転職先を探していて、
正社員と非正規社員でどちらがいいかな…。メリット・デメリットや給料など、どんな違いがあるんだろう?
こんな疑問をお持ちの方はいませんか?
とくにブラック企業でひどい目にあったときなどは、「次は非正規社員がいい…」という方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、正社員と非正規社員の違いについて、定義や雇用形態、メリット・デメリット、生涯年収などのデータもご紹介します。
「次の仕事を選ぶにあたって、正社員と非正規社員の違いを知っておきたい」というときは、ぜひご覧ください。
◆「契約社員・契約社員のルール・情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「契約社員とは?無期転換ルール、雇止めも解説」
・記事「派遣社員とは?わかりやすく解説」
◆次の会社を探したいときには、こちらの記事が参考になります。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
・記事「派遣社員になりたいとき」
正社員と非正規社員の違いとは?定義の確認
まずは、正社員と非正規社員の違いを確認するために、定義と雇用形態を確認しましょう。
正社員(正規雇用)と非正規社員(非正規雇用)の定義
正社員と非正規社員の定義ですが、法律上は「正社員」・「非正規社員」といった定義はありません。
そこで国の考え方をみると、厚生労働省 職業安定局の「非正規雇用のビジョンに関する懇談会」(平成24年3月)では、次のように定義しています。
以下で、各条件をくわしくご紹介します。
「正規雇用」の条件:(1)労働契約の期間の定めがない
まず1つめの条件は、労働契約の期間の定めがないこと。
つまり、会社と無期雇用契約を締結していることが条件です。
社員が会社と結ぶ労働(雇用)契約には「無期」と「有期」があり、次のような違いがあります。
- 無期雇用(労働)契約:期間の定めのない労働契約のこと
- 有期雇用(労働)契約:「3ヶ月」や「6ヶ月」など、期間の定めのある労働契約のこと。更新されている場合も含む
自分の契約が無期か有期かを確認する方法は、働きはじめに会社から明示される「労働条件通知書」や、とりかわした「雇用契約書」などを調べること。
書類の「契約期間」の欄が”期間の定めあり”なら「有期労働契約」、”期間の定めなし”なら「無期労働契約」です。
そして自分が退社するまで、その会社で働けるのが「無期雇用」となります。
「正規雇用」の条件:(2)所定労働時間がフルタイムである
2つめの条件は、所定労働時間がフルタイムであることです。
「所定労働時間」とは、雇用契約で定められた、あなたが会社で働く時間のこと。
この「所定労働時間」が、会社の就業規則などに規定された「1週間の所定労働時間」と同じ労働時間であることが「フルタイム」です。
そして「所定労働時間」が、「1週間の所定労働時間」よりも短い場合が「パートタイム(短時間労働者)」となります。
つまり法律の定義からいえば、「フルタイムのパート」という働き方は存在しません。
「正規雇用」の条件:(3)直接雇用である
最後の条件は、直接雇用であること。
「直接雇用」とは、働く会社と直接雇用契約を結び、直接給与をもらう働き方です。
正社員だけでなく、パートやアルバイト、契約社員など、ほとんどが直接雇用にあたります。
それに対して「間接雇用」は、働く会社と給与をもらう会社が異なる働き方で、派遣社員がこれにあたります。
◆「派遣社員」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「派遣社員とは?」
・記事「派遣社員になりたいとき」
正社員と非正規社員の雇用形態
次に、正社員と非正規社員の雇用形態をご紹介します。
正社員と非正規社員の雇用形態
「雇用形態」とは、「労働契約期間の有無」や「所定労働時間の長さ」で分類される、働き方の違いです。
たとえば次のような雇用形態がありますが、すべてが法律などで定義されたものではなく、一般的な名称も含まれます。
- 正社員:労働契約の期間の定めがなく、所定労働時間がフルタイムで、直接雇用である労働者
- パートタイム労働者:「所定労働時間」が、「1週間の所定労働時間」よりも短い労働者(アルバイトも含まれる)
- 契約社員(有期労働契約):労働契約にあらかじめ雇用期間が定められている労働者
- 派遣労働者:派遣元と雇用契約を結び、派遣先の指揮命令を受けて働く労働者
- 短時間正社員:フルタイムの正社員と比べて、その所定労働時間が短い正社員
重要なのは呼び方ではなく「労働契約の実態」
前項でわかるように、重要なのは「正社員」や「パート」といった呼び方ではなく、「労働契約の実態」です。
なかには、
「正社員」で入社したはずなのに、「契約期間」があった!
こんなウソのような話もあります。
そうすると適用されるルールが、上記3つを満たした「正規雇用」とは違ってきます(退職できる時期など)。
逆に、「契約社員」で入社したけど「無期雇用契約」という話も聞いたことがあります。
そこでまずは、入社時にサインした雇用契約書などで、「労働契約期間の有無」や「所定労働時間」を確認。
そのうえで、適用される法律・ルールを把握しましょう(くわしくは後述)。
正社員と非正規社員のメリット・デメリット
次に、正社員と非正規社員の違いがよくわかる、それぞれのメリットとデメリットをご紹介します。
正社員のメリット・デメリット
まずは、正社員のメリット・デメリットです。
正社員のメリット
正社員のメリットとしては、次のことが挙げられます。
給与のデータについてくわしくは、後述しています。
正社員のデメリット
正社員のデメリットとしては、次のことが挙げられます。
正社員には、仕事内容や時間的な自由が少ない分、社会的な地位や高めの給与を得ているといえます。
しかし安い給料で限界まで働かされる「ブラック企業」もあるため、「正社員だから安泰」ともいえません。
非正規社員のメリット・デメリット
次に、非正規社員のメリット・デメリットです。
非正規社員のメリット
非正規社員のメリットとしては、次のことが挙げられます。
非正規社員のデメリット
非正規社員のデメリットとしては、次のことが挙げられます。
非正規社員は、仕事内容や時間的な自由が大きい分、社会的な地位や給与が低いといえます。
非正規社員は「正社員と同じ仕事なのに、給与が低い」といった問題もありましたが、「働き方改革」における「同一労働同一賃金」を実現するための動きがはじまっています。
給与のデータについてくわしくは、後述しています。
正社員と非正規社員で適用される法律・ルールの違い
次に、正社員と非正規社員で適用される法律・ルールの違いをご紹介します。
正社員と非正規社員で適用される法律の違い
正社員と非正規社員では、適用される法律に違いがあります。
ただし「正社員だから適用される法律が多い」というわけではありません。
その逆で、非正規社員だけに適用される法律があります。
たとえば各法律の対象者は、次のとおり。
労働法:正社員・非正規社員の両方を含めたすべての労働者
パートタイム・有期雇用労働法:パートタイム労働者、有期雇用労働者
派遣法:派遣労働者
以下では、それぞれの法律をご紹介します。
労働法
「労働法」とは、そういった名前の法律があるわけではなく、労働基準法や労働組合法、男女雇用機会均等法、最低賃金法など、働くことに関するさまざまな法律の総称です。
なかでも労働三法(労働基準法、労働組合法、労働関係調整法)は労働者の権利を守る中心的存在で、特に労働基準法(労基法)は、労働者にとって最も身近で最も大切な法律といえます。
労基法の特徴は、「強行法規」という点。
一日の労働時間の上限や、賃金の支払い方法などのルールは、すべての会社に適用され、守らない経営者には罰則が課せられます。
パートタイム・有期雇用労働法
以前はパートタイム労働法でしたが改正され、2020年4月からはパートタイム・有期雇用労働法となりました。
パートタイム労働者と有期雇用労働者の雇用管理について定めた法律で、その定義は次のとおり。
・パートタイム労働者:1週間の所定労働時間が、同一の事業主に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間にくらべて短い労働者
・有期雇用労働者:期間の定めのある労働契約を締結している労働者
→「パートタイマー」、「アルバイト」、「嘱託」、「契約社員」、「臨時社員」、「準社員」など、呼び方は異なっても、この条件にあてはまれば対象です
労働者派遣法
派遣労働の特徴が、雇用主(派遣元)と働き場所(派遣先)が異なる点。
そのため「このときは派遣先・元の、どちらが行うべきか」ということがわかりづらくなります。
そこで、派遣元と派遣先の責任をわけ、適用される法律や責任を規定しているのが労働者派遣法です。
また2012年の改正では、正式名が次のように変更。
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律
↓
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律
「派遣労働者の保護のための法律」であることが明確になりました。
適用される法律内のルールの一部は「労働条件」で異なる
前項で「労働法はすべての労働者に適用される」と書きましたが、そのなかの一部のルールは「労働条件」で適用される範囲が異なります。
たとえば、有給休暇の付与日数。
フルタイムの労働者は下表(1)が、労働日数・時間が少ない労働者は下表(2)のように、有給休暇の付与日数は異なります。
会社の対応に疑問をもったときは、自分の労働条件と、その条件にあった法律・ルールを確認してみてください。
調査データからみる正社員と非正規社員の違い
記事の最後に、調査データからみる「正社員と非正規社員の違い」をご紹介します。
[データ①]正社員と非正規社員の割合
厚生労働省が公表したデータによれば、正社員と非正規社員の割合は、次のように6:4です。
労働者5,620万人のうち
・正規社員:3,529万人(63%)
・非正規社員:2,090万人(37%)
くわしくは、「正規雇用労働者と非正規雇用労働者の推移」(下表)をご覧ください。
非正規社員の数は2010年以降増加していましたが、2020年には減少。
やはり、新型コロナによる経済への影響が大きいようです。
[データ②]正社員と非正規社員の賃金の状況
正社員と非正規社員の賃金の状況は下グラフのとおりで、正社員はしっかり「年功序列」になっています。
(タテ軸は収入、ヨコ軸は年齢)
正社員以外はほとんど上がらず、パートタイマー(短時間労働者)だけが35歳あたりで若干増加する状況です。
[データ③]正社員・非正規社員の生涯年収
労働政策研究・研修機構が公表した「ユースフル労働統計 2020」によれば、正社員・非正規社員の生涯年収は次のとおりです。
・フルタイムの正社員:2億7千万円
・フルタイムの非正社員:1億5千万円
(大学・大学院卒業後フルタイムで働いた場合の 60 歳までの生涯賃金(退職金を含めない))
正社員が非正社員の1.8倍となり、生涯年収は大きく差がつくことがわかります。
[データ④]非正規社員の年齢の割合
非正規社員の年齢の割合をみると、下グラフのように「65歳以上」の数が増え続けています。
2020年はほかの年代の労働者がすべて減少したにもかかわらず、「65歳以上」だけは増加しました。
[データ⑤]非正規社員の雇用形態別の割合
非正規社員の雇用形態別の割合をみると、下グラフのとおり最も多いのはパートで、2020年データをみると49%と約半数です。
またアルバイトも増え続けています。
まとめ:正社員と非正規社員の違いを知り、労働契約の確認を
この記事では、正社員と非正規社員の違いについて、定義や雇用形態、メリット・デメリット、生涯年収などのデータもご紹介しました。
まずは自分の「労働契約の実態」がどうなっているかを確認しましょう。
そして正社員と非正規社員の違いを知って、職場での問題があるなら、その雇用実態にあった労働法に沿った適当な対応を行ってください。
◆「契約社員・契約社員のルール・情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「契約社員とは?無期転換ルール、雇止めも解説」
・記事「派遣社員とは?わかりやすく解説」
◆次の会社を探したいときには、こちらの記事が参考になります。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
・記事「派遣社員になりたいとき」
参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 佐々木亮・著『武器としての労働法』KADOKAWA
- 書籍 労働調査会出版局・編『新よくわかる労働基準法』労働調査会