社員なの…
なんてことがないよう、派遣される前に担当営業にしっかり確認しましょう。
ただ、なかには、派遣期間中にその条件を変更する会社もあります。
ですから念のため、再度担当営業に確認してもらい、そのうえで「直接雇用されるかどうかの回答」をしてください。
もし、伝えられていた条件と違うなら担当営業に相談し、それでも解決しなければ、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する”労働局”などにご相談ください。
紹介予定派遣のメリットとデメリット
記事の最後に、紹介予定派遣のメリットとデメリットをご紹介します
紹介予定派遣のメリット
紹介予定派遣のメリットは次のようになります。
はたらき始めてから「こんなはずじゃなかった」が防げる、いい制度だと思います。
利用する人がさらに増えるといいですね。
紹介予定派遣のデメリット
紹介予定派遣のデメリットは次のようになります。
やはり「正社員とは限らない」点が要注意ですね。
必ず「正社員なのか、契約社員なのか」を何度も確認しましょう。
僕も、直接雇用で「契約社員」となるケースでは、スタッフさんに「なれるのは、正社員じゃなく契約社員だからね!」と、20回くらい念押ししてました。
紹介予定派遣の実態をデータから確認
次に、紹介予定派遣に関する公式なデータをご紹介します。
[データ①]2019年に紹介予定派遣で直接雇用となったのは16,323人!
厚生労働省が公表したデータによれば、2019年に「紹介予定派遣」で直接雇用となったのは16,323人でした。
各データは下表のとおり。
2018年度 | 2019年度 (前年比) | |
---|---|---|
①派遣先からの紹介予定派遣の申込人数 | 134,483人 | 85,425人 (-36.5%) |
②紹介予定派遣で派遣された派遣社員 | 36,791人 | 31,233人 (-36.5%) |
③紹介予定派遣で職業紹介を行った派遣社員 | 28,120人 | 23,383人 (-36.5%) |
④紹介予定派遣で職業紹介を経て直接雇用に結びついた派遣社員 | 19,214人 | 16,323人 (-36.5%) |
紹介予定派遣を実施した派遣会社 | 2,373社 | 2,292社 (-36.5%) |
2019年の派遣社員数は約184万人ですので、「紹介予定派遣」で直接雇用となった人は全体の0.89%と、かなり少数。
ですが、派遣先からの申し込み件数(上表①)が8万5千件もあるのに対し、派遣された人数が3万人(上表②)しかいないのは、もったいない状況ですね。
次項でご紹介するように、制度自体を知らない人が多いのも、うまくマッチングできない要因かもしれません。
[データ②]紹介予定派遣制度を知らない派遣社員は53.7%!
厚生労働省の、前項とは別のデータによれば、「紹介予定派遣制度を知らない」と回答した派遣社員は53.7%でした(2017年データ)。
つまり派遣社員の半分以上は、「紹介予定派遣」という制度があることを知りません。
回答 | 割合 |
---|---|
紹介予定派遣制度を知らない | 53.7% |
紹介予定派遣制度を知っている | 44.0% |
(知っている人のうち)今後紹介予定派遣を利用したい | 39.8% (「知っている」を100として) |
(知っている人のうち)今後紹介予定派遣を利用したくない | 14.9% (「知っている」を100として) |
これは派遣社員にとっても、派遣先にとっても、すごくもったいないですよね。
正社員になれる、人材確保のチャンスを逃しているかも…
派遣会社のなかには、「せっかくの優秀なスタッフが、派遣先にとられてしまう」として、「紹介予定派遣」についてあまり説明をしないところもあるのかもしれません。
ぜひあなたの周りに、「今は派遣社員だけど、正社員になりたい!」という方がいたら、「紹介予定派遣」のことを教えてあげてください。
まとめ:「紹介予定派遣」のルールを知り、断ることも考えて
この記事では、「紹介予定派遣」で直接雇用を断ることはできるのか、断るポイントや「紹介予定派遣」の基本ルール、メリット・デメリットまでご紹介しました。
ぜひ記事を参考に、「紹介予定派遣」のルールを知り、合わないようなら「断る」ことも考えてみましょう。
◆「派遣社員についての情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
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参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 労働問題研究会・著『働く人のための法律ガイドブック』労働教育センター