会社で働いていて、
7時間勤務の会社で1時間残業したけど、割増になってない…。これって問題ないの?
こんな疑問をお持ちの方はいませんか?
定時から1時間も残業したら、割増賃金になるはずでは?と思いますよね。
そこでこの記事では、 働く人向けに、 残業しても割増賃金にならないこともあるのか、そして所定労働時間と法定労働時間の違い、法定時間内残業と法定時間外残業の違いについても解説していきます。
「残業のルールをくわしく知りたい」というときは、ぜひご覧ください。
◆「労働基準法とその内容」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「労働基準法とは?労働時間などのルールもわかりやすく解説」
◆次の会社を探したいときには、こちらの記事が参考になります。
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残業しても割増にならないこともある?所定労働時間と法定労働時間の違い
まずは、残業しても割増にならないこともあるのか、そして法定労働時間と所定労働時間の違いを解説します。
7時間勤務の会社で1時間残業しても、割増賃金にならないこともある
まず結論として、残業しても割増賃金にならないこともあります。
それはたとえば、通常7時間勤務の会社で1時間残業した場合。
(さらに週の勤務時間が、40時間を超えない場合です)
1時間の残業ですから、その分の賃金が出るのはもちろんですが、割増でなくても問題ありません。
それは、所定労働時間は超えたが、割増となる法定労働時間は超えていないため。
くわしくは次項でご紹介します。
所定労働時間と法定労働時間の違い
所定労働時間と法定労働時間の違いは、次のとおりです。
- 所定労働時間:就業規則などで決められた”始業時刻から終業時刻までの時間”から、休憩時間を引いた労働時間
- 法定労働時間:1日8時間、1週間40時間(労働基準法32条で労働の上限とされている時間)
労働基準法 32条(労働時間)
1項 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
2項 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。
くわしくは次項でご紹介しますが、割増賃金になるのは「法定労働時間を超えた場合」。
前項の例でみると、7時間勤務の会社なら、所定労働時間は7時間。
1時間残業しても合計8時間ですので、法定労働時間は超えません。
そのため、割増賃金を支払わなくても問題はないのです。
残業代の基本知識(法定時間内・法定時間外残業と割増賃金)
次に、残業代の基本知識として、法定時間内・法定時間外残業と割増賃金についてご紹介します。
法定時間内残業と法定時間外残業の違いと割増賃金
まず残業には法定時間内残業と法定時間外残業があり、その違いは次のとおりです。
- 法定時間内残業:法定時間以内での残業のこと
- 法定時間外残業:法定時間を超えた残業のこと
(法定時間とは、労働基準法第32条で決められた「1週間40時間、1日8時間」のこと)
そして残業代の割増賃金は、次のように「労働時間を延長し」たとき、つまり法定時間外残業に対して行うと決められています。
労働基準法 37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
使用者が、33条または前条1項の規定により労働時間を延長し、または休日に労働させた場合においては、その時間またはその日の労働については、通常の労働時間または労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について60時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
ちなみに、上記で「前条1項の規定」とは、後述する36協定のことです。
そして前項でご紹介した例で考えると、1時間の残業は下図のように「法定時間内残業」ですので、割増賃金とはなりません。
ですがPM6:00~PM10:00の残業は、法定時間である8時間を超えていますから「法定時間外残業」となり、1.25倍以上の割増賃金となります。
また割増賃金は、重複して発生することもあります。
上図のPM10:00~AM5:00にはたらいた分は、「法定時間外残業」+「深夜残業」となるため、両方を合計して1.5倍以上の割増賃金が必要です。
月60時間を超える残業は割増率が引き上げに(中小企業は2023年4月から)
労働基準法37条にあるように、月60時間を超える残業については、割増率が1.25倍 → 1.5倍に引き上げになります。
ただし、現時点では大企業のみで、中小企業については2023年4月1日から適用されます。
法定労働時間を超えて働くには、会社の36協定届け出が必要
法定労働時間は1日8時間、1週間40時間と労働基準法32条で決められており、これが労働時間の上限(法定労働時間)とされています。
ただし、労働組合などとの労使協定で、時間外・休日労働について定め、労働基準監督署に届け出た場合は、法定時間外の残業が認められます。
この労使協定を「時間外労働協定」といい、労働基準法36条で規定しているため、一般的には「36協定」とよばれます。
このように、本来は法定労働時間があり、その時間を超えてはたらくには、会社が36協定を届けていることが必要だということを覚えておきましょう。
法定時間外労働をしたのに割増残業代が出ないときの対応方法
記事の最後に、 法定時間外労働をしたのに割増残業代が出ないときの対応方法をご紹介します。
[対応方法①]まずは会社に確認
割増残業代が出ないとき、まずは会社に「給料の支給額にまちがいがないか」を確認しましょう。
特に働きはじめには、担当者の入力間違いということも起こります。
このときは念のため、上司などとのやり取りを、スマホやICレコーダーなどで録音しておきましょう。
それでも会社側が給与額を修正しないなら、次項の公的機関に相談してください。
[対応方法②]会社に相談しても解決しないときは労働局へ
会社に相談しても解決しないときは、労働局へ相談しましょう。
もし上司や人事担当者とやり取りした録音があれば、証拠として持参してください。
ただ、「公的機関に相談しづらい…」というときには、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する「一般社団法人ボイス」へ相談してみてください。
もしも、「もうこんな会社とはかかわりたくない」ということであれば、こちらの記事を参考に次の会社を探してみてください。
まとめ:法定時間外残業と割増賃金のルールを理解しましょう
この記事では、 働く人向けに、 残業しても割増賃金にならないこともあるのか、そして所定労働時間と法定労働時間の違い、法定時間内残業と法定時間外残業の違いについても解説してきました。
残業しても割増にならないこともあります。
ぜひ記事を参考に、法定時間外残業と割増賃金のルールを理解しましょう。
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参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 林智之・著『職場の法律トラブルと法的解決法158』三修社