退職を考えている方で、
「退職願」と「退職届」と「辞表」は、何が違うの?
上司に退職の申し出をするとき、「退職願」と「退職届」のどっちを出すの?
このような疑問をお持ちの方はいませんか?
使う機会が少ないため、「退職願・退職届・辞表」がどう違いいつ出すのか、くわしい人は少ないですよね。
そこでこの記事では、「退職願・退職届・辞表」の違いや役割、出すタイミング(提出時期)、例文、書き方のルールなどをご紹介します。
「上司に退職の相談をしたいけれど、どの書面を出せばいいの?」というときは、ぜひご覧ください。
◆「退職のルール全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「退職ルールまとめ」
◆次の会社を探したいときには、こちらの記事を参考にどうぞ。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
・記事「派遣社員になりたいとき」
退職願・退職届・辞表の違いは?
まずは、退職願・退職届・辞表の違いをご紹介します。
退職願・退職届・辞表の違い
一般的なルールとして「退職願・退職届・辞表」の違いは、次のとおりです。
- 退職願:社員が「退職したいので、合意して頂けますか?」と会社におうかがいをたてる書面
(役割:「合意退職」を行うための書面) - 退職届:社員が「確実な退職の意思」を会社に伝える書面
(役割①「合意退職」の最終確認を行うための書面、役割②「辞職」を行うための書面) - 辞表:経営者や公務員が辞職するために使用する書面
(役割:「辞職」を行うための書面)
一般的な会社員の方であれば、退職願と退職届の違いだけを、よく理解しましょう。
退職願・退職届・辞表のそれぞれの役割
次に、退職願・退職届・辞表のそれぞれの役割を確認しましょう。
まず知っておきたい「退職」の種類:合意退職と辞職
「退職願・退職届・辞表」の役割を理解するために、まず知っておきたいのが「社員から申し込む退職」の種類です。
「社員から申し込む退職」には、大きくわけて次の2つがあります。
(「雇用契約の終了」とは、つまり「会社で働くことを辞める」こと)
「社員から申し込む退職」の種類
1.合意退職:会社と社員の両方が合意して、雇用契約を終了させる退職方法
2.辞職:会社側の意思に関係なく、社員の一方的な意思で雇用契約を終了させる退職方法
「会社の合意アリ・ナシ」の2つの退職があることを意識して、書面の違いを確認しましょう。
退職願の役割:合意退職をもちかける書面
「退職願」とは、社員が「退職したいので、合意して頂けますか?」と会社におうかがいをたてる書面です。
つまり、会社に対して「合意退職」をもちかける書面といえます。
ですから、会社がその合意に応じなければ、退職することはできません。
その場合には、次の2つの対応方法があります。
- 会社が合意するまで交渉をつづける
- 「退職届」で辞職する
ちなみに退職願は市販の封筒などで大丈夫ですが、こちらのセットなら「退職願用便せん」や「郵送時添え状」まですべて揃っているので、おすすめです。
退職届の2つの役割:合意退職の最終確認と辞職の申し出
社員が「確実な退職の気持ち」を会社に伝える「退職届」には、次の2つの役割があります。
【「退職届」の役割1】「合意退職」の最終確認を行う
まず1つめの「退職届」の役割は、「合意退職」の最終確認を行うことです。
後述するとおり、一般的なルールとして、上司への退職の申し出に「退職願」を提出し、退職が承諾された後に「退職届」を提出します。
このときの「退職届」は、「退職の意思が変わらないことの最終確認」と、「退職日の確認」の意味で使われます。
【「退職届」の役割2】「辞職」を行う
2つめの役割が、「辞職」を行うことです。
つまり、会社に対して「一方的な辞意」をもちかける書面といえます。
会社がどうしても辞めさせてくれないときは、「退職届」を提出すれば、法的には2週間後に退職が可能となります。
上司への退職の申し出の際に「退職願」とまちがって「退職届」を出してしまうと、「話し合うつもりはない」と思われ、モメてしまうことも。
くれぐれも注意しましょう。
辞表の役割
「辞表」とは、経営者や公務員が辞職するために使用する書面です。
交渉するためではなく、「一方的な辞意」をもちかける書面ですので、経営者や公務員のための「退職届」ともいえます。
退職願・退職届を出すタイミング(提出時期)は?どっちを上司に出す?
次に、退職願・退職届を出すタイミング(提出時期)はいつなのか、どっちを上司に出すのかをご紹介します。
まずは会社に「退職時の所定の書式」があるか確認
退職願・退職届を出すタイミングを考える前に、退職を考えたら、まずは会社の就業規則などで「退職時の所定の書式」があるか確認しましょう。
会社によっては、「退職願」のフォーマットが決まっていたり、独自の「退職についての書面」を使用するところもあります。
まず就業規則などを確認し、「退職時の所定の書式」が決められていないなら、次からの項目を参照に、「退職願・退職届・辞表」を作成・提出してください。
◆「会社とモメない退職の手順」は、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「会社とモメない、自己都合での退職手順」
退職願・退職届を上司に出すタイミング(提出時期)
会社に「退職時の書類提出ルール」がない場合は、それぞれ次の時期に「退職願・退職届」を上司に提出しましょう。
【提出時期①】「合意退職」を目指す場合
- 上司に退職の申し出をする時に、希望する退職日を記載した「退職願」を作成して提出する
- 会社から退職が認められ、退職日が決まったら、正式な退職日を記載した「退職届」を作成して上司に提出する
【提出時期②】「辞職」する場合
- 提出日の翌日から2週間以上あとの退職日を記載した「退職届」を上司に提出する
- 退職する
退職願・退職届の例文
ここでは、退職願・退職届の例文をご紹介します。
なお、退職願・退職届は会社からの指示がなければ、一般的な「手書き・タテ書き」で作成し、「手渡し」で提出しましょう。
退職願・退職届の例文①タテ書き
退職願・退職届の例文②ヨコ書き
ヨコ書きの場合は「日付」や「宛て名」などの位置が、タテ書きと違いますので注意してください。
退職届の例文③会社都合の場合
本来は、会社都合退職の場合は、退職願・退職届は必要ありません。
ですが会社から「提出するように」との指示があったときは、下図のように「会社と合意した具体的な理由」を記載してください。
ここで「一身上の都合」と書くと、「自己都合退職」になってしまうこともあるので、注意が必要です。
会社都合の退職なら「退職届」は不要!提出するよう言われたら「理由」に注意
「退職願・退職届・辞表」は、社員が会社に対して「退職の意思」を示す書面です。
そのため「整理解雇」など会社都合退職であれば、本来は「退職願・退職届・辞表」は不要となります。
ですが会社から「提出するように」と言われた場合は、「退職理由」に注意してください。
ここで「一身上の都合」と書くと、「自己都合退職」になってしまうことも。
「退職理由」には「事業所閉鎖のため」など、会社と合意した具体的な理由を記載してください。
退職願・退職届の書き方のルール
「退職願・退職届」の書き方の、一般的なルールは次のとおりです。
退職願・退職届の書き方のルール
1.黒のボールペンか万年筆で、自筆で書く
2.便箋は罫線入りでもOK
3.書き出しは今日の一番下から「私儀、」ではじめる(「わたくしぎ」と読みます)
4.具体的な退職理由は書かず「一身上の都合」とする
5.「退職願」に記載する退職日は「退職を希望する日」
6.「退職届」に記載する退職日は「上司と相談して確定した退職日」
7.作成したら、必ずコピーをとっておく
退職願・退職届はパソコンで作成してもいい?
「退職願・退職届」は、「手書きでなければ効力がない」といったルールはありません。
ただし「手書きのほうが好ましい」と考える方もいるため、パソコンで作成した書面では「誠意が感じられない」と受け取られる可能性も。
特に「退職願」はお願いする書面です。
できれば手書きにして、気持ちを誠実に、会社に伝えることをおすすめします。
一度提出した退職願・退職届は撤回できる?
勢いで「退職願(退職届)」を出しちゃったけど、考え直して
撤回はできるの?
このように、上司や会社に一度提出した退職願・退職届は、撤回できるのでしょうか?
結論としては、次のようになります。
「退職願」は撤回できるが「退職届」はできない
「退職願」は、「合意退職」するための書面ですから、提出しただけでは「退職」とはなりません。
そのため会社が合意する前なら、撤回することができます。
それに対して「退職届」は、「辞職(社員の一方的な意思で雇用契約を終了)」するための書面。
会社が認める・認めないにかかわらず、受け取った時点で「退職(辞職)」は決定し、撤回はできません。
会社が退職願・退職届を「認めない」ときはどうする?
上司に「退職願・退職届」を提出したのに、上司に
退職なんか認めない!
と拒否されたときは、どうすればいいんでしょう?
「退職願・退職届」それぞれで性質が変わりますので、ご紹介します。
会社が「退職願」を認めない場合:交渉をつづけるか、辞職を
「退職願」は、会社に「退職のおうかがい」をたてる書面で、「合意退職」を申し込むもの。
つまり、会社が「退職願」を認めなければ(合意しなければ)、辞めることはできません。
そのため、会社が退職を認めてくれるまで交渉を続けるか、合意退職をあきらめて「辞職」することを考えましょう。
会社が「退職届」を認めない場合:会社は「拒否」できない、受け取らないなら内容証明郵便を
「退職届」は、会社に「辞職」を通知する書面ですので、会社が「認める・認めない」というステップは発生しません。
つまり会社は「拒否」できないということ。
また「退職届」は会社に届いていれば問題なく、会社に承認してもらう必要もありません。
どうしても上司が「受け取りを拒否」する場合は、次のような証拠がのこる形で、退職届を会社に届ける方法をとりましょう。
- 内容証明郵便
- メール
- FAX
まとめ:退職願・退職届・辞表の違いを理解して、適切な退職手続きを
この記事では、「退職願・退職届・辞表」の違いや役割、提出時期、例文、書き方のルールなどをご紹介しました。
円満に退職するためには、適した書面を提出することが大切です。
ぜひ記事を参考に、退職願・退職届・辞表の違いを理解して、適切な退職手続きを行いましょう。
◆「退職のルール全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
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参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 弁護士による退職代行サービス研究会・著『退職のプロが教えます!会社のキレイなやめ方』自由国民社
- 書籍 荘司芳樹・著『図解わかる労働基準法』新星出版社
- 書籍 花本明宏ほか・著『会社を辞める時ときの退職手続きのすべて』ぱる出版