2021年7月に行われた厚生労働省の審議会にて、全国平均の引き上げ額が過去最高の28円になり話題となった「最低賃金」。
そんななかで、
毎月の給料がすごく少ないんだけど、これって最低賃金より下なのかも…どうやって計算するの?
このように悩んでいる方はいませんか?
ニュースでは話題になりますが、実際に自分の給料を確認する方法までは、わかりませんよね。
そこでこの記事では、働く人に向けて、最低賃金の計算方法を時給・日給・月給などの支給形態ごとに紹介していきます。
「給料が少なくておかしいと思っていた…」というときは、ぜひご覧ください。
◆「会社・仕事のことをどこかに相談したい」ときの相談先は、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」
◆次の会社を探したいときには、こちらの記事が参考になります。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
・記事「派遣社員になりたいとき」
最低賃金の計算方法を支給形態ごとに紹介
まずは最低賃金の計算方法を、支給形態ごとに紹介します。
[最低賃金の計算方法①]時給の場合
時給の場合の最低賃金の計算方法はカンタンで、次のとおりです。
(なお、現時点で最新の「最低賃金額」は後述しています)
時間給 ≧ 最低賃金額
「労働条件通知書」や「雇用契約書」に記載された時間給が、はたらく都道府県の最低賃金額を上回っていればOK。
さらに
ちなみに、ハローワークの求人票や求人広告にのっている時給だと、そこから変更されている可能性もあります。
そのため必ず、「労働条件通知書」や「雇用契約書」で「実際に支給される時給」を確認しましょう。
[最低賃金の計算方法②]日給の場合
日給の場合の最低賃金の計算方法は、次のとおりです。
日給の場合の計算方法①:給与のうち対象となる額を確認する
まずは給与のうち、対象となる額を確認します。
最低賃金を計算するときに、対象となるのは原則、下図のような「所定内給与」です。
具体的に最低賃金の対象となるのは、実際の給料から次の賃金を除いた額となります。
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
- 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(ボーナスなど)
- 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(残業代など)
- 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日出勤代など)
- 午後10時~午前5時までの労働に支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増手当など)
- 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
日給の場合の計算方法②:対象額から時給を算出して最低賃金とくらべる
次に、前項で確認した平均賃金の対象額をもとに時給を算出して、最低賃金とくらべます。
計算式は次のとおり。
日給のうちの平均賃金の対象額 ÷ 1日の所定労働時間 ≧ 最低賃金額
なお「1日の所定労働時間」は、「労働条件通知書」や「雇用契約書」などに記載されています。
たとえば、基本給が130,000円、年間所定労働日数が255日、1日の所定労働時間が8時間だと、時給は以下のようにもとめます。
(130,000円×12か月)÷(255日×8時間)≒ 765円 ←時給
この額が、はたらいている都道府県の最低賃金額(後述)を上回っているか確認しましょう。
[最低賃金の計算方法③]月給の場合
月給の場合の最低賃金の計算方法は、日給のときとほぼ同様で、次のとおりです。
月給の場合の計算方法①:給与のうち対象となる額を確認する
まずは給与のうち、対象となる額を確認します。
最低賃金を計算するときに、対象となるのは原則、下図のような「所定内給与」です。
具体的に最低賃金の対象となるのは、実際の給料から次の賃金を除いた額となります。
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
- 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(ボーナスなど)
- 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(残業代など)
- 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日出勤代など)
- 午後10時~午前5時までの労働に支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増手当など)
- 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
月給の場合の計算方法②:対象額から時給を算出して最低賃金とくらべる
次に、前項で確認した平均賃金の対象額をもとに時給を算出して、最低賃金とくらべます。
計算式は次のとおり。
月給のうちの平均賃金の対象額 ÷ 月の平均所定労働時間 ≧ 最低賃金額
なお「月の平均所定労働時間」は、就業規則などで「年間所定労働日数」を、「労働条件通知書」・「雇用契約書」などで「1日の所定労働時間」を確認すると計算できます。
たとえば、基本給が130,000円、年間所定労働日数が255日、1日の所定労働時間が8時間だと、時給は以下のようにもとめます。
(130,000円×12か月)÷(255日×8時間)≒ 765円 ←時給
この額が、はたらいている都道府県の最低賃金額(後述)を上回っているか確認しましょう。
[最低賃金の計算方法④]「固定残業代」制度の場合
「固定残業代」制度とは、「みなし残業代」制度ともよばれ、実際に残業したかどうかにかかわらず、毎月一定金額の残業代を含めた給与を支払う制度です。
「固定残業代」制度での最低賃金の計算方法は、まずは支給額から「固定残業代」を除きます。
あとは前項の手順で、家族手当などを除き対象額を算出して、さらに時給に換算して最低賃金とくらべます。
ここでは、支給額から「固定残業代」を除くことがポイント。
もし会社から、毎月の「固定残業代」がいくらなのか知らされていないなら、この機会に確認しましょう。
厚生労働省でも、「固定残業代」ではトラブルが多いとして、事業者向けに案内を出しています。
ちなみに、
「固定残業代」を払ってるんだから、いくら残業してもそれ以上は残業代を払わないよ…
これがブラック企業の手口。
毎月の「固定残業代」以上の残業をしたときは、会社側はさらに残業代を支払わなくてはいけません。
もし会社が、毎月の「固定残業代」を教えてくれないようなら、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する”労働局”などの公的機関に相談してみてください。
そして「もうこの会社にかかわりたくない」というときは、次の会社を、記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」を参考に探しましょう。
給料が最低賃金を下回っていたときの対応方法
次に、給料が最低賃金を下回っていたときの対応方法をご紹介します。
[対応方法①]まずは会社に確認
給料が最低賃金を下回っていたとき、まずは会社に「給料の支給額にまちがいがないか」を確認しましょう。
とくにはたらき始めなどでは、担当者の入力間違いということも起こります。
その結果「支給額にまちがいがない」ということなら、次の資料などを持参して、上司や人事担当者に「私の給料が、都道府県の最低賃金より低いようなんですが」と、問い合わせてください。
(念のため、上司などとのやり取りは、スマホやICレコーダーなどで録音しておきましょう)
- 給与明細
- 給与明細から最低賃金を算出した計算式
- 最低賃金額が記載された資料
それでも会社側が給与額を修正しないなら、次項の公的機関に相談してください。
[対応方法②]会社に相談しても解決しないときは労働局へ
会社に相談しても解決しないときは、労働局へ相談しましょう。
もし上司や人事担当者とやり取りした録音があれば、証拠として持参してください。
ただ、「公的機関に相談しづらい…」というときには、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する「一般社団法人ボイス」へ相談してみてください。
もしも、「もうこんな会社とはかかわりたくない」ということであれば、こちらの記事を参考に次の会社を探してみてください。
最低賃金制度とは?地域別最低賃金と特定(産業別)最低賃金の違い
次に、最低賃金制度の基本情報として、地域別最低賃金と特定(産業別)最低賃金の違い、適用の対象などをご紹介します。
最低賃金制度とは?
最低賃金制度とは、会社側が社員に支払う賃金(給料)を、国が決めた「賃金の最低基準(最低賃金)」以上にしなければならないとする制度です。
制度は、最低賃金法にもとづき運用。
また、「最低賃金」は都道府県ごとに、「時給に換算した最低額」が決められています。
たとえ会社側と社員で「時給500円で合意」したとしても、最低賃金法によってその約束は無効になり、「最低賃金額で合意した」ものとされます。
そのため北海道であれば、会社側は「差額の361円」を支払わなくてはなりません。
なお、「最低賃金」以上を支払わなかった場合、会社側には下記の罰則があります。
- 「地域別最低賃金」以上を支払わない場合:50万円以下の罰金(最低賃金法4条違反)
- 「特定(産業別)最低賃金」以上を支払わない場合:30万円以下の罰金(労働基準法24条1項違反)
「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」については、次項でご紹介します。
「最低賃金制度」を正確に知りたいときには、こちら↓の厚生労働省のサイトをご覧ください。
「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の違い
「最低賃金」には「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の2種類があり、次のような違いがあります。
①「地域別最低賃金」とは?
「地域別最低賃金」とは、産業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場(会社や工場など)ではたらく、すべての労働者とその使用者に適用される「最低賃金」です。
各都道府県に1つずつあり、全部で47件の「最低賃金」が、国によって決められています。
②「特定(産業別)最低賃金」とは?
「特定(産業別)最低賃金」とは、特定の産業について設定されている「最低賃金」です。
都道府県ごとに、鉄鋼業や自動車小売業など特定の「業種」が決められ、それぞれの「最低賃金」が設定されています。
2020年4月時点では、全国で228件の「最低賃金」が決まっています。
各都道府県の「特定(産業別)最低賃金」を知りたいときは、こちら↓からどうぞ。
「最低賃金」が適用されるのは正社員だけ?パート・アルバイトは?
「最低賃金」が適用されるのは、それぞれ次の労働者です。
「地域別最低賃金」については、正社員だけでなく、パート・アルバイトにも適用されます。
なお、以下のような方については、会社側が労働局に届け出ることで、個別に「最低賃金の減額の特例」を受けることが可能です。
- 精神または身体の障害により、著しく労働能力の低い方
- 試用期間中の方
- 基礎的な技能等を内容とする「認定職業訓練」を受けている方のうち、厚生労働省令で定める方
- 軽易な業務に従事する方
- 断続的労働に従事する方
自分がはたらく地域の「最低賃金」を知りたいときは?2021年改定の状況も
自分がはたらく地域の「最低賃金」を知りたいときは、「各労働局ウェブサイトを確認する」という方法もありますが、今回はこちらにまとめてみました。
「最低賃金」は毎年10月1日をメドに改定され、2021年改定の「地域別最低賃金」は、下表のとおりです。
都道府県 | 最低賃金時間額 | 発効年月日 |
---|---|---|
北海道 | 889円 | 令和3.10.01 |
東北 | ||
青森県 | 822円 | 令和3.10.06 |
岩手県 | 821円 | 令和3.10.02 |
宮城県 | 853円 | 令和3.10.01 |
秋田県 | 822円 | 令和3.10.01 |
山形県 | 822円 | 令和3.10.02 |
福島県 | 828円 | 令和3.10.01 |
関東 | ||
茨城県 | 879円 | 令和3.10.01 |
栃木県 | 882円 | 令和3.10.01 |
群馬県 | 865円 | 令和3.10.02 |
埼玉県 | 956円 | 令和3.10.01 |
千葉県 | 953円 | 令和3.10.01 |
東京都 | 1,041円 | 令和3.10.01 |
神奈川県 | 1,040円 | 令和3.10.01 |
北陸 | ||
富山県 | 877円 | 令和3.10.01 |
石川県 | 861円 | 令和3.10.07 |
福井県 | 858円 | 令和3.10.01 |
甲信越 | ||
新潟県 | 859円 | 令和3.10.01 |
山梨県 | 866円 | 令和3.10.01 |
長野県 | 877円 | 令和3.10.01 |
東海 | ||
岐阜県 | 880円 | 令和3.10.01 |
静岡県 | 913円 | 令和3.10.02 |
愛知県 | 955円 | 令和3.10.01 |
三重県 | 902円 | 令和3.10.01 |
関西 | ||
滋賀県 | 896円 | 令和3.10.01 |
京都府 | 937円 | 令和3.10.01 |
大阪府 | 992円 | 令和3.10.01 |
兵庫県 | 928円 | 令和3.10.01 |
奈良県 | 866円 | 令和3.10.01 |
和歌山県 | 859円 | 令和3.10.01 |
中四国 | ||
鳥取県 | 821円 | 令和3.10.06 |
島根県 | 824円 | 令和3.10.02 |
岡山県 | 862円 | 令和3.10.02 |
広島県 | 899円 | 令和3.10.01 |
山口県 | 857円 | 令和3.10.01 |
徳島県 | 824円 | 令和3.10.01 |
香川県 | 848円 | 令和3.10.01 |
愛媛県 | 821円 | 令和3.10.01 |
高知県 | 820円 | 令和3.10.02 |
九州 | ||
福岡県 | 870円 | 令和3.10.01 |
佐賀県 | 821円 | 令和3.10.06 |
長崎県 | 821円 | 令和3.10.02 |
熊本県 | 821円 | 令和3.10.01 |
大分県 | 822円 | 令和3.10.06 |
宮崎県 | 821円 | 令和3.10.06 |
鹿児島県 | 821円 | 令和3.10.02 |
沖縄 | ||
沖縄県 | 820円 | 令和3.10.08 |
なお、各都道府県名をクリックすると、厚生労働省ウェブサイトでその地域の「特定(産業別)最低賃金」も確認できますので、利用してみてください。
まとめ:最低賃金の計算方法を知って自分の給料を確認しよう
この記事では、働く人に向けて、最低賃金の計算方法を時給・日給・月給などの支給形態ごとに紹介してきました。
とくに「固定残業代」制度では、最低賃金を下回っていることもあり得ます。
ぜひ記事を参考に、最低賃金の計算方法を知って、自分の給料を確認しましょう。
〈こちら↓の記事もおすすめです〉
・「会社のことをどこかに相談したい」ときは…会社・仕事の悩みの相談先を紹介
・「次の会社をさがしたい」ときは…失敗しない転職先の探し方・見つけ方!
・「派遣社員ではたらきたい」ときは…「派遣社員になりたい!」ときはどうする?
参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 林智之・著『職場の法律トラブルと法的解決法158』三修社