せっかくの休日なのに出勤、さらに、
休日出勤の通勤中に事故にあって…
これは労災になるの?
こんなことがあったらウンザリですね。
しかも労災保険は適用されるのでしょうか?
そこでこの記事では、休日出勤の通勤中に事故にあうと労災になるのか、そして休日における休業補償給付のルールと、「休日と労災」について大きく2つのテーマを解説していきます。
「週末に休日出勤しなきゃいけない」というときは、念のためぜひご覧ください。
◆「労災保険とその内容」をくわしく知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「労災保険とは?わかりやすく解説もわかりやすく解説」
休日出勤の通勤中に事故…労災になる?
まずは、休日出勤の通勤中に事故にあってしまった場合、労災になるのかどうかを確認しましょう。
事前に休日出勤を指示されていれば労災に
休日出勤の通勤中に事故にあってしまった場合、事前に会社側から休日出勤を指示されていれば、労災になります。
これは労災保険が「業務上の事由、または通勤によるケガや病気」について必要な給付を行うとしているため。
そして「通勤災害」の「通勤」に該当するには、次の点が必要です。
「通勤」とされるためには、移動行為が業務に就くため、または業務を終えたことにより行われるものであることが必要
そのためには「就業することとなっていた」こと、つまり「事前に会社から指示されていた」ことが必要となります。
上司の指示がない、自主的な出勤では労災とならない可能性も
ですから上司の指示がなく、社員が自主的に、
来週発表するプレゼンの資料、全然終わる気がしない…。しょうがないから、日曜に出社してつくるか…。
こう判断して休日出勤するときでは、労災に該当しない可能性が高いといえます。
ただし、事前に指示がなかった場合でも、「会社が無断の休日出勤を容認していた」場合は、労災が認められた裁判例も。
一度、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する”労働局”などの公的機関に相談してみてください。
緊急の呼び出しなら「通勤災害」ではなく「業務災害」に
通勤途中であっても、次のような場合には「業務の性質を有するもの」とされ、「通勤災害」ではなく「業務災害」になります。
ただし「事前に休日出勤を命じられていた場合」には、通常の出勤日と同様となるため、通勤途中の労災は「通勤災害」です。
「業務災害」では、「待期期間中に会社から休業補償がもらえる」など有利な点もあります。
万が一、通勤中に労災になった場合は、上記に該当するか確認してみましょう。
休日の「待期期間」や支給はどうなる?労災の休業補償給付のルールを確認
労災保険における休業補償給付とは、労働災害によるケガや病気で仕事に行けず、給料をもらえない日について、給料の約8割を支給してくれる制度です。
ここでは、休日の「待期期間」や支給はどうなるのかなど、労災保険における休業補償給付のルールを確認していきましょう。
[休業補償給付のルール①]支給要件と待期期間
休業補償給付のとくに重要なルールは、支給要件と待期期間の2点です。
1.休業補償給付の支給要件
休業補償給付を支給されるには、次の3つの要件をすべて満たすことが必要です。
この要件を満たす限り、休業4日目からその期間中ずっと休業補償給付が支給されます。
ただし療養を開始してから1年6ヶ月たっても、そのケガや病気が治っておらず、傷病等級表の傷病等級に該当するほどの障害が残ったときは、傷病補償年金に切り替わって支給となります。
2.休業補償給付の待期期間
休業補償給付は休業4日目から支給されるというルールになっており、休業初日から3日までは「待期期間」となり給付金は支給されません。
この「待期期間」中は、業務災害(仕事上でのケガ・病気)については、会社側に休業補償(1日につき平均賃金の60%)を行う義務があります。
ただし通勤災害(通勤途中のケガ・病気)については、会社側に休業補償を行う義務はありません。
もしも「労働災害なのに、会社が労災申請してくれない…」ときは、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する”労働局”などの公的機関に相談してみてください。
[休業補償給付のルール②]残業中の労災なら休業開始は翌日から
「休業がいつ開始されるか」を確認すると、定時内での労災と、残業中の労災で次のように変わってきます。
残業では翌日からカウント開始ですので、ご注意ください。
[休業補償給付のルール③]「待期期間」3日間のカウントには会社の休日も入ります
次に「待期期間」の考え方ですが、この3日間のカウントには「歴日数」が使われます。
「歴日数」とは、カレンダー上の日数のこと。
つまり会社の営業日数(「土日祝日が休み」など)でカウントしているわけではないため、「待期期間」には会社の休日も入ります。
もちろん、「パートで週2日しか勤務していなかった」という場合も、勤務日だけをカウントするのではなく、カレンダー上の3日間が「待期期間」です。
[休業補償給付のルール④]給付金は会社の休日分も支給されます
休業補償給付が「支給される日」のルールとして、上記「1.休業補償給付の支給要件」を満たしていれば会社の休日分も給付されます。
これは支給額が、以下のように「給付基礎日額」に基づいているため。
休業補償給付の支給額=休業1日につき、「給付基礎日額」の80%が支給される
「給付基礎日額」は次のように求めます。
「歴日数」とは、カレンダー上の日数のこと。
会社の営業日数(「土日祝日が休み」など)でカウントしているわけではないため、支給される日も会社の休日に関係なく、毎日支払われるというわけです。
そのため、「パートで週2日しか勤務していなかった」という場合でも、休業期間は毎日支払われます。
ただし総額としては、おおよそこれまでひと月にもらっていた給料の80%となります。
[休業補償給付のルール⑤]出勤しながら通院している場合も要件を満たせばもらえます
出勤しながら通院している場合も、上記「1.休業補償給付の支給要件」を満たしていれば会社の休日分も給付されます。
そして「午前中に通院して、午後から出勤した」など、労働時間のうち一部を休業した場合には、次の額が支給されます。
(給付基礎日額 − 実際にはたらいて支給される給料)×60%にあたる額
ただし、60 / 100を超える給料が支払われているときは、要件の「3.給料が支払われていない」を満たさないことになるので、休業補償給付は支給されません。
まとめ:休日における労災保険のルールの理解を
この記事では、休日出勤の通勤中に事故にあうと労災になるのか、そして休日における休業補償給付のルールと、「休日と労災」について大きく2つのテーマを解説してきました。
少しわかりづらいですが、休日における労災保険のルールを理解することは大切です。
ぜひ記事を参考に、要件を確認して、損をしない労災申請を行ないましょう。
◆「労災保険とその内容」をくわしく知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
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参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 近藤恵子・著『知らないと損する労災保険』東洋経済新報社