「これから派遣社員ではたらく!」という方で、
派遣社員は、健康保険に加入できるの?
こんな疑問はありませんか?
健康保険の制度は、すごくわかりづらいですからね。
そこでこの記事では、派遣社員は健康保険に加入できるのか、その加入条件、毎月支払う金額、退職後の切り替えまで解説します。
「派遣社員の健康保険についてくわしく知りたい!」というときは、ぜひご覧ください。
◆「派遣社員についての情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「派遣社員とは?わかりやすく解説」
派遣社員は健康保険に加入できる?
条件を満たすなら健康保険に加入しなくてはならない
派遣社員は、条件を満たせば健康保険に加入できます。
というか、条件を満たすなら、必ず加入しなくてはなりません。
たとえば、「フルではたらいているけど、保険料をはらいたくないから、家族の健康保険の扶養に入り続ける」ということはできません。
健康保険に加入する条件はこちら、家族の健康保険の扶養に入り続けるための方法はこちらでご紹介します。
健康保険とは?派遣社員が加入できる条件
健康保険とは、労働者やその被扶養者の、業務災害以外の病気やケガ・死亡・出産などに保険給付を行う保険制度です。
健康保険に加入することで、次の給付などをうけることができます。
- 療養の給付:病院での診察・治療・投薬などを3割負担でうけられる
- 高額療養費:医療費の自己負担額が高額になったとき、限度額を超えた分が払い戻される
- 傷病手当金:病気やケガで会社を休んだとき支給される
- 出産育児一時金:出産したときに一時金(協会けんぽなら42万円)が支給される
そして派遣会社で加入する健康保険のルールや保険料は、その派遣会社が加入する「保険者(健康保険事業の運営主体)」によって変わります。
以前は「保険者」として「人材派遣健康保険組合」がありましたが、2019年4月に解散して、「全国健康保険協会(協会けんぽ)」に移行されています。
自分がどの「保険者」の健康保険組合に加入しているかは、保険証に書いてあります。
健康保険のルールをくわしく知りたいときや、申請書をダウンロードしたいときは、その「保険者」のウェブサイトで確認しましょう。
ちなみに、協会けんぽのウェブサイトはこちら↓です。
健康保険と社会保険の違い
「健康保険」とよく似ており、よく一緒にみかけるコトバに「社会保険」がありますが、この2つはどう違うのでしょう?
じつは「健康保険」は、「社会保険」にふくまれる保険のひとつです。
「社会保険」とは、次のすべての保険をふくめた総称となります。
また、上記3つに「労働保険(雇用保険・労災保険)」までふくめて「社会保険」という場合もあります。
派遣社員が健康保険に加入できる条件
派遣社員が健康保険に加入できる(しなければならない)のは、次の条件をどちらも満たす場合です。
ただし上記を満たさない場合でも、2016年10月からは以下の条件をすべてみたすことで、健康保険に加入できるようになりました。
- 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
- 月額賃金が8.8万円以上
- 1年以上の雇用の見込みがある
- 学生ではない
- 従業員数が501人以上の派遣会社ではたらいている(2022年10月からは101人以上に)
この新しい条件が追加されたことで、後述する「106万円の壁」が、新しくできていました…
健康保険で毎月支払う金額はいくら?
健康保険で毎月支払う金額は、派遣会社が加入する「保険者」によって異なります。
たとえば「協会けんぽ」では、都道府県ごとに保険料が違い、東京都では下記資料のとおりです。
給料を「標準報酬月額」にあてはめ、「折半額」の欄で確認してください。
もし給料が15万円なら「等級12」の行をみて、毎月の保険料は7,380円とわかります。
なお、「折半額」と記載されているのは、健康保険料が派遣会社と派遣社員の「折半(半分ずつ)」での支払いになるため。
ブラック企業は、この「折半額」を支払いたくないため、条件を満たす社員でも健康保険に加入させないことがあります。気をつけましょう!
派遣社員はいつから健康保険に加入できる?
派遣社員では、短い契約期間を何度も更新することが、よくあります。
そうすると、いつから健康保険に加入することになるのでしょう?
答えは、以下のとおりです。
- はたらきはじめる時点で、条件を満たしている場合
→はたらきはじめると同時に、健康保険に加入
(例:雇用条件が「期間は半年、1日8時間、平日は毎日勤務」と条件をみたしている) - 更新して条件をみたすことになる場合
→条件をみたす契約が開始される時点から、健康保険に加入
(例:雇用条件が「期間は2ヶ月、1日8時間平日は毎日勤務」で、更新するケース。更新時点で加入となる)
もし家族の健康保険の扶養を外れずにはたらきたいなら、前もって派遣会社に話しておきましょう
派遣社員は派遣元と派遣先、どちらの健康保険に加入する?
「雇用元(派遣元)」と「はたらき先(派遣先)」が違う派遣社員では、さまざまな点で「どちらが対応するの?」というケースがあります。
そして健康保険については、派遣社員は派遣元(派遣会社)で加入します。
まちがって派遣先に、
なんで健康保険に加入させてくれないんですか!
などと言うと、問題になるので気をつけましょう。
(健康保険に加入させない時点で大問題ですが…)
派遣会社の健康保険に加入するときの手続き
派遣会社の健康保険に加入するときの手続きですが、派遣社員側がやることは特にありません。
一緒に厚生年金に加入するので、そちらでは「年金手帳」の提出が必要。
ですが健康保険は提出する書類もなく、手続きはすべて派遣会社がやってくれるます。
忘れてはいけないのが、これまで入っていた健康保険から脱退すること。
家族の健康保険の扶養に入っていたなら、保険証を家族に返して、脱退手続きをしてもらいましょう。
国民健康保険だったなら、14日以内に市区町村役所に行って、脱退手続きを行ないます。
誤って、以前の保険証をつかって病院などを受診すると、「あちらに申請して、こちらに診療費を払って、またあちらでもらって…」など大変です。
派遣会社で加入したら、すぐに以前の保険証を返却するなど、忘れずに脱退手続きを行ないましょう。
家族の健康保険の扶養内ではたらきたいときに気をつけること
家族の健康保険の扶養内ではたらきたいときに気をつけることは、「派遣社員での年収が106万円を超えないようにする」です。
いわゆる「106万円の壁」というもの。
以前は「130万円の壁」だけでしたが、2016年の法改正によって新たにつくられました。
前述した次の条件をすべてみたす場合は、派遣会社の健康保険に加入し、扶養からは外れなくてはなりません。
- 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
- 月額賃金が8.8万円以上
- 1年以上の雇用の見込みがある
- 学生ではない
- 従業員数が501人以上の派遣会社ではたらいている(2022年10月からは101人以上に)
なお「103万円の壁」は所得税、「150万円の壁」は配偶者控除と、また別の壁になります。
派遣社員を退職したら健康保険の切り替えはどうなる?
派遣社員を退職したら、健康保険の切り替えをしなくてはなりません。
これは、派遣会社の健康保険が、退職の翌日からは使えなくなるためです。
つまり健康保険証が使えるのは退職日まで。
そこで退職日をむかえる前に、次のどれに切り替えるか、余裕をもって検討しておきましょう。
ちなみに、
1ヶ月後には新しい仕事がはじまるから、その期間は健康保険に入らなくてもいいや!
という考えは許されません。
日本は「国民皆保険制度」をとっており、必ずどこかの医療保険に加入しなくてはならないのです。
ですからその1ヶ月分は、あとで国民健康保険の請求が来る可能性があります。
それにその間、ケガや病気をしたら大変です。
病院代を全額支払わなければなりません。
「無保険期間」にならないように、退職するときは気をつけましょう。
派遣社員を退職してから保険証を使ったらどうなる?
退職後に無保険でいたら、ケガして入院しちゃって…
まだ返してない保険証つかえばいいかな…
このように、退職してから保険証を使ったらどうなるんでしょう?
答えは、「後日、健康保険組合から健康保険負担分を請求される」です。
病院では「この保険証が有効かどうか」まで確認しないため、保険証は使える可能性はあります。
ですがその後、病院から健保組合に請求がいきますから、確実にバレます。そして請求されます。
バレてから国民健康保険に入ったとしても、退職の翌日までさかのぼっての保険料が発生。
さらに、病院での療養費の補償を認められないケースもあります。
「保険証を使い続ける」など、悪質なケースでは詐欺罪となることも。
退職後はすぐに保険証を返却し、ゼッタイに使わないようにしましょう。
まとめ:派遣社員も健康保険に加入できます!正しいルールを知りましょう
この記事では、派遣社員は健康保険に加入できるのか、その加入条件、毎月支払う金額、退職後の切り替えまで解説しました。
派遣社員も健康保険に加入できます!
正しいルールを知って、派遣会社が不正をするようなら、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する「労働局」や「一般社団法人ボイス」へ相談してみてください。
◆「派遣社員についての情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「派遣社員とは?わかりやすく解説」
参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 飯野たから・著『「非正規」六法』自由国民社