「これから派遣社員としてはたらきたい!」というとき、
派遣社員にも有給休暇はあるの?
というギモンが出るかもしれません。
「パートやアルバイトには有給休暇は出ないんでしょ…」という人もおり、なかなか正しいルールは世間に浸透しきっていないようです(パート・アルバイトでも出ます、くわしくはこちら)。
そこでこの記事では、派遣社員にも「有給休暇」はあるのか、その取得条件や付与日数、休暇時の金額、買取などのルール、そして正しい取り方まで解説します。
「派遣社員ではたらくうえで、正しいルールを知っておきたい!」というときは、ぜひご覧ください。
◆「派遣社員についての情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「派遣社員とは?わかりやすく解説」
派遣社員にも有給休暇はある?取れない?
派遣社員にも「有給休暇」はあります。ちゃんと休みは取れます。
後述する条件をみたせば発生しますので、あとは派遣会社のルールにしたがって申請すればOK。
なぜ派遣社員が有給休暇を取れるかといえば、「有給休暇」が労働基準法で決められたルールだからです。
労働基準法39条(年次有給休暇)
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
そして労働基準法の対象は、すべての労働者。
この「労働者」には、雇用形態に関係なく、会社に雇われてはたらくすべての社員がふくまれます。
ですから、正社員だけでなく、パートやアルバイト、契約社員、派遣社員にも「有給休暇」が付与され、同ルールで運用されます。
(ちなみにフリーランスは、労働基準法の「労働者」にふくまれません)
派遣社員の有給休暇のルールを確認
次に、派遣社員の有給休暇のルールを確認していきましょう。
[派遣社員の有給休暇ルール①]どうすれば有給休暇がもらえる?:取得条件
派遣社員が「有給休暇」をもらえる「取得条件」は次の2点で、この両方をみたすことが必要です。
上記1は「派遣先」ではなく「派遣会社」であることに注目です。
ですので派遣先が変わったとしても、勤務が継続していれば、期間にカウントされます。
ただし次の派遣先が決まらないと、継続勤務期間が途切れるため、有給休暇の付与の権利がなくなってしまいます。
[派遣社員の有給休暇ルール②]どのくらい休める?:付与日数
前項の条件をみたした派遣社員は、次の日数の「有給休暇」を付与されます。
[派遣社員の有給休暇ルール③]休暇日に支払われる金額は?:休暇時の給与計算方法
派遣社員の有給休暇でも、もちろん給与は支払われます。
そして休暇日に支払われる金額は、次の3つの方法で求めることができ、どの方法を使うかは会社の自由です。
[派遣社員の有給休暇ルール④]申請すれば必ず休める?:時季変更権
派遣社員の有給休暇を申請した場合、原則としてその日に休むことができますが、例外的なルールとして「時季変更権」があります。
これは、派遣会社(派遣先ではありません!)が、派遣社員の指定した日に休暇を与えると「事業の正常な運営を妨げる」という場合に、有給休暇の時季を変更できる権利です。
本来は「派遣先の事情は、直ちには派遣元が時季変更権を行使する理由にはならない(厚生労働省の資料より)」とされていますが、現場では100%派遣先の事情が優先されます。
できるだけ前もって、派遣先でも問題ないような時期に取得することが、一番のオススメです。
[派遣社員の有給休暇ルール⑤]消化できなかった休暇はどうなる?:繰りこしと消滅時効
「与えられたけれど、年度内に消化できなかった有給休暇」は、次の年への繰りこしができます。
ただしその権利の有効期限は発生から2年で、それをすぎると時効となり消滅します
上図をつかって説明すると、入社から半年後の「2015年7月10日に発生した年休」は、次の年(2016年7月10日以降)への繰りこしが可能。
ただし2017年7月10日が有効期限となり、それをすぎると時効で消滅してしまいます。
モッタイナイので、有給休暇はできるだけ2年以内に、使い切りましょう
[派遣社員の有給休暇ルール⑥]消化できない分は買い取ってもらえる?:有給休暇の買取
「消化できない有給休暇」を買い取るかどうかは、会社の自由です。
ここは法律で決まっていないため、「会社が買い上げる」のも義務ではありません。
ただし、最初から「買い上げる」ことに合意して、有給休暇を与えないことは違法です。
[派遣社員の有給休暇ルール⑦]派遣も5日は必ず休まないといけないの?:取得の義務化
2019年4月からは、10日以上の有給休暇をもつすべての社員に、毎年5日間の有給休暇をとらせることが「会社の義務」となりました。
これに違反すれば(社員に年休を与えなければ)、会社は罰せられます(労働基準法120条1号)。
もちろん派遣社員も対象となりますから、「10日以上の有給休暇」があるなら、5日間は休まなければいけません。
ただし「10日以上」というのは、「その年に、新たに与えられる日数」ですので、「前年から繰りこした日数」は入れずに日数をカウントしてください。
そして、有給休暇が取れないようなら、この「義務化」のことを派遣会社に伝えてください。
それでも休ませてくれないなら、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介している”労働局”にご相談ください。
派遣社員の有給休暇の正しい取り方
記事の最後に「派遣社員の有給休暇の正しい取り方」として、本来のルール(タテマエ)と現場でのルール(ホンネ)をご紹介します。
休暇申請は派遣元へ(できれば派遣先に前もって連絡を)
有給休暇の本来のルールからいえば、派遣元(派遣会社)にのみ申請すればOKです(宮城県労働局より)。
ただし派遣会社によっては「前もって派遣先に連絡し、了承が取れているなら取得可」というところもあるよう。
そういった場合には、その派遣会社のルールにしたがいましょう。
休暇取得の理由は伝える必要なし(ただし職場によります)
有給休暇の本来のルールからいえば、取得する理由は会社側に伝える必要はありません。
ただ「私用のため」でOKです。
ただし、これは職場によります。
派遣先で理由を聞いてくるようであれば、あまりくわしくない範囲で伝えると、後々もめることもありません。
なお、プライベートを探るように、さらにくわしく聞いてくるのはさすがにNGです。
派遣会社の担当営業に相談しましょう。
休暇申請は前日までに行う(ただし派遣会社のルールも確認)
有給休暇の本来のルールからいえば、休暇申請は前日までに行えばOKです。
子どもの病気などで、「当日になって急に休まないといけない」というときに、事後申請を許可してくれる派遣会社も。
ただしこれも、派遣会社によります。
「○日前まで申請すること」といったルールがあるなら、それにしたがいましょう。
もしその申請日が「2ヶ月以上前でなければ認めない」など極端な派遣会社は、法令意識が低いところですので、早めに別の派遣会社に移ることを考えてください。
ブラック企業もありますが、いい会社もちゃんとあります。
有給休暇を取らせたくない会社はまだたくさんあります
とても残念なことに、未だに「有給休暇を取らせたくない会社」はたくさんあります。
これは正社員であってもです。
ですから、派遣会社がしっかりしていても、派遣先がヒドい会社だと有給休暇もとりづらくなってしまいます。
有給休暇や残業、休憩時間、出勤時間など、派遣先で正しいルールが運用されないようなら、派遣会社の担当営業に改善をお願いしましょう。
それでも改善されないなら、派遣先を変えてもらうか、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介している”労働局”にご相談ください。
まとめ:派遣社員でも有給休暇はあります!正しいルールを知って、おかしければ相談を
この記事では、派遣社員にも「有給休暇」はあるのか、その取得条件や付与日数、休暇時の金額、買取などのルール、そして正しい取り方まで解説しました。
派遣社員でも有給休暇はあります!
ぜひ記事を参考に、正しいルールを知って、おかしければ下記で紹介している”労働局”などに相談してみてください。
◆「派遣社員についての情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「派遣社員とは?わかりやすく解説」
〈こちら↓の記事もおすすめです〉
・「会社のことをどこかに相談したい」ときは…会社・仕事の悩みの相談先を紹介
・「次の会社をさがしたい」ときは…失敗しない転職先の探し方・見つけ方!
・「派遣社員ではたらきたい」ときは…「派遣社員になりたい!」ときはどうする?
参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 飯野たから・著『「非正規」六法』自由国民社