安定した雇用をのぞむ方には、ピッタリの「無期転換ルール」。
ですがいくつか条件もあるため、
せっかく契約社員の契約期間が5年を超えたのに、会社から「クリーング期間があるから認められない」って言われた…。「クーリング期間」って何なの?
このような疑問をお持ちの方も、いるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、働く人に向け、契約社員の無期転換でのクーリング期間とはどのようなものか、通算契約期間5年がリセットされないケース・されるケース、無期転換ルールにおける注意点などを解説します。
なお、「クーリングオフ期間」ではなく「クーリング期間」ですので、気をつけましょう
「無期転換制度を利用したい!」と考えている方は、ぜひご覧ください。
◆「契約社員・契約社員のルール・情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「契約社員とは?無期転換ルール、雇止めも解説」
・記事「派遣社員とは?わかりやすく解説」
◆次の会社を探したいときには、こちらの記事が参考になります。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
・記事「派遣社員になりたいとき」
契約社員の無期転換でのクーリング期間とは?
まずは、契約社員のクーリング期間とはどのような制度なのか、ご紹介します。
クーリング期間とは、一定期間あることで通算契約期間5年がリセットされる期間
契約社員の無期転換でのクーリング期間とは、一定期間あることで通算契約期間5年がリセットされる期間のことです。
無期転換ルールでは、「一度退職 → また同じ会社にもどる」というケース、つまり「無契約期間」がある場合でも、退職前の契約期間を「通算対象」と認めています。
ただし「無契約期間」があまり長いと、退職前の期間を「通算対象」にふくめないのが「クーリング」の考え方です。
クーリング期間になる(それ以前が「通算対象」からのぞかれる)条件は、次のとおり。
定義の説明だけではわかりづらいので、次項では具体的な例をみて、「クーリング期間」を確認しましょう
[事例①]無期転換でのクーリング期間とならない(リセットされない)ケース
ひとつめの事例は、無期転換でのクーリング期間とならない(通算期間がリセットされない)ケースです。
A.無契約期間以前の通算契約期間が「1年以上」の場合
②と③のあいだの「無契約期間」よりまえの「通算契約期間(①+②)」が”2年”あるので、確認するのは前項の”条件1”です。
”条件1”は「無契約期間が6ヶ月以上だとクーリング期間に該当」ですが、上図Aをみると”6ヶ月未満”。
④と⑤のあいだにある「無契約期間」も同じく”6ヶ月未満”ですので、どちらも条件に該当せず、クーリング期間とはなりません。
つまり、①~⑤の期間をすべて「通算対象」にふくめてカウントできます。
B.無契約期間以前の通算契約期間が「1年未満」の場合
こちらは、①と②のあいだの「無契約期間」よりまえの「通算契約期間 ①」が3ヶ月ですので、確認するのは前項の”条件2−(b)”です。
”条件2−(b)”は「無契約期間が2ヶ月以上だとクーリング期間に該当」ですが、上図Bをみると”2ヶ月未満”ですので、クーリング期間とはなりません。
また、②と③のあいだにも「無契約期間」がありますが、6ヶ月(①+②)では”条件2−(c)”となり「無契約期間が3ヶ月以上だとクーリング期間に該当」。
上図Bでは「3ヶ月未満」ですので、こちらもクーリング期間とはなりません。
つまりBのケースでは、①も②も「通算対象」にふくまれ、⑳までで通算5年となり、無期転換の申込権が発生します。
[事例②]無期転換でのクーリング期間となる(リセットされる)ケース
2つめの事例は、無期転換でのクーリング期間となる(通算期間がリセットされる)ケースです。
A.無契約期間以前の通算契約期間が「1年以上」の場合
③と④のあいだの「無契約期間」よりまえの「通算契約期間(①~③)」が”3年”あるので、確認するのは前項の”条件1”。
”条件1”は「無契約期間が6ヶ月以上だとクーリング期間に該当」で、上図Aをみると”6ヶ月以上”。
そのため、③と④のあいだの「無契約期間」がクーリング期間となってしまいます。
すると①~③はクーリングされ、「通算対象」からのぞかれてしまいます。
つまり「通算契約期間」は、④からカウントしなおしです。
B.無契約期間以前の通算契約期間が「1年未満」の場合
こちらは、「無契約期間」よりまえの「通算契約期間」(①+②)が6ヶ月ですので、確認するのは前項の”条件2−(c))”です。
”条件2−(b)”は「無契約期間が2ヶ月以上だとクーリング期間に該当」で、上図Bをみると”3ヶ月以上”。
そのため、「無契約期間」がクーリング期間となり、①~②はクーリングされ「通算対象」からのぞかれてしまいます。
つまり「通算契約期間」は、③からカウントしなおしです。
会社が「転換逃れ」のために設定するクーリング期間に注意
労働政策研究・研修機構の調査によれば、「有期契約が通算5年を超えないように運用する」と回答した会社が8.5%あるなど、すべての会社が無期転換を歓迎しているわけではないようです。
そのため、
今回の契約で、いったん終了してくれないかな?
7ヶ月たったら、また契約するから…
このように、あえてクーリング期間をつくり、「転換逃れ(無期転換できないようにする)」を行う会社も考えられます。
ですが「雇止め(契約を更新しないこと)」は、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」は無効です。
無効になると、雇止め前とおなじ労働条件での有期労働契約が、更新されます。
厚生労働省のパンフレットQ23でも、このような雇止めは「合理的な理由を欠く可能性がある」と紹介しています。
会社が、「転換逃れ」のために雇止めをする場合には、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する「労働局」や「一般社団法人ボイス」へ相談してみてください。
有期契約労働者の無期転換ルール(5年ルール)とは?
次に、有期契約労働者の無期転換ルール(5年ルール)とはどのような制度か、確認しましょう。
無期転換ルールとは、有期労働者が5年を超えて更新すると無期に転換できる制度
無期転換ルールとは、契約社員やパート・アルバイトなどの「有期契約労働者」が、5年を超えて契約更新された場合に、労働者が会社に申し込むことで「無期労働契約」に転換される制度です。
労働契約法の改正によって、2013年4月からこの「無期転換ルール」が使えるようになりました。
そして、「会社に無期転換を申し込みできる権利(無期転換申込権)」が発生するには、次の条件をすべて満たすことが必要です。
社員が「無期転換の申し込み」をすれば、会社は「申込みを受けいれた」とみなされ、断ることができません。
申し込んだ時点での「有期労働契約」が終了した翌日から、無期に転換です。
また「5年を超えたら自動的に無期に転換」となるわけではなく、「労働者が申し込む」ことが必要な点もポイントとなります。
◆「無期転換制度のデメリットや、ルールのあらまし」を知りたい方は、こちらも記事もご覧ください。
・記事「無期転換制度とは?」
厚生労働省の動画もわかりやすくなっています。
無期転換ルールの注意点
記事の最後に、無期転換ルールの注意点をご紹介します。
[無期転換の注意点①]正社員になれるわけではない
まず1点めの注意点が、「無期転換したことで、正社員になれるわけではない」ということ。
僕の知り合いも、
契約社員で5年働けば、正社員になれるんでしょ?
このようにいっており、調べてみると誤解している人がいるようでした。
じつは無期転換制度でなれるのは、あくまでも「無期労働契約」の状態。
・有期労働契約(期間が決められたあいだ働くこと)
↓(転換)
・無期労働契約(働く期間が決められていないこと)
このように、「契約期間がなくなっただけ」で、正社員ではないのです。
この「無期転換ルール」ができたことによって、それまで”正社員だけ”だった「無期労働契約」で働く人が、次の3種類にふえました。
[無期転換の注意点②]対象は契約社員・パート・アルバイトなどの名称にかかわらず「有期契約労働者」
この記事の題名にも「契約社員の…」とつけていますが、無期転換は「契約社員」だけが使えるわけではありません。
対象となるのは「有期契約労働者」、つまり”労働契約の期間を決めてはたらいているすべての人”です。
契約社員・パート・アルバイト・準社員・パートナー社員など、名称にかかわらず、はたらきはじめるとき雇用契約書に「契約期間 ~◯年◯月◯日」と書かれた人です。
会社によっては、契約社員でも「決まった契約期間がない」という場合もあり、そういった方は「無期転換制度」の対象ではありません。
(というか、すでに無期契約ですので、転換する必要がないですね)
[無期転換の注意点③]自動で転換するわけではない(会社への申し込みが必要)
3つめの注意点が、「自動で無期契約に転換するわけではない」ということ。
契約期間が5年を超えると発生するのは、「会社に無期転換を申し込みできる権利(無期転換申込権)」です。
その後、会社への申し込みを行うことで、「無期契約への転換」が成立します。
そのため「無期転換社員になりたくない」という人は、申し込みしなければいいだけです。
ただし、会社によっては「自動的に無期転換される制度」を設けている場合もあるそう。
”契約社員用の就業規則”で、無期転換のルールを確認してみましょう。
なお「会社への申し込み」は口頭、つまり上司に、
無期転換を申し込みます!
と伝えるだけでもOK。
ただし、あとで「言った・聞いていない」というトラブルになることを防ぐためにも、書面を出すことがおすすめです。
会社に「申込書」があるか確認し、もしないようなら、厚生労働省が公開しているこちら↓の書式を使ってください。
[無期転換の注意点④]現在の契約期間がおわってから無期に転換される
前項で”会社への申し込みを行うことで、「無期契約への転換」が成立”とご紹介しましたが、その時点で契約が切り替わるわけではありません。
その時点では、会社と「転換する約束が成立した」だけ。
実際に無期契約に転換されるのは、現在の契約期間がおわってからです。
下図でいうと、2回めの3年契約のとちゅうで申し込みしても、その契約期間がおわるまで「転換」はされません。
2回めの3年契約が終了してはじめて、「転換」され、無期労働契約となります。
もしも、2回めの3年契約が終了した時点で、会社が、
きみの契約は、今回で終了!
更新はナシね…
といってきたら、この「雇止め(契約を更新しないこと)」は「解雇」にあたります。
そして「解雇」は「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」は無効です。
会社が、こういった「雇止め」をしてくる場合には、記事「仕事の悩みが相談できない方へ」でご紹介している機関にご相談ください。
◆「雇止め」のことをくわしく知りたい方には、こちらの記事がおすすめです。
・記事「雇止めとは?」
まとめ:契約社員のクーリング期間を理解して、希望するときに無期転換を
この記事では、働く人に向け、契約社員の無期転換でのクーリング期間とはどのようなものか、通算契約期間5年がリセットされるケース、無期転換ルールにおける注意点などを解説しました。
ぜひ記事を参考に、契約社員のクーリング期間を理解して、あなたが希望するときに無期転換をできるようにしましょう。
◆「契約社員・契約社員のルール・情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「契約社員とは?無期転換ルール、雇止めも解説」
・記事「派遣社員とは?わかりやすく解説」
◆次の会社を探したいときには、こちらの記事が参考になります。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
・記事「派遣社員になりたいとき」
参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 佐々木亮・著『武器としての労働法』KADOKAWA
- 書籍 労働問題研究会・著『働く人のための法律ガイドブック』労働教育センター