正社員として働いていて、
会社から突然「パートに変更する」といわれた!違法じゃないの!?
こんな目にあっていませんか?
「自分からの申し出」でなければ、とても受け入れられないですよね。
そこでこの記事では、同じ会社の正社員からパートにされたら違法なのか、されたときの対応方法、パートにされたときのボーナスや退職金、各種保険への影響も解説します。
会社に「正社員からパートになれといわれて困っている…」というときは、ぜひご覧ください。
同じ会社の正社員からパートにされた…違法じゃないの?
まずは、同じ会社の正社員からパートにされたら違法なのかを確認しましょう。
「本人の同意」なく、同じ会社の正社員からパートにされることは違法
「本人の同意」なく、同じ会社の正社員からパートにされることは、違法である可能性が高いです。
その理由を解説していきます。
まず、「正社員からパートになる」といった労働条件が大きく変わるような身分変更は、本来許されません。
そのため会社側は、次のような手順をとることが必要です。
- 正社員としての契約をいったん解除する
- その後、パートとしての契約を締結する
ここで社員本人が同意すれば「合意解除」となり、とくに問題なく新たにパートとして契約となります。
ですが社員本人が同意しないならば、上記1の「契約の解除」はつまり「解雇」にあたります。
しかし「解雇」は労働契約法第16条で次のように規定され、会社側は「正当な理由」もなく行うことはできませんので、解雇は無効に。
労働契約法第16条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
こういった理由で「本人の同意」がない場合、正社員からパートにされることは違法である可能性が高いのです。
◆「解雇のルール」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「解雇と退職勧奨の違いとは?」
妊娠・出産・産休・育休を理由に「正社員からパートになれ」も違法
妊娠・出産・産休・育休を理由に「正社員からパートになれ」と強要することも、違法である可能性が高いです。
こちらは前項のように「同意なく降格させる」だけでなく、会社側が「強要すること」自体も違反となります。
根拠となる法律はこちら。
男女雇用機会均等法 9条(婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等)
3項 事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法65条1項の規定による休業を請求し、または同項若しくは同条2項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
このほかにも、男女雇用機会均等法では次のような「不利益な取り扱い」を禁止しています。
- 解雇する
- 有機雇用契約の社員について、契約を更新をしない
- 退職の強要を行う
- 降格させる
- 就業環境を害する
- 意味もなく自宅待機を命じる
- 減給する
- 不利益な配置の変更を行う
同じ会社の正社員からパートにされたときの対応方法
次に、同じ会社の正社員からパートにされたときの対応方法をご紹介します。
〈対応方法①〉パートにされた理由を会社に確認する
まずは、パートにされた理由を会社に確認します。
前述のとおり、「正社員からパートへの身分変更」は解雇に等しいため、この理由の確認は会社への「解雇理由証明書」の請求にあたります。
「解雇理由証明書」とは次のような書類で(決まった書式はありません)、会社は社員から請求されたら、遅滞なく交付しなくてはなりません。
会社が「解雇理由証明書」を発行しない場合は、30万円以下の罰金です。
どうしても会社が書面を発行してくれないときは、直接上司に話を聞き、その内容をこっそりとスマホやICレコーダーで録音することをおすすめします。
〈対応方法②〉労働局などに相談する
次に、会社からの「解雇理由証明書」や録音したスマホなどを証拠として持参して、労働局へ相談しましょう。
ただ、「公的機関に相談しづらい…」というときには、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する「一般社団法人ボイス」へ相談してみてください。
メールか電話で、専門家に無料相談できます。
もしも、「もうこんな会社とはかかわりたくない」ということであれば、記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」を参考に、次の会社を探しましょう。
応募書類作成から面接、内定までを無料でサポートしてくれる転職エージェントを利用すれば、転職での失敗が減ります。
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正社員からパートにされたときのボーナス(賞与)・退職金や各種保険への影響
次に、正社員からパートにされたときのボーナス(賞与)・退職金や各種保険への影響をご紹介します。
正社員からパートにされたときのボーナス(賞与)・退職金への影響
正社員からパートにされたときのボーナス(賞与)や退職金への影響としては、「どちらも支給されない可能性が高くなる」です。
じつは「ボーナス(賞与)や退職金の支給」は、法律で義務づけられているわけではありません。
ですから「ボーナス(賞与)や退職金を支給する・しない」も「支給する金額」も、すべて会社が独自に決めて問題ないのです。
そして厚生労働省の調査結果を見ると、多くの会社でパート社員のボーナス(賞与)・退職金が支給される割合が大幅に低いことがわかります。
賞与(ボーナス)支給制度 | 退職金制度 | |
---|---|---|
正社員 | 86.8 % | 77.7 % |
パートタイム労働者 | 29.3 % | 8.0 % |
◆「退職金のルール」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「退職金が出ないのは違法?」
正社員からパートにされたときの社会保険への影響
正社員からパートになったときの社会保険への影響は、「はたらく時間が短くなると、加入できない」です。
社会保険に加入するには、「週の所定労働時間が30時間以上」か、または次の条件をすべて満たすことが必要です。
- 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
- 月額賃金が8.8万円以上
- 1年以上の雇用の見込みがある
- 学生ではない
- 社員数が501人以上の会社ではたらいている(2022年10月からは101人以上に)
ですから、正社員と同じ時間はたらけば社会保険には加入できますが、はたらく時間が短くなると加入できません。
正社員からパートにされたときの失業保険への影響
失業保険とは、失業したときに受けとれる雇用保険の手当金で、正式には「基本手当」です。
そして、正社員からパートになったときの失業保険への影響としては、「支給額が低くなる可能性がある」といえます。
「基本手当(失業保険、失業手当)」で支給される手当金(基本手当日額)は、次のように決まります。
基本手当日額 = (離職日の直前の6か月の賃金の合計 ÷ 180)× 50~80%
正社員からパートになって、給料の額が同一なら問題はありませんが、下がっていれば上記「賃金の合計」も減少します。
そのぶん、失業保険の手当金(基本手当日額)も減少するというわけです。
もし「会社を辞められない」なら、退職代行サービスという方法も。
おすすめは、弁護士法人運営の”退職110番”で、未払い金請求や慰謝料請求など各種請求・交渉にも完全対応です。
まとめ:本人の同意なしには同じ会社の正社員からパートにはされません
この記事では、同じ会社の正社員からパートにされたら違法なのか、その対応方法やパートにされたときの退職金、各種保険への影響も解説しました。
本人の同意なしには、同じ会社の正社員からパートにはされません。
もし同意なく変更されたときは、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する”労働局”などの公的機関に相談しましょう。
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参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 林智之・著『職場の法律トラブルと法的解決法158』三修社