帝国データバンクによれば、2020年の倒産件数は7,809件で、2000年以降では2番目の低水準でした。
ですが新型コロナの影響が長引いており、2021年の年末に向けて、倒産件数が上昇する可能性も。
僕が住む山形でも、老舗の百貨店「大沼」が倒産したうえ「社員185名に解雇予告をしなかった」として公表されています…。
このような状況のなか、
会社が倒産した…未払いの給料はどうなるの?
ということになるかもしれません。
そこでこの記事では、会社が倒産したら未払いの給料はどうなるのか、その対応や国の「未払賃金立替払制度」のあらまし、さらに「特定受給資格者」の利点まで、くわしく解説します。
「ウチの会社も危ないかも…」と心配なときは、ぜひご覧ください。
◆「会社・仕事のことをどこかに相談したい」ときの相談先は、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」
◆次の会社を探したいときには、こちらの記事が参考になります。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
・記事「派遣社員になりたいとき」
会社が倒産…未払いの給料はどうなる?
会社が倒産した…。でも今月分の給料はまだもらっていない…。
こんなとき、給料はあきらめるしかないのでしょうか?
とにかく自分で行動しなければ、給料は受けとれません
いいえ、大丈夫です!たとえば次の方法があります。
- 少額訴訟で支払いの請求をする(未払い給料が60万円以下の場合)
- 会社財産の仮差押手続きをする
- 国の「未払賃金立替払制度」を利用する
ただし、どの場合についても、とにかく「自分で行動する」必要があります。
「だまって待っていれば、誰かが支払ってくれる」というわけではありません。
さらに、ある程度は自分で調べて、どうすればいいのかを考えなくてはなりません。
転職や生活費など、心配なことはあるかと思いますが、後述する「特定受給資格者」の利点を活かしながら、対応していきましょう。
また、上記1・2の方法は、弁護士に依頼しないと難しい案件です。
上記3なら、個人でもなんとか対応できますので、まずは記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」で紹介している労働局・労働基準監督署に相談しましょう。
次項では、上記3の「未払賃金立替払制度」について、くわしくご紹介します。
会社が倒産して給料が未払いなら、国の「未払賃金立替払制度」の利用を
会社が倒産して給料が未払いなら、国の「未払賃金立替払制度」が利用できます。
ここでは、「未払賃金立替払制度」をくわしくご紹介します。
なお、制度について正確な情報を知りたいときは、こちらの厚生労働省のサイトもご覧ください。
「未払賃金立替払制度」とは?
「未払賃金立替払制度」とは、会社が倒産したことで給料未払いのまま退職した社員に、給料の8割を国が立て替えて支払う制度です。
独立行政法人 労働者健康安全機構が、支払などの業務を行います。
「未払賃金立替払制度」を利用できる会社・社員の条件
「未払賃金立替払制度」を利用できるのは、会社と社員が、それぞれ次の条件をすべて満たしている場合です。
会社側の「倒産」には、以下の2つの場合があり、それぞれで申請方法が異なります。
- a.法律上の倒産([1]破産、[2]特別清算、[3]民事再生、[4]会社更生の場合)
→破産管財人等に倒産の事実等を証明してもらう必要あり。必要な用紙は労働基準監督署へ - b.事実上の倒産(中小企業について、事業活動が停止し、再開する見込みがなく、賃金支払能力がない場合)
→労働基準監督署長の認定が必要。労働基準監督署に認定の申請を行う
また、社員側の期間については、わかりやすく図にすると下図のとおり。
申請できる期間の制限がありますので、できるだけ早めに行動してください。
「未払賃金立替払制度」の対象となる給料と立替払いの額
「未払賃金立替払制度」の対象となる給料は、「退職日の6か月前から立替払請求日の前日までに、支払期日が到来している未払賃金」です。
また、「未払賃金」の対象となるのは次の”賃金など”ですので、ボーナスはふくまれません。
- 定期賃金:毎月定期的に支払われる賃金(基本給・家族手当・通勤手当・時間外手当など)
- 退職手当:いわゆる退職金
なお、未払賃金総額が2万円未満のときは対象外です。
そして、立替払いの額は「未払賃金総額の8割」ですが、下表のとおり年齢によって限度があります。
退職日における年齢 | 未払賃金総額の限度額 | 立替払の上限額 |
---|---|---|
45歳以上 | 370万円 | 296万円(370万円×0.8) |
30歳以上45歳未満 | 220万円 | 176万円(220万円×0.8) |
30歳未満 | 110万円 | 88万円(110万円×0.8) |
「未払賃金立替払制度」の利用方法
「未払賃金立替払制度」の利用方法は、「法律上の倒産の場合」と「事実上の倒産の場合」で違います。
ただし、どちらの場合も手順が複雑ですので、まずは労働基準監督署への相談がおすすめです。
①「法律上の倒産の場合」の利用方法
「証明者」は、倒産の区分によって以下のように異なります。
破 産:破産管財人
特別清算:清算人
民事再生:再生債務者(管財人)
会社再生:管財人
②「事実上の倒産の場合」の利用方法
「未払賃金立替払制度」の2019年度の実施状況
「未払賃金立替払制度」の、2019年度の実施状況は次のとおりです。
〈「未払賃金立替払制度」2019年度の実施状況〉
立替払を行った企業数と立替払額は減少に転じ、支給者数は増加した
・企業数:1,991件(6.7%減少)
・支給者数:23,992人(1.9%増加)
・立替払額:86億3,779万円(0.7%減少)
( )内は、対前年度比
前年より減少したとはいえ、1年で2万人以上が利用したんですね
また、企業規模別の立替払状況は、下グラフのようになっています。
企業数でみると、「1~29人」規模の企業が91.1%と大きく占めています。
倒産なら「特定受給資格者」となり失業保険などで利点も
会社が倒産すると、給料や転職、生活のことなど、対応すべきことが多く大変です。
ですが倒産で退職した場合は「特定受給資格者」となるため、「失業保険(失業手当、基本手当とも)」が優遇されるなどの利点もあります。
ぜひこういった制度を利用して、次の仕事をさがしましょう
(仕事さがしには、記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」が参考になります)
「特定受給資格者」の利点①:失業保険の給付日数が長く
まず、失業保険の給付日数が長くなるという利点があります。
年齢にもよりますが、最長で270日分もの給付が。
こちら↓は、いわゆる「自己都合退職」した場合で、最長でも150日までです。
その差は明白といえます。
「特定受給資格者」の利点②:失業保険が給付制限期間ナシで受けとれる
「自己都合退職」の場合、失業保険の給付には、「7日間の待機期間」と「3ヶ月の給付制限期間」が発生します。
ですが「特定受給資格者」であれば、「3ヶ月の給付制限期間」はナシで、「7日間の待機期間」さえ過ぎれば、失業保険が受けとれます。
これなら、未払いの給料がすぐに給付されなくても、持ちこたえられますね。
「特定受給資格者」の利点③:国民健康保険の保険料軽減
「特定受給資格者」の利点は失業保険だけではありません。
国民健康保険の保険料も軽減されます。
前年の給与所得を、30 / 100に軽減して保険料を計算しますので、大幅に保険料が下がります。
ただしこちらは、お住いの市区町村役所への申請が必要。
「雇用保険受給資格者証」をもって、申請を行ないましょう。
(申請窓口や持参書類などくわしくは、お住まいの市区町村役所ウェブサイトへ)
◆「特定受給資格者」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
まとめ:会社が倒産して給料未払いなら、とにかく行動を!
この記事では、会社が倒産したら未払いの給料はどうなるのか、その対応や国の「未払賃金立替払制度」のあらまし、さらに「特定受給資格者」の利点まで、くわしく解説しました。
会社が倒産して給料未払いなら、とにかく行動をおこすことが大切!
ぜひ記事を参考に、「未払賃金立替払制度」の申請を目指し、労働基準監督署へ相談してみましょう。
〈こちら↓の記事もおすすめです〉
- 「会社のことを、どこかに相談したい」ときは…会社・仕事の悩みの相談先を紹介
- 「次の会社をさがしたい」ときは…失敗しない転職先の探し方・見つけ方!
参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 岩出誠・著『働く人を守る!職場六法』講談社