契約社員で働いていて、
契約社員で退職金をもらえる人は、どのくらいいるの?いくらぐらいもらえるの?
という疑問をお持ちの方はいませんか。
ひとつの会社で長く働いていると、契約社員の退職金事情が気になりますよね。
そこでこの記事では、契約社員の退職金について、出るのか出ないのか、いくらもらえるのか、制度がないのは違法じゃないのか、といったギモンにお答えします。
「契約社員の退職金事情について知りたい!」という方は、ぜひご覧ください。
◆「退職のルール全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「退職ルールまとめ」
◆「契約社員のルール・情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「契約社員とは?無期転換ルール、雇止めも解説」
◆次の会社を探したいときには、こちらの記事が参考になります。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
・記事「派遣社員になりたいとき」
契約社員の退職金は出る?出ない?支給される人の割合
まずは、契約社員の退職金が出るのか、出ないのか、支給される人の割合を公的なデータから確認しましょう。
退職金が出る契約社員は20.1%(厚生労働省の調査結果から)
厚生労働省が発表した「令和元年度 就業形態の多様化調査」によれば、契約社員のうち、「現在の会社に退職金がある」と答えたのは20.1%でした。
つまり契約社員の退職金支給については、次のようにいえます。
・退職金が出る人(契約社員の退職金が支給される会社にいる人):契約社員の2割
・退職金が出ない人(契約社員の退職金が支給されない会社にいる人):契約社員の8割
ただし上記データは、あくまでも「会社に退職金制度がある」という人です。
「実際に退職金が支給された」という人ではありません。
そして「退職金制度がある会社」でも、退職金が出るためには「最低◯年つとめること」という決まりがあります(最低勤続年数)。
こちらは契約社員に限定したデータではありませんが、参考として労働者全体での「退職金をもらうのに必要な”最低勤続年数”」を会社の割合でみると、下表のようになります(厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」より)
最低勤続年数 | 会社都合 | 自己都合 |
---|---|---|
1年未満 | 8.5 % | 3.2 % |
1年以上 2年未満 | 21.8 % | 15.0 % |
2年以上 3年未満 | 8.7 % | 9.7 % |
3年以上 4年未満 | 42.2 % | 56.2 % |
4年以上 5年未満 | 1.1 % | 1.6 % |
5年以上 | 9.3 % | 10.9 % |
3年以上はたらくと、退職金がもらえる会社がグッと増えていますね
ちなみに、はじめにご紹介したデータで、就業形態べつで「現在の会社に退職金がある」と答えた人の割合は下記のとおり。
「現在の会社に退職金がある」と答えた割合
・正社員:77.7 %
・出向社員:74.8 %
・嘱託社員:19.5 %
・契約社員:20.1 %
・パート:8.0 %
・臨時労働者:10.8 %
・派遣社員:17.0 %
(厚生労働省の「令和元年度 就業形態の多様化調査」より)
正社員・出向社員では、8割弱の人が退職金をもらえますが、そのほかの就業形態では、2割以下の人にしか退職金が出ないことがわかります。
退職金はいくらもらえる?相場は?
次に、退職金がいくらもらえるのか、相場はどのくらいかを確認しましょう。
大学卒・10年勤務の標準者の退職金は9.2ヶ月分(契約社員だけのデータはナシ)
残念ながら「契約社員の退職金額データ」がないため、全労働者での金額から推測していきます。
まず下表は、「標準者退職金の支給額・支給月数」で、「標準者」とは「新卒で入社し、標準的に昇進・昇格した人」です(日本経済団体連合会「2018 年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果」より)。
たとえば、大学卒・10年勤務の標準者の会社都合での退職金は、9.2ヶ月分の約300万円となっています。
こちら↑は「会社都合」だけだったので、別データも。
下表は、「短大・高専卒~大卒」の「会社都合・自己都合の退職金総額」です。
勤続20~25年あたりまでは、会社都合と自己都合での金額の差が、大きいですね
退職金が正社員と同じ契約社員は10.7%
次に、契約社員の方に「正社員との退職金のちがい」について調査した結果です(東京都産業労働局「契約社員に関する実態調査」より)。
上グラフの、上段の「従業員調査」をみると、10.7%の人は「退職金が正社員と同じ」と回答。
つまり契約社員の1割の人は、上の表でご紹介した退職金と同額がもらえることになります。
しかし契約社員の34.8%の人が「仕事の”内容・量・責任”すべてが同じなのに、退職金がちがって不合理だ」と感じているのは問題ですよね。
これでは、後述する「同一労働同一賃金」に反していますね
ちなみに、「正社員との退職金のちがい」グラフの下段は、契約社員から「無期転換社員」になった人の回答。
こちらのほうが、「退職金が正社員と同じ」と答えた人が多い(22.6%)という特徴があります。
◆「契約社員の無期転換制度」は、こちらの記事でくわしくご紹介しています。
・記事「契約社員の正社員化とは?」
・記事「無期転換制度のデメリットとは?」
・記事「契約社員のクーリング期間とは?」
会社に契約社員の退職金制度がないのは違法じゃないの?法律上の確認
ウチの会社では、契約社員には退職金はないよ…
と聞くと、
退職金制度がないのは、違法じゃないの?
労働基準法はどうなってるの?
というギモンをもつ方もいると思います。
ここでは、契約社員の退職金制度がないのは違法じゃないのか、労働基準法など法律を確認しましょう。
違法ではない!法律上「退職金支給」の決まりがないため
会社に退職金制度がないのは、違法ではありません。
というのも、労働基準法には「退職金を支給するように」といった決まりがないからです。
(労働基準法89条で、「退職金を支払う場合は、範囲や計算方法、支払時期を就業規則にいれなさい」とだけは決まっています)
つまり「退職金の支払い」は、会社の義務ではありません。
「退職金制度がある」ことで、”求職者や社員へのモチベーションアップをはかる”というのが、設けている大きな理由といわれます。
また「法的な決まりがない」という理由で、「正社員には退職金を出すけれど、契約社員には出さない」というのも、問題はありません。
◆「退職金のルール」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「退職金が出ないのは違法?」
ただしこのときは、「正社員と契約社員の、仕事内容や責任がちがう」ことが条件。
そうでないなら「契約社員にも退職金を出すべき」というのが「同一労働同一賃金」の考え方です。
この「同一労働同一賃金」については、次項でご紹介します。
最高裁判決は契約社員に退職金認めず!同一労働同一賃金とは?
2020年10月13日、最高裁での判決に注目が集まりました。
これは、東京メトロ子会社の「メトロコマース」の元契約社員が「10年間はたらいて、退職金を支給しないのは不合理だ!」として訴えたもの。
そして二審判決では「一部の支払い」を命じていましたが、最高裁では「退職金不支給は不合理とまではいえない」として、支払いを認めない判決をしたのです。
2020年4月に「同一労働同一賃金」を定めた”働き方改革関連法”が一部施行されてから、初の最高裁判決。
しかし、非正規ではたらく人々には、受け入れがたい結果でした。
この結果は、今後の会社の給与体系に、さまざまな影響をあたえていくかもしれません。
同一労働同一賃金とは、正社員と非正規社員の不合理な待遇差をなくすもの
「同一労働同一賃金」とは、同じ会社の「正社員と非正規社員」のあいだの、”不合理な待遇差をなくす”ことを目指すもので、国が主導してすすめています。
具体的には、「不合理な待遇差を禁止」した”パートタイム・有期雇用労働法”が、大企業では2020年4月1日から、中小企業では2021年4月1日に施行されました。
厚生労働省が特設ウェブサイトで、チェックツールなどさまざまな情報を提供しています。
せっかくこういう流れがあるのに、メトロコマース事件の判決が、非正規社員の方にとってわるい影響を与えそうなんですよね…
もしはたらく会社で、給料やボーナス、各種手当てや福利厚生など「正社員との格差がある」と感じたときは、こちらの記事でご紹介する機関に相談してみてください。
まとめ:契約社員の退職金事情を知って、はたらき方を考えましょう
この記事では、契約社員の退職金について、出るのか出ないのか、いくらもらえるのか、制度がないのは違法じゃないのか、といったギモンにお答えしてきました。
退職金についてみると、支給される会社にいる人は2割で、最高裁判決もキビシイ内容です。
その状況を知ったうえで、今後のはたらき方を考えていきましょう。
◆「退職のルール全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「退職ルールまとめ」
◆「契約社員のルール・情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「契約社員とは?無期転換ルール、雇止めも解説」
◆次の会社を探したいときには、こちらの記事が参考になります。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
・記事「派遣社員になりたいとき」
参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 高橋毅・著『パート・契約社員 派遣社員の法律 実務マニュアル』三修社