せっかく就職、転職したのに、
会社から「試用期間を延長する」って言われて…。違法じゃないの?
このように困っている方はいませんか?
ついに「本採用だ!」というときにこんな話があれば、ゆううつになりますよね。
そこでこの記事では、働く人向けに「試用期間が延長される」のは違法じゃないのか、どんな意味があるのか、拒否できるのか、その対応方法まで解説します。
「今まさに試用期間ではたらいていて、心配…」というときは、ぜひご覧ください。
◆「試用期間のルール・情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「試用期間とは?期間の長さや本採用拒否などのルールも解説」
◆次の会社を探したいときには、こちらの記事が参考になります。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
・記事「派遣社員になりたいとき」
試用期間が延長された…違法じゃないの?どんな意味?拒否できる?
まずは、試用期間が延長されたことについて、違法じゃないのか、どんな意味なのか、拒否できるのかを確認しましょう。
原則延長は許されないが、要件を満たせば認められることも
試用期間中は労働者の地位が「不安定」といえるため、原則として延長は許されません。
ただし、以下の3点をすべて守っていれば「延長が認められる場合もある」とされます。
- 「〇〇の場合には試用期間を延長することがある」と、就業規則などで規定している
- 試用期間を延長することに合理的な理由や特段の事情がある
- 延長する前に、本人に同意をとっている
上記2の「合理的な理由」には、次のようなものがあります。
- 試用期間中に本人が長期欠勤したため、適正を判断するだけの期間がなかったため
- 試用期間で「不適格」と判断された社員を本採用拒否とはせず、配置転換によってさらに職務適格性を見出すため
試用期間の長さ:法的な決まりはナシ、多いのは「3ヶ月」と「6ヶ月」
「試用期間の長さ」もやはり、労働基準法などの法律では決まっていません。
ただし判例によれば、あまり長い期間では公序良俗違反として「無効」となります。
実際のデータでは「3ヶ月」という会社がもっとも多く、次が「6ヶ月」となっています。
1ヶ月程度 | 2ヶ月程度 | 3ヶ月程度 | 4ヶ月程度 | 5ヶ月程度 | 6ヶ月程度 | 7ヶ月~1年 程度 | 1年超 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
新卒採用の場合 | 4.7% | 8.4% | 66.1% | 0.9% | 0.2% | 18.3% | 1.4% | 0.1% |
中途採用の場合 | 6.2% | 8.3% | 65.7% | 0.7% | 0.1% | 16.5% | 2.1% | 0.3% |
(労働政策研究・研修機構「従業員の採用と退職に関する実態調査」より)
試用期間が延長されたり、1年以上など期間が長いときには、後述する”労働局”などに相談してみることをおすすめします。
会社が試用期間を延長する意味
会社が試用期間を延長する意味としては、多いのは「本採用の判断に、もう少し時間をかけたい」のようです。
イメージとして「試用期間の延長 = 解雇したがっている」と考える人も多いようですが、解雇したいなら延長せずに本採用拒否するはず。
(とはいえ、本採用拒否は「解雇」となるので、こちらの記事でご紹介するとおりカンタンには行なえません)
ですから、試用期間が延長されたからといってネガティブに考えるのではなく、「延長された期間で本採用を判断してもらえるようガンバろう!」と考えてみましょう。
会社が試用期間を延長してきたら拒否は可能
会社が試用期間を延長してきたとき、会社側に次の2点がない場合には、拒否することも可能といえます。
- 「〇〇の場合には試用期間を延長することがある」との就業規則などでの規定
- 試用期間延長の合理的な理由や特段の事情
この2点がなく、本人が合意しなければ期間延長は認められません。
その場合は、試用期間満了と同時に本採用となります。
ただ、就業規則などでの規定や合理的な理由もなく、試用期間の延長をもちかける会社は、「コンプライアンス意識」がかなり低いです。
ブラック企業の可能性もあるため、正社員の方に「有給休暇は取れているか、残業代が出ているか」などを確認したほうがいいかもしれません。
あてはまったなら、「試用期間でブラック企業を見分けられてよかった!」とポジティブにとらえ、こちらの記事で次の会社を探すことも考えてみてください。
試用期間を延長されたときの対応方法
次に、試用期間を延長されたときの対応方法をご紹介します。
[対応方法①]まずは会社に試用期間を延長した理由を確認
まずは会社に、試用期間を延長した理由を確認しましょう。
前述のとおり、試用期間の延長には次のような「合理的な理由や特段の事情」が必要です。
- 試用期間中に本人が長期欠勤したため、適正を判断するだけの期間がなかったため
- 試用期間で「不適格」と判断された社員を本採用拒否とはせず、配置転換によってさらに職務適格性を見出すため
延長の理由が上記のように「本人のためを思ってのもの」であればしたがうべき。
それが、たとえば6ヶ月も試用期間があったのに「もう少し確認に時間がほしいから」では納得できませんよね。
このように「会社側の一方的な都合によるもの」だったときは、次項を参照に公的機関に相談することをおすすめします。
[対応方法②]延長する理由に納得できなければ労働局へ
試用期間を延長する理由に納得できなければ、労働局へ相談しましょう。
ただ、「公的機関に相談しづらい…」というときには、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する「一般社団法人ボイス」へ相談してみてください。
試用期間の法律上の基本ルールを確認
記事の最後に、試用期間の基本ルールを確認していきましょう。
[試用期間の基本ルール①]試用期間とは?
「試用期間」とは、法律的な定義はありませんが、一般的に次のような期間のことをいいます。
試用期間とは、社員をはじめから正式採用とせず、3ヶ月などの期間を限定して、その期間中に「社員としての適正」を確認する「試験的な採用期間」のこと
なお、「試用期間」はどの法律でもルールが決められていないため、これまでの裁判例(判例)によってルール化されています。
[試用期間の基本ルール②]正社員と非正規社員ではルールは違う?
正社員と非正規社員(契約社員・パート・アルバイト・派遣社員など)では、「試用期間のルール」は変わりません。
これは試用期間中であっても、会社と社員の関係は「労働契約(解約権留保つきの労働契約)」であり、「本採用後の労働契約と同一」とされているため。
この「労働契約」の最低基準のルールを決めた法律が「労働基準法」で、その対象は「労働者」です。
「労働者」には、正社員・非正規社員すべてがふくまれるため、「試用期間のルールも同じ」となります。
[試用期間の基本ルール③]試用期間中の身分
試用期間中の社員の身分は、「解約権留保つきの労働契約」となります。
「解約権留保つきの労働契約」」とは、
「試用期間中に会社から”不適格”と判断されると、本採用にはならない」という、条件つきの労働契約
試用期間ののち「本採用」となった場合にようやく、何の条件もつかない「労働契約」に切り替わります。
つまり、試用期間が終了するまでは、「条件つきの社員」ということですね
そのため会社が「試用期間中の社員用」として、給料や福利厚生などのルールを、本採用された社員とは別につくることも許されています。
試用期間中のみ、本採用後とくらべ「給料の額が低い」、「月給制ではなく時給制」ということも問題なしです。
しかし、「試用期間中の社員」も前項でご紹介したように「労働者」ですので労働基準法が適用されます。
最低賃金を下回ることは許されませんし、残業や休日出勤をしたら割増賃金を支払うことが必要です。
また試用期間中でも、雇用保険・社会保険には加入しなければなりません。
もし会社が、
試用期間中は、会社の社会保険に入れないから、国民健康保険でお願いね…
というのは違法です。記事「仕事の悩みが相談できない方へ」で紹介している機関にご相談ください。
[試用期間の基本ルール④]導入する会社は8割以上
少し古いデータですが、2014年に労働政策研究・研修機構が調査した結果によれば、8割以上の会社で「試用期間」があることがわかりました。
採用した社員への試用期間がある会社:86.9%
採用した社員への試用期間がない会社:12.1%
(労働政策研究・研修機構「従業員の採用と退職に関する実態調査」より)
まとめ:試用期間が延長されたらまずは「理由の確認」を
この記事では、働く人向けに「試用期間が延長される」のは違法じゃないのか、どんな意味があるのか、拒否できるのか、その対応方法まで解説しました。
試用期間が延長されたらまずは「理由の確認」を。
そして理由に納得できないようなら、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する「労働局」や「一般社団法人ボイス」へ相談してみてください。
◆「試用期間のルール・情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「試用期間とは?期間の長さや本採用拒否などのルールも解説」
◆次の会社を探したいときには、こちらの記事が参考になります。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
・記事「派遣社員になりたいとき」
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・「会社のことをどこかに相談したい」ときは…会社・仕事の悩みの相談先を紹介
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参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 林智之・著『職場の法律トラブルと法的解決法158』三修社