契約社員としてはたらく人のなかで、
約束したはずなのに、会社がなかなか正社員にしてくれない…
と悩む方はいませんか?
実際、契約社員の45.7%が「正社員に変わりたい」と望んでいる状況です(厚生労働省「令和元年就業形態の多様化に関する総合実態調査の概況」より)。
そこでこの記事では、「契約社員から正社員にしてくれない」ときどうすればいいのか、試してほしいこと、正社員になるための方法などをご紹介していきます。
「契約社員から正社員になりたい!」と考えている方は、ぜひご覧ください。
◆「契約社員のルール・情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「契約社員とは?無期転換ルール、雇止めも解説」
◆次の会社を探したいときには、こちらの記事が参考になります。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
・記事「派遣社員になりたいとき」
契約社員から正社員にしてくれないときはどうする?試してほしいこと
まずは、契約社員から正社員にしてくれないときに「試してほしい3つのこと」をご紹介します。
[試してほしい①]会社に「正社員登用制度」があるか確認する
まず試してほしいのは、会社に「正社員登用制度」があるか確認することです。
「正社員登用制度」とは、おなじ会社ではたらく、契約社員やパート・アルバイトといった「非正規社員」を対象に、雇用を「正社員」に切り替える制度
以前から、「正社員登用制度」を設けている会社もありましたが、2020年4月にはじまった「パートタイム・有期雇用労働法」の「通常の労働者への転換の推進」に対応するために、取り入れる会社がふえています(くわしいデータは後述)。
また2020年1月からは、ハローワークの求人票で下図のように「正社員登用のあり・なし」と「過去3年の実績」が記載されるようになりました。
会社の就業規則や契約社員規則などを見て、「正社員登用制度」があるか確認してみましょう。
そこに載っていなければ、人事課の社員に聞いてみてください。
◆「正社員登用制度」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「正社員登用制度とは?」
パートタイム・有期雇用労働法の「通常の労働者への転換の推進」
会社が「正社員登用制度」を取り入れるきっかけのひとつが、2020年4月にはじまった「パートタイム・有期雇用労働法」です。
この法律では、「通常の労働者への転換の推進」を下記のように定めています。
これは「義務」ですから、上記①~④のどれかの対策を、すべての会社がとらなくてはいけません。
ただし「制度をつくること」が義務で、「正社員にすること」は義務じゃないので、どれだけ効果があるの?という心配はありますね…。
[試してほしい②]「正社員登用制度なし」から正社員に登用された人がいるか聞く
もし会社に「正社員登用制度」がないようでも、まだあきらめないでください。
制度が社内ルールになっていなくても、会社で「慣習(以前からの習慣)」として「正社員登用」を行っている場合もあります。
上司や人事課の社員に、
これまで契約社員から正社員になった人はいますか?
と聞いてみてください。
もしいるようなら、「どんな手順が必要か」も聞いて、実行してみましょう。
ただし、
ああ、5年はたらいて正社員になった社員がいるよ!
というときは注意。
後述する「無期転換社員」かもしれません。
「一般的な正社員」なのか。それとも「限定正社員」なのか、そこまで確認してみましょう。
[試してほしい③]具体的に「どうすれば・いつ頃に正社員になれるか」を上司に聞く
会社に「正社員登用制度」もなく、これまでに「契約社員から正社員になった人」もいない。
そんなときは、もう上司に、
今後わたしが、正社員になれるチャンスはありますか?
もしあれば、具体的に「いつ・どうすれば正社員になれるか」を教えていただけますか?
とハッキリ聞いてみましょう。
ここで「チャンスはないよ」という回答なら、どちらかを選んでください。
- 正社員はあきらめて、その会社で契約社員としてガンバる
- それでも正社員を希望するなら、転職を前提に考える(くわしくは後述)
ここで気をつけたいのは、上司が、
うん、ガンバれば正社員になれるよ…
このように、あいまいな回答をしたとき。
おそらく「ここで”チャンスはない”といって辞められたら困るから、テキトーに濁しておこう」という考えなんでしょう。
正社員への具体的な道すじを教えてもらえないなら、その会社では正社員登用はムリです。
キッパリと割り切って、次の行動をおこしましょう。
◆もし「休んでも不安で楽しくない」なら、記事「「休み明けに仕事に行くのが怖い…」ならコレを試して!」で対処法をご紹介しています。
上司の「契約社員から正社員にするから…」口約束だけでは効力がないの?
上司から、
契約社員から正社員にするから…
と言われていたけど口約束だけで、書面はなかった…。
それでは口約束だけでは効力がないかといえば、そんなことはありません。
日本では一部の契約を除き、口約束だけでも「契約」と認定され効力が発生。
口約束をした者は、その内容を守らなくてはなりません。
ただし口約束だと、あとでモメたときに「言った」・「言わない」の水掛け論になってしまうことに。
ですから、上司との面談時にこっそりとスマホやICレコーダーなどで録音しておくという方法もあります。
でも、”そこまでしないと約束を果たさない会社”で、ずっと働けますか?正直、考えてしまうのではないでしょうか。
そこで次項では、契約社員が正社員になるための方法「作戦をもって転職する」をご紹介します。
契約社員が正社員になるための方法:作戦をもって転職しましょう
「3つの試してほしいこと」を試したけどダメだった…。それでも正社員になりたい…
それなら、思い切って転職することがオススメ。
ただ、ふつうにハローワークで…と求職しても、難しいかもしれません。
ここでは、2つの作戦をもって転職する方法をご紹介します。
[作戦①]「多様な正社員」「限定正社員」になり、そこからさらに正社員を目指す
1つめの作戦は、”まずは「多様な正社員」・「限定正社員」として入社し、そこからさらに正社員を目指す”です。
「多様な正社員」とは、「限定正社員」とも呼ばれ、地域や仕事内容を限定してはたらく正社員のこと。
さらに次の3つにわけられる。
1.勤務地限定正社員:転勤するエリアが限定されていたり、転勤がない正社員
2.職務限定正社員:仕事の内容や範囲が、他の業務と区別され、限定されている正社員
3.勤務時間限定正社員:働く時間がフルタイムではない、または残業しなくてよい正社員
これは「ジョブ型正社員」ともよばれ、2007年にユニクロが「契約社員・準社員を地域限定正社員にする制度を取りいれた」ことで知られるようになりました。
転職先を探すときに、「限定正社員」で「正社員への移行制度」がある会社を探してみましょう。
ひとりで探しきれないときは、次項でご紹介する「転職エージェント」の利用がおすすめです。
「多様な正社員区分」がある会社は28.6%
労働政策研究・研修機構の調査によれば、「多様な正社員区分」がある会社の割合は28.6%です。
「有期契約社員を雇用している会社」だと34.0%となっています。
職種や職務、職域が限定されている | 勤務地が限定されている | つける役職や役割の範囲が限定されている | 労働時の 長さが限定されている | その他何らかの働き方が限定されている | 多様な正社員区分 がある 合計 | |
---|---|---|---|---|---|---|
回答した会社 (4,685社) | 17.6 % | 9.1 % | 11.1 % | 14.8 % | 3.3 % | 28.6 % |
回答した会社のうち、有期契約社員を雇用している会社(1,858社) | 19.7 % | 12.2 % | 13.5 % | 17.0 % | 5.4 % | 34.0 % |
また同データによれば、「多様な正社員」と「正社員」のあいだでの「移行制度や慣行(以前からの習慣)」がある会社の割合は38.7%。
約3割の会社で「多様な正社員区分」がありますから、ぜひ探してみましょう。
[作戦②]転職エージェントを利用して転職する
作戦の2つめは、”転職エージェントを利用して転職する”です。
転職エージェントを利用すると、次のようなメリットがあります。
ぜひ利用して、「限定正社員」で「正社員への移行制度」がある会社を探してもらいましょう。
なお、転職エージェントは無料で利用できますので(料金は転職先が支払うため)、安心してお願いできます。
おすすめは”DODAエージェントサービス”です。
◆「おすすめの転職エージェント」は、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
契約社員から正社員になれるのはどんな人?調査結果から確認
次に、契約社員から正社員になれるのはどんな人なのか、厚生労働省が2017年8月に公表した「労働経済分析レポート No.1 正規雇用へ転換した方の特徴と影響」から確認していきましょう。
正規雇用転換者は「34歳以下の男性」・「運輸業」での割合が高い
調査結果を見ると下グラフのように、正規雇用転換者は「34歳以下の男性」・「運輸業」での割合が高いことがわかります。
また職種では「運輸・通信関連職」が最も高くなっています。
契約社員から正社員になりたい方は、正規雇用転換者比率の高い、こちらの業種・職種を選ぶのもひとつの方法です。
- 〈正規雇用転換者比率が高い業種〉
1位:運輸業(8.7%)
2位:建設業(7.8%)
3位:情報通信業(6.7%) - 〈正規雇用転換者比率が高い職種〉
1位:運輸・通信関連職(7.4%)
2位:保安・警備職(6.6%)
3位:専門職・技術職(6.3%)
「自己啓発を行った人」の正規雇用転換の割合が高い
また、「自己啓発を行った人」の正規雇用転換の割合が高いこともわかります。
「正社員になりたい」というときは、希望する業界などのことを勉強してみましょう。
資格を取得することも、次のようなメリットがあるのでオススメです。
- 体系的に、その資格関連の知識を学べる
- 希望する会社に、熱意を伝えることができる
契約社員から正社員になれるのか?「正社員登用制度」がある会社のデータ
次に、「契約社員から正社員になれるのか?」を、「正社員登用制度」がある会社のデータから確認していきます。
正社員登用制度のある会社は77%
厚生労働省の「労働経済動向調査(令和3年2月)」によれば、2021年時点で正社員登用制度のある会社の割合は次のとおり。
- 正社員登用制度あり:77 %(うち登用実績あり:41 %、実績なし36 %)
- 正社員登用制度なし:22 %(うち登用実績あり:6 %、実績なし16 %)
正社員登用制度のある会社では「登用実績あり」が41%です。
転職エージェントに「正社員登用制度ありで、登用実績ありの会社」で依頼してみましょう。
ちなみに「正社員登用制度があるけれど、過去1年間(2020年2月~2021年1月)で登用の実績がない理由」は次のとおりでした。
- 正社員を募集しなかった:33 %
- 正社員を募集した:67%
募集したうち・正社員以外の労働者から募集しなかった:6 %
・上司等からの推薦がなかった:12 %
・正社員以外の労働者から応募がなかった:40 %
「会社を辞められない」なら、退職代行サービスという方法も。おすすめは、弁護士法人運営で、未払い金請求や慰謝料請求など各種請求・交渉にも完全対応の退職110番です。
「契約社員でも5年後には正社員に」の「無期転換ルール」には注意
契約社員ではたらく方のなかには、会社から、
5年はたらいてくれたら、正社員になれるから、ガンバってね!
という話をされたことがあるかもしれません。
これはおそらく「無期転換ルール」のことをいっているはずですが、じつは注意が必要です。
それがこちら。
5年後には…の「無期転換ルール」でなれるのは”無期転換社員”であって、正社員とは限らない!
「無期転換社員」とは、契約社員などの「有期契約社員」から”無期契約”となった社員のこと。
この社員の多くは、給料もボーナスも働く時間も、契約社員時代とおなじで、ただ”有期契約”から”無期契約”となっただけです。
無期転換ルールについては、こちら↓の厚生労働省の説明動画も参考になります。
会社によっては、「無期転換で正社員になる」というところもあるかもしれませんが、かなり少数だと思われます。
そして、もしかすると上司も、「無期転換社員と正社員のちがい」を知らずに、話をしていたのかもしれません。
ヘタに期待して、5年はたらいてから「じつは正社員じゃなく、無期転換社員だったよ。ゴメンね…」といわれたら、絶望的です。
「無期転換ルール」を知ったうえで、まずは前述のとおり「正社員登用制度があるかどうか」を確認しましょう。
◆「無期転換ルール」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「無期転換制度のデメリットとは?」
まとめ:契約社員から正社員にしてくれないなら、社内ルールを確かめて、転職も
この記事では、「契約社員から正社員にしてくれない」ときどうすればいいのか、試してほしいこと、正社員登用のデータまでご紹介していきました。
契約社員から正社員にしてくれないなら、まずは社内に「正社員登用制度」や慣習などのルールがあるか確かめて、ないようなら転職を考えてみましょう。
◆「契約社員のルール・情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「契約社員とは?無期転換ルール、雇止めも解説」
◆次の会社を探したいときには、こちらの記事が参考になります。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
・記事「派遣社員になりたいとき」
参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 高橋毅・著『パート・契約社員 派遣社員の法律 実務マニュアル』三修社