テレビで営業自粛などのニュースをみていて、
ニュースで「休業手当」のハナシをしてるけど、僕が前につかった「休業補償」とは違うものなの?
というギモンをお持ちの方はいませんか?
この2つ、とても似た名称ですが、じつはまったく違う制度なんです。
そこでこの記事では、休業補償と休業手当の違いから、それぞれの税金(税務)上の違いや申請方法・計算方法などのルールまでご紹介していきます。
「会社を休業している」という方は、ぜひご覧ください。
◆「労働基準法とその内容」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「労働基準法とは?労働時間などのルールもわかりやすく解説」
休業補償と休業手当の違いとは?
まずは、休業補償と休業手当の違いをわかりやすくご紹介します。
休業補償と休業手当の違いとは?
休業補償と休業手当の違いとは、次のようになります。
※海上ではたらく「船員」を対象とした船員保険のなかに「休業手当金」という独自制度がありますが、一般的ではないためここでは除きます
どちらも「休業によって会社が社員に支払うお金」ですが、「休業の原因」によって違いがあることがわかります。
休業補償と休業手当の税金(税務)上の違い
休業補償と休業手当の税金(税務)上の違いは、次のようになります。
- 休業補償(労働基準法76条):非課税所得となる
- 休業手当(労働基準法26条):給与所得となり、源泉徴収される
次項からはそれぞれのルールについて、さらにくわしく解説します。
休業補償とは?休業(補償)給付とは?そのルールも解説
次に、休業補償・休業(補償)給付とはどのような制度なのか、そのルールも解説します。
休業補償とは?
休業補償とは、労災(業務災害)で休業し給料が出ない場合に、会社が補償金を支給する制度です。
労働基準法で次のように決められています。
労働基準法76条(休業補償)
労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない。
会社側は、労災(業務災害)で休業した社員に、1日につき平均賃金の60%を支給しなくてはなりません。
ですが、働いていない(休業している)社員にお金を払い続けるのは、会社にとって大きな負担です。
そこで次項でご紹介する「休業(補償)給付」が設けられています。
[休業(補償)給付のルール①]休業(補償)給付とは?
休業(補償)給付とは、仕事や通勤が原因でケガ・病気になり休職し、給料をもらえない場合に、労災保険から給付金が支給される制度のことです。
次の3つの要件をすべて満たすときに支給されます。
この休業(補償)給付が社員に支給されれば、会社側は前項の休業補償を支払い続ける必要はありません。
ちなみに、名称に「休業(補償)給付」とカッコ()がつくのは、業務災害と通勤災害の場合で、給付制度の名称が違うためです。
- 業務災害の場合:休業補償給付
- 通勤災害の場合:休業給付
◆「労災保険の業務災害・通勤災害」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「労災保険の業務災害とは?」
・記事「労災保険の通勤災害とは?」
労災保険とは?
労災保険とは、仕事や通勤が原因でケガをしたり病気になったときに、治療費など必要な保険給付を行う制度です。
そのルールについては、労災保険法で決められています。
労災保険では「休業(補償)給付」のほかに、次のような補償を受けることが可能です。
- 療養(補償)給付:労災病院などでの治療についての現物や費用の給付
- 障害(補償)給付:障害等級にあたる身体障害がのこった場合に、支給される年金
- 遺族(補償)給付:労災で社員が死亡した場合に、家族に支給される年金
◆「労災保険」をくわしく知りたい方には、こちらの記事がオススメです。
・記事「労災保険とは?」
[休業(補償)給付のルール②]いくらもらえる?計算方法
休業(補償)給付は、休業1日につき平均賃金の80%が支給されます。
その計算方法は次のとおりです。
[休業(補償)給付のルール③]もらうには(申請方法)?
休業(補償)給付をもらうには、「休業補償給付支給請求書」に医師や会社の証明をもらい、本人が直接、労働基準監督署に提出します。
申請から約1ヶ月後、指定した振込口座に給付金が支払われます。
ほかにも、療養給付や障害給付など、労災保険で受けられる補償は、原則として会社ではなく社員本人が申請を行ないます。
[休業(補償)給付のルール④]いつからいつまでもらえる?
休業(補償)給付は、休業4日目から支給されます。
そして休業3日目までの補償は、休業の原因が「業務災害か、通勤災害か」によって変わります。
- 業務災害の場合:会社が休業補償として、1日につき平均賃金の60%を支払う義務がある
- 通勤災害の場合:会社が休業補償を行う義務はない
また、休業(補償)給付が「いつまでもらえるか?」については、前述した「次の3つの要件を満たす限り」です。
ただし、治療をはじめてから1年6ヶ月たってもケガや病気が治らず、傷病等級表の傷病等級にあたる障害がある場合は、「傷病補償年金」が支給されます。
[休業(補償)給付のルール⑤]パートやアルバイトでももらえる?
パートやアルバイトでも、休業(補償)給付はもらえます。
これは、休業補償のルールをきめている労働基準法は「すべての労働者」を対象としているため。
「労働者」には、正社員だけでなくパートやアルバイトもふくまれますので、給付内容も正社員と同じです。
もちろん契約社員や派遣社員も、休業補償の対象となります。
休業手当とは?そのルールも解説
休業手当とは、「会社の責任で休業して、社員を休ませたとき、会社が社員に対して支払わなければいけない手当」のことです。
会社は「平均賃金の6割以上」を、「休業手当」として支払う義務があり、このルールは労働基準法できまっています。
労働基準法26条(休業手当)
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。
ちなみに「休業」とは、会社と社員が交わした労働契約の「労働義務のある時間」について、はたらけなくなること。
事務所や工場の「一斉休業」でも、「社員ひとりだけの休業」であっても、どちらの場合も休業手当は発生します。
さらに「丸一日の休業」だけでなく、「一日のうち一部だけの休業」も休業手当の対象です。
なお、会社が「休業手当」を支払わないときは、会社に対して30万円以下の罰金が科されます(労働基準法120条)。
[休業手当のルール①]「休業手当」を請求できるケース・できないケース
ただし、「会社が休業した」からといって、どんなケースでも「休業手当」を請求できるわけではありません。
ここでは、「休業手当」を請求できるケース・できないケースのそれぞれを見ていきましょう。
ケースその①:「休業手当」を請求できるケース
まず、「休業手当」を請求できるのは、「会社が休業しないための努力をしなかった」ケースです。
たとえば、次のようなケースがあてはまります。
ケースその②:「休業手当」を請求できないケース
その一方で、「休業手当」を請求できないのは、「会社の努力では休業を避けられなかった」ケースです。
たとえば、次のようなケースがあてはまります。
[休業手当のルール②]もらうには(申請方法)?
休業手当をもらうには、社員側がすべきことはありません。
なにか申請をする必要もないです。
「会社側に責任がある休業」が発生したら、会社の責任によって、会社が手当の支払いを行ないます。
もし会社が支払ってくれないなら、こちらの記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」を参考に、労働局に相談しましょう。
[休業手当のルール③]平均賃金の計算方法
休業手当の支払額のもととなる「平均賃金」の計算方法は、次のとおりです。
「賃金の総額」とは、通勤手当や残業代などの諸手当をふくみ、税金や社会保険料などを控除をする前の額を指します。
[休業手当のルール④]パートやアルバイトでももらえる?
パートやアルバイトでも、休業手当はもらえます。
これは、休業手当が労働基準法で決められたルールであり、その労働基準法が対象とする「労働者」には、正社員だけでなくパートやアルバイトもふくまれるため。
もちろん契約社員や派遣社員も休業手当の対象です。
ただし、「シフト制」の場合は注意が必要。
「シフト制」は、一定期間ごとにシフト表が組まれ、はたらく日が決まります。
そこで休業がつづいた場合、シフトで組まれていた勤務日までは休業手当を支払うけれど、新しくシフトを組まないから、それ以降は「休業でない」とする会社が増えているのです。
野村総研が2020年10月に行った調査では、休業中のパート・アルバイト女性の7割が「本来支給されるはずの休業手当を受け取れていない」ことがわかっています。
まとめ:休業補償と休業手当の違いとルールを知って、しっかり利用しましょう
この記事では、休業補償と休業手当の違いから、それぞれの税金(税務)上の違いや申請方法・計算方法などのルールまでご紹介してきました。
ぜひ記事を参考に、休業補償と休業手当の違いとルールを知って、休業になったときはしっかり利用しましょう。
◆「労働基準法とその内容」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「労働基準法とは?労働時間などのルールもわかりやすく解説」
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参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 岩出誠・著『働く人を守る!職場六法』講談社