有期(期間の定めのある)労働契約で働いていると、
上司から「次の契約更新はしない」と言われた…。もう何度も更新しているのにヒドイ!
このような「雇止め」をされることがあるかもしれません。
ですが「雇止め」にも適正なルールがあり、無効になるケースもあることをご存知ですか?
この記事では、雇止めの基本知識から、無効になるケースや契約社員・パート・派遣社員での対応方法、解雇との違いなどをわかりやすく解説します。
「雇止めにあって、どうしたらいいのかわからない…」というときは、ぜひご覧ください。
◆「契約社員・パート社員のルール・情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「契約社員とは?無期転換ルール、雇止めも解説」
・記事「パート社員とは?残業代、雇止めなどのルールも解説」
◆次の会社を探したいときには、こちらの記事が参考になります。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
・記事「派遣社員になりたいとき」
雇止めとは何か?その意味をわかりやすく解説
まずは、雇止めとは何か、その意味をわかりやすく解説します。
雇止めとは、有期契約の満了時に会社側が更新しないこと
「雇止め(雇い止め)」とは、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)において、契約期間の満了時点で会社側が更新を行わないことです。
契約を更新しないことは会社の自由ですが、社員側にしてみれば生活が脅かされる一大事。
雇止めで会社と社員がトラブルになることは、これまでも多くありました。
そのため、雇い止めについては法律などでルールが決められています。
次項からは、そのルールなどをわかりやすくご紹介していきます。
雇止めのルールを解説
次に、雇止めのルールを解説します。
「更新を期待できる」状況では「合理的な理由」などがない雇止めは無効
以下のどちらかに該当するような「更新を期待できる」状況では、「合理的な理由」と「社会通念上相当性」がなければ、雇止めが認められず無効です。
このときは、以前の契約と同一条件での更新が成立します(労働契約法19条)。
- 有期労働契約が何度も更新され、更新しないことが解雇と同様といえる場合
- 有期労働者が労働契約の更新がなされるという合理的な期待を持っている場合
上記①・②は社員が「更新を期待できる」状況であり、その雇い止めを「解雇と同様」とみなしているのです。
例えば
・上記①は、期間が満了になっても契約書を作らず、ただ自動更新をしていた場合など
・上記②は、何年間にもわたり、何回も契約がくり返され、次も当然更新されると期待できる場合など
更新を期待できる状況での雇止めを認めない「雇い止め法理」
これまで、会社と社員のあいだで「労働契約をくり返し更新したあとで、とつぜん更新を拒絶する」ことでの紛争が、数多く起こりました。
そのため、過去の裁判例により「更新されると期待できる状況では、雇い止めは認めない」といったルールが「雇止め法理(裁判上のルール)」として形作られます。
そしてこの「雇止め法理」を法律で明文化したものが、前項の「労働契約法19条」で、2012年の改正によって設けられました。
「雇い止め」をする会社側の義務(厚生労働省 告示)
「雇止め」をめぐるトラブルを防ぐため、会社側には次の義務が課されます。
- 有期労働契約を行うときに、「更新の有無」や「更新の判断基準」を明示する
- 3回以上更新、または1年を超えて継続勤務する社員を「雇い止め」する場合には、少なくとも30日前までに予告をする
- 雇止めの理由について証明書が請求されたときは、遅滞なく証明書を交付する
- 1回以上更新され、1年を超えて継続勤務している社員の契約を更新する際には、契約の実態・社員の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努める
(厚生労働省告示「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」より)
契約社員・パート・アルバイトが雇止めにあったときの対応方法
次に、契約社員・パート・アルバイトさんが雇止めにあったときの対応方法をご紹介します。
[対応方法①]「更新を期待できる状況」なら会社に「雇止め理由証明書」を請求する
前述したとおり、何回も契約をくり返すなど「更新を期待できる状況」であれば、「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない」雇止めは無効です。
そこで、「更新を期待できる状況」だったなら、会社に「雇止め理由証明書」を請求してください。
「雇止め理由証明書」で、「合理的な理由」と「社会通念上相当性」を確認します。
なお、”はじめての契約満了で更新されなかった”など「更新を期待できる状況」でないときは、仕方ないので別の会社を探しましょう。
こちらの記事を参考にどうぞ。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
・記事「派遣社員になりたいとき」
[対応方法②]「雇止め理由証明書」を持って労働局へ
次に、「雇止め理由証明書」を持って労働局へ相談しましょう。
ちなみに労働局とは、各都道府県に設置された、厚生労働省の出先機関。
労働者のさまざまな相談にのってくれ、場合によっては会社への指導なども行ないます。
ただ、「公的機関に相談しづらい…」というときには、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する「一般社団法人ボイス」へ相談してみてください。
会社と雇用期間の合意がなければ無期契約に
もし、パートなどで働いていて、
何年も「契約期間」や「更新」の話なんかなかったのに、突然、会社から「契約更新しないから」なんて言われて…。私って「有期契約」だったの?
このような場合、入社時に雇用期間の話をして合意していなければ、それは「無期労働契約」とみなされ、雇止めが無効となる可能性が高いです。
なぜなら「労働契約の期間」は、会社側が書面で通知することが法律で決められているから(労働基準法15条)。
労働局に相談する場合は、「雇用契約の期間について合意していない」と伝えましょう。
派遣社員が雇止め(派遣切り)にあったときの対応方法
次に、派遣社員が雇止め、つまり「派遣切り」にあったときの対応方法をご紹介します。
派遣会社には「雇用安定措置」を講じる義務があるため、新たな派遣先などを紹介してもらう
派遣社員が雇止めとなった場合、派遣会社には次のような「雇用安定措置」を講じる義務があるため、新たな派遣先などを紹介してもらいましょう。
- 派遣先への直接雇用の依頼
- 新たな派遣先の提供 (※能力、経験等に照らして合理的なものに限る)
- 派遣元での無期雇用
- その他安定した雇用の継続を図るために必要な措置(有給の教育訓練、紹介予定派遣など)
※就業見込みが1年以上3年未満の場合は、上記1~4のいずれかの措置を講じる努力義務、派遣元事業主に雇用された期間が通算1年以上の場合は、上記2~4のいずれかの措置を講じる努力義務(労働者派遣法第30条)
なお、派遣社員の場合でも、「更新を期待できる」状況では、「合理的な理由」と「社会通念上相当性」が必要。
派遣元(派遣会社)を通して、派遣先に「雇止め理由」を確認し、合理的な理由などがないなら前述の労働局に相談しましょう。
派遣切りには「解雇」と「雇止め」の2パターンがある
派遣社員の「派遣切り」には、「解雇」と「雇い止め」にあたる2パターンがあり、次のように違います。
そして労働者派遣法では、簡単に「派遣切り」が行われないよう、派遣社員を守るルールを定めています。
まず派遣契約期間中に、派遣先の都合で「派遣切り」をする場合(上記の「解雇」に該当)、派遣先は派遣元に「休業手当(相当額の賠償)」を支払わなくてはなりません(労働者派遣法29条の2)。
それを派遣社員は、派遣元から受け取ります。
また派遣先の関連会社での就業を紹介するなど、新たな働き先を確保することも必要です。
◆そのほか、「派遣切りと、されたときの対応方法」については、こちらの記事でくわしくご紹介しています。
・記事「派遣切りとは?」
解雇と雇止めの違いは?
次に、解雇と雇止めの違いをご紹介します。
解雇とは期間中の契約終了、雇止めとは契約満了時での終了
「解雇」とは、社員側の意思に関係なく、会社の一方的な意思により「雇用契約」を終了させることです。
そして「解雇」と「雇い止め」は、次のように違います。
なお、「解雇」と「雇い止め」のどちらも、「会社側が一方的に労働契約を終了させること」は共通しています。
解雇と雇い止めの「離職理由」の違い
解雇の「離職理由」
解雇の場合、離職理由は「会社都合退職」で、くわしくいうと「特定受給資格者」に該当します。
雇い止めの「離職理由」
雇い止めの場合も離職理由は「会社都合退職」ですが、こちらは「特定理由離職者」に該当します。
◆「特定受給資格者と特定理由離職者の違い」は、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「特定受給資格者と特定理由離職者の違いとは?」
解雇と雇い止めの「失業保険の期間など」は共通
解雇は「特定受給資格者」となり、失業保険(「失業給付、基本手当」とも)が給付される期間(所定給付日数)は下表のようになります。
雇い止めは「特定理由離職者」ですが、離職の日が2022(令和4)年3月31日までの期間は、「特定受給資格者」と同じで、上表の日数となります。
また解雇・雇い止めのどちらとも、7日間の「待期期間」が過ぎれば給付され、「自己都合退職」で発生する2~3ヶ月の「給付制限」はありません。
(ただし実際にお金が振り込まれるのは、ハローワークでの求職申し込みの約1ヶ月後)
まとめ:雇止めのルールを知って労働局へ相談を
この記事では、雇止めの基本知識から、無効になるケースや契約社員・パート・派遣社員での対応方法、解雇との違いなどをわかりやすく解説しました。
もし雇止めにあったときは、記事でご紹介したように、「雇止め理由証明書」を請求して労働局へ相談しましょう。
◆「契約社員のルール・情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「契約社員とは?無期転換ルール、雇止めも解説」
◆次の会社を探したいときには、こちらの記事が参考になります。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
・記事「派遣社員になりたいとき」
参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 小島彰・著『管理者のための労働法の基本と実務』三修社
- 書籍 佐々木亮・著『武器としての労働法』KADOKAWA