厚生労働省の調査によれば、新型コロナウイルスの影響で勤め先を解雇される方が(見込みをふくめ)11万人を超えています。
そんななか、
会社にパートの仕事を解雇された…、これは「会社都合」になるの?
このように「会社の対応は本当に正しいの?」と疑問をもつ方も、多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、パートの仕事を解雇されたら離職理由は「会社都合」になるのか、「自己都合」なのか、解雇予告手当や有給休暇、失業保険はどうなる?といった疑問にお答えします。
パートさんとして働いている方は、ぜひご覧ください。
◆「パート社員のルール・情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「パート社員とは?残業代、雇止めなどのルールも解説」
◆次の会社を探したいときには、こちらの記事が参考になります。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
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【前提】会社がパート社員を解雇するのは違法?
まずは前提として、会社がパート社員を解雇するのは違法かどうかを確認しましょう。
パート社員でも正社員と同じで「正当な理由」がなければ解雇は違法
パート社員の場合でも正社員と同じで、「正当な理由」がなければ解雇は違法です。
(「正当な理由」については後述)
パートだからといって、「正社員よりもカンタンに解雇できる」というわけではありません。
これは解雇について定めた「労働契約法」では、正社員やパート社員というくくりがなく、すべて「労働者」としてルールを決めているためです。
解雇についてのルール
「解雇」とは、社員側の意思に関係なく、会社の一方的な意思により「雇用契約」を終了させることで、次の3つの類型があります。
- 普通解雇:社員の能力・適性の不足や労働不能を原因とする解雇
- 懲戒解雇:会社の規律に違反した「懲戒処分」としての解雇
- 整理解雇:会社の倒産や縮小による「経営上の必要性」による解雇
とはいえ、会社が「解雇」をいつでも自由に行えると、労働者の生活は不安定になってしまいます。
そこで「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、労働者をやめさせることができない」(労働契約法第16条)など、法律で制限されています。
◆「会社が解雇できる条件」などくわしく知りたい方には、こちらの記事がおすすめです。
・記事「解雇と退職勧奨の違いとは?」
◆解雇のことを公的機関などに相談したいならこちら。
・記事 「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」
解雇が認められる「正当な解雇理由」
解雇が認められる「正当な解雇理由」としては、たとえば次のものが挙げられます。
- 出退勤の状況がわるい
- 勤務成績がわるい
- 能力や性格が業務内容にあわない
- 上司の指示や命令にしたがわない
- 病欠が多いなど、健康状態がわるい
- 重大な「経歴のごまかし」をした
ただしこういった場合でも、会社は注意・指導を行なうことが必要。
注意・指導を行ない、改善がみられない場合にのみ、解雇を検討できます。
【パートを解雇されたら 1】”離職票の離職理由”は「会社都合」になる?「自己都合」なの?
次に、パートを解雇されたら離職票の離職理由”は会社都合になるのか、それとも自己都合なのかを確認しましょう。
パートを解雇されたら”離職票の離職理由”は「会社都合退職」
パートの仕事を解雇された場合、次の項目に該当するため「特定受給資格者」であり「会社都合退職」となります。
特定受給資格者の範囲
2.「解雇」等により離職した者
(1) 解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く。)により離職した者
(ハローワークインターネットサービスより)
ただし「社員側に重大な責任がある解雇」の場合は「自己都合退職」扱いです。
ちなみに「自己都合退職」と「会社都合退職」では、下表のように違いがあります。
失業手当 給付制限期間 | 失業手当 給付日数 | 国民健康保険料の 軽減措置 | |
---|---|---|---|
1.自己都合退職 | 7日+3ヶ月 | 90日~150日 | なし |
2.会社都合退職 | 7日 | 90日~330日 | あり |
もしも会社が「自己都合退職」にするようなら、”一般社団法人ボイス”への相談がおすすめ。
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【パートを解雇されたら 2】解雇の予告は何日前まで?解雇予告手当は支給される?
次に、パートの解雇で”解雇の予告は何日前までに行うのか”・”解雇予告手当は支給されるのか”を確認しましょう。
パートの解雇でも「解雇の予告」は30日前まで
パートさんの場合でも、会社が解雇を行う際には、30日前に「解雇の予告」をする必要があります。
解雇予告を行わない場合には、「解雇予告手当」が必要です。
「解雇の予告」がないなら「解雇予告手当」の支給が必要
解雇の予告を行わない場合には、「解雇予告手当」として30日分以上の平均賃金を支給しなければなりません(労働基準法第20条)。
”解雇予告を行った日から解雇日までの日数”を「30日」から引き、足りない日数分の手当の支給が必要です。
たとえば、
・解雇の20日前に解雇予告 → 10日分の予告手当が必要
・解雇日に予告(即日解雇) → 30日分の予告手当が必要
また、社員側が「解雇の理由」について証明書を請求した場合に、会社はすぐに証明書を交付しなければなりません(労働基準法第22条)。
こういった基本的なルールは、正社員でもパート社員でも同じと考えてOKです。
なお、転職を考えたときは、応募書類作成から面接、内定までを無料でサポートしてくれる転職エージェントを利用すれば、転職での失敗が減ります。
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【パートを解雇されたら 3】残った有給休暇は買い取ってもらえる?
次に、パートを解雇されるときに「残った有給休暇」は買い取ってもらえるのか確認しましょう。
有給休暇買い取りの義務はないので会社次第
パートを解雇されたとき、残った有給休暇を買い取る義務は会社にはありません。
そのため、有給休暇を買い取るかどうかは、会社次第です。
ただし、会社が次のような制度を設けるのは、休暇を禁じているため無効。
- 事前に買い取りするから、有給休暇は取得しないこと
しかし「年休は自由にとってよし。もし消化されない年休があれば買い取る」といった制度は有効となり、有給休暇の買い取りを請求できます。
このような制度が会社にあるかどうか、人事担当の方に確認してみましょう。
◆「パート社員の有給休暇のルール」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「パートは有給休暇がもらえない?」
解雇の日まで有給休暇で休むのはOK!ただし引き継ぎは必要
もし会社に「有給休暇の買い取りはしない」と言われたら、
じゃあ、解雇される日まで有給休暇で休んじゃおう!
と思いますよね。
このように、解雇の日まで有給休暇をとることはOKです。
このとき、会社が次のようにいって、有給休暇を認めないことがあるようです。
会社には「時季変更権」があるから、解雇日までの有給休暇は認めないよ
「時季変更権」とは、「事業の正常な運営を妨げる場合、他の時季に与える」という会社の権利で、これはたしかに正当な権利。
しかし「時季変更権」が使えるのは、「解雇までの期間」だけです。
解雇日以降には「時季変更権」を使えないため、解雇日までの有給休暇取得を、会社は拒めません。
ただし、業務の引き継ぎは必要です。
引き継ぎをしていないと、会社から損害賠償を請求される可能性もあるので注意してください。
パート社員の有給休暇の発生ルール
パートさんには、有給休暇は発生しないよ
こんなウソをいうブラック企業もありますが、パートさんにも有給休暇は発生します。
まず、有給休暇が発生する条件は、次の両方を満たすこと。
そしてパート・アルバイト・契約社員など、正社員にくらべて出勤日数や出勤時間が少ない場合でも、次のどちらかに該当するなら有給休暇が与えられます。
- 所定労働日数が週4日(年216日)を超える
- 所定労働日数が週4日以下でも、所定労働時間が週30時間以上
また、週4日以下・週30時間未満でも、下表のように労働日数に応じた有給休暇をとることができます。
【パートを解雇されたら 4】失業保険はどうなる?
次に、パートを解雇されたら失業保険はどうなるのか、確認しましょう。
被保険者期間が通算6か月以上なら失業保険が出ます
パートさんが解雇された場合も、失業保険(失業給付金・基本手当)は支給されます。
ただし、解雇前の1年間に被保険者期間(会社に勤務していた期間)が通算して6か月以上必要ですので、注意してください。
そして解雇された場合は、前述のとおり「特定受給資格者」に該当しますので、2~3ヶ月待たされる「給付制限」はありません。
失業保険をもらえるタイミングは、待機期間の7日の後となります。
とはいえ、実際にお金が振り込まれるのは、ハローワークでの求職申し込みの約1ヶ月後です。
◆「特定受給資格者が失業保険を受け取れるタイミングや期間」については、こちらの記事でくわしくご紹介しています。
・記事「特定受給資格者と特定理由離職者の違いとは?」
【パートを解雇されたら 5】再就職手当は支給される?
次に、パートを解雇されて再就職したら、再就職手当の支給はされるのかをご紹介します。
再就職手当の受給要件に該当すれば支給されます
下記の「再就職手当の受給要件」に該当する再就職ができれば、パートの仕事を解雇された場合でも、再就職手当が支給されます。
そして再就職手当として支給される額は、次のようになります。
支給日数を所定給付日数の、
① 2/3以上残して再就職した場合:基本手当日額×所定給付日数の残日数×70%
② 1/3以上残して再就職した場合:基本手当日額×所定給付日数の残日数×60%
早く再就職するほど、支給される金額が多くなります。ぜひ早期の再就職を目指しましょう!
◆転職先を探すなら、こちらの記事がおすすめです。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
・記事「派遣社員になりたいとき」
新型コロナの非正規雇用労働者への影響は?
2020年11月に、NHKと労働政策研究・研修機構(JILPT)が行った調査によると、新型コロナウイルスの影響は、とくに非正規女性の雇用に大きな影響を与えています。
下表のとおり、非正規女性の3%が「解雇・雇止め」となっており、その割合は非正規男性の1.8倍の多さです。
また、厚生労働省が発表した資料によると、新型コロナウイルスの影響で「解雇・雇い止め」の可能性がある、または実施した事業所と労働者は、次のとおりです(2020年5月~2021年5月7日分)。
新型コロナウイルスによる雇用への影響
・雇用調整の可能性がある事業所:128,361 所
・解雇等見込み労働者数:103,000 人
(うち非正規雇用労働者数:47,954 人)
※ 雇用調整の可能性がある事業所=「解雇・雇い止め」を行う可能性がある、または実施した事業所
※ 解雇等見込み労働者数=「解雇・雇い止め」の可能性がある、または「解雇・雇い止め」された労働者
見込みを含めると10万人以上が「解雇・雇い止め」されており、新型コロナの影響の大きさがよくわかります。
また同データで、「雇用調整の可能性がある事業所」の上位業種は次の通り。
全事業所の18%、つまり約2割が製造業となりました。
業種 | 雇用調整の可能性がある事業所数 | |
---|---|---|
1 | 製造業 | 23,622 |
2 | 飲食業 | 15,115 |
3 | 小売業 | 12,612 |
4 | サービス業 | 11,611 |
5 | 建設業 | 8,871 |
6 | 卸売業 | 7,831 |
7 | 医療、福祉 | 6,710 |
8 | 専門サービス業 | 5,630 |
9 | 宿泊業 | 5,348 |
10 | 理容業 | 5,185 |
合計 | 128,361 |
同じように「解雇等見込み労働者数」の上位業種は下表のとおり。
こちらも全労働者の22%、つまり約2割強が製造業となりました。
業種 | 解雇等見込み労働者数 | |
---|---|---|
1 | 製造業 | 22,984 |
2 | 小売業 | 13,551 |
3 | 飲食業 | 12,619 |
4 | 宿泊業 | 11,787 |
5 | 卸売業 | 6,163 |
6 | 労働者派遣業 | 5,699 |
7 | サービス業 | 5,671 |
8 | 道路旅客運送業 | 3,814 |
9 | 娯楽業 | 3,435 |
10 | 運輸業 | 3,394 |
合計 | 103,000 |
まとめ:パートで解雇されれば「会社都合」に!ルールをよく確認して
この記事では、パートの仕事を解雇されたら離職理由は「会社都合」になるのか、自己都合なのか、解雇予告手当や有給休暇、失業保険はどうなる?といった疑問にお答えしました。
記事でご紹介したように、パートで解雇されれば、離職理由は「会社都合」です。
そして解雇予告も必要ですし、有給休暇取得もOK。
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◆「パート社員のルール・情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「パート社員とは?残業代、雇止めなどのルールも解説」
◆次の会社を探したいときには、こちらの記事が参考になります。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
・記事「派遣社員になりたいとき」
参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 労働問題研究会・著『働く人のための法律ガイドブック』労働教育センター