ついに仕事が決まった!けれど、
給料がいくらなのか、会社がちゃんと教えてくれない…。「労働条件の明示が必要」って、聞いたことがあるけど、どうなの…?
このように悩んでいる方はいませんか?
法律上の義務ですが、意外と守らない会社もあるのが「労働条件の明示」です。
そこでこの記事では、働く人に向けて「労働条件の明示」がどんな義務か、いつ明示されるのか、違反した会社の罰則など、ギモンにお答えしていきます。
「労働条件の明示をしてくれないウチの会社は、ブラック企業かも…?」と悩んでいる方は、ぜひご覧ください。
◆「労働基準法とその内容」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「労働基準法とは?労働時間などのルールもわかりやすく解説」
◆もし、「もうこんな会社とは関わりたくない…」というときは、こちらで次の会社を探してみてください。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
・記事「「派遣社員になりたいときはどうすればいい?」
会社側の労働条件の明示義務とは?罰則や違っていたときの対応
まずは、会社側の労働条件の明示義務について、基本情報や罰則、違っていたときの対応をご紹介します。
労働条件の明示義務とは、社員を雇うときに必要な会社側の義務
労働条件の明示義務とは、社員を雇うとき(採用時)に必要な会社側の義務です。
給料や労働時間などの項目や、書面などの方法が、次のように労働基準法で決められています。
労働基準法15条(労働条件の明示)
・1項:使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
また後述のとおり、「労働条件の明示」には項目によって、「書面などで行う」ものと「口頭でもよい」ものがあります。
明示義務に違反した会社への罰則:30万円以下の罰金
明示義務に違反した、つまり労働条件の明示を行わなかった会社への罰則は、30万円以下の罰金です(労働基準法120条で規定)。
会社がひどいブラック企業だったなら、労働局に「明示義務違反です」と申し立てましょう。
なお、「労働条件の明示」がない場合でも、「労働契約」そのものは有効。
退職したくないときは、その会社で変わらずに働くことができます。
明示された条件と実際が違っていたら「即日退職」もOK
求人広告では時給1,000円だったのに、実際は800円だった!信じられない!
このように、「明示された労働条件」や「求人広告などに記載された労働条件(くわしい条件は後述)」と、実際の条件がちがっていたときは、会社側の同意がなくとも「即日退職」ができます。
つまり、社員側が一方的に「その日のうちに退職できる」ということで、労働基準法15条2項で決められています。
労働基準法15条(労働条件の明示)
・1項:使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
・2項:前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
労働条件の明示方法と「労働条件通知書」の見本
次に、労働条件の明示方法と「労働条件通知書」の見本をご紹介します。
[明示方法①]書面などでの明示が必要な労働条件
労働条件のなかでも、給料など特に重要な下記の項目については、書面などを渡して明示することが必要です。
なお、以前は「書面のみOK」でしたが、2019年4月からは「社員側が希望すれば、FAXやeメール、LINEなどのSNSでの明示でもOK」となりました。
[明示方法②]口頭での明示でもよい労働条件
前項ほど重要でない下記の労働条件については、口頭での明示、つまり「話して伝えるだけ」でもよいとされています。
労働条件を明示する書面「労働条件通知書」の見本
労働条件を明示する書面として、特に決まった書式・フォーマットはありません。
必要な事項が記載してあれば、書式は会社で自由に決めてOKです。
ちなみに厚生労働省では、モデル書面として「労働条件通知書」を公表。
そのため多くの会社では「労働条件通知書」を使用します。
労働条件はいつ明示される?どこをチェックすべき?
次に、労働条件はいつ明示されるのか、またどこをチェックすべきなのか確認しましょう。
明示の時期:多くの会社では「入社時」に書面を渡される
「労働条件の明示」は、法律では「労働契約の締結に際し」としか決められていないため、明示の時期については具体的に「〇〇の時点で示すこと」といったルールはありません。
ですが多くの会社では、社員の入社時に「労働条件通知書」を渡します。
入社の時点でまだもらっていないなら、上司に「労働条件通知書をいただけますか?」と聞いたほうがいいです
なお入社時には、ほかにもたくさんの書類をもらうと思いますが、すべて大事なものばかりです。
よくわからなくてもいいので、絶対に捨てず、とりあえず保管しておきましょう。
のちに会社とモメたとき、大切な「証拠」になってくれます。
通知書などの書面では特に「契約期間(定めの有無)」のチェックを忘れずに
会社から通知書などの書面が渡されたら、ひととおり全項目に目を通してください。
そして、面接時や求人票の条件と違っている点がないかを、チェックします。
特に忘れずにチェックしてほしいのが「契約期間」の「期間の定めなし・あり」です。
たとえば「正社員募集」だから応募したのに、入社してから、
正社員は足りてるから、キミは「契約社員」ね…
と言われることもあるそう。
僕は、入社してから「最初はバイトな!」と、気軽にいわれたことがあります…。
契約社員などの「有期労働契約(期間の定めのある労働契約)」と、正社員などの「無期労働契約(期間の定めのない労働契約)」では、「退職の申し入れができるタイミング」などのルールがちがってきます。
そのため「契約期間」は忘れずにチェックしましょう。
そのほか、こちらもチェックしておけば、あとあと「話しが違う…」ということがなくなります。
- 試用期間のアリ・ナシ
- 給料に「固定残業代」がふくまれていないか
会社が労働条件の明示を行わないときの対応方法
特にブラック企業では、労働条件の明示を行わないことも。
ここでは、会社が明示を行わないときの対処法をご紹介します。
[対応方法①]会社の「就業規則」などの規程を確認する
まずは、会社の「就業規則」などの規程を確認しましょう。
これは、働きはじめるときに「労働条件を詳細に決めていない」場合、会社が合理的な「就業規則」を社員に周知させているなら、「就業規則」にある労働条件が、社員の労働条件になるため(労働契約法7条)。
規則・規程で、自分の賃金や労働時間、休日といった「労働条件」を確認してください。
できれば「就業規則」などの規程を、会社にバレないようにコピーしておきましょう。
そしてあなたの実際の給料や労働時間が、就業規則に書かれた「労働条件」を下回っていた場合は、労働局に相談することをおすすめします。
[対応方法②]「就業規則」の労働条件と実態が違うときは労働局に相談を
「就業規則」などに記載された労働条件と、実態が違うときは、労働局に相談しましょう。
ちなみに労働局とは、各都道府県に設置された、厚生労働省の出先機関。
労働者のさまざまな相談にのってくれ、場合によっては会社への指導なども行ないます。
ただ、「公的機関に相談しづらい…」というときには、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する「一般社団法人ボイス」へ相談してみてください。
また、ブラック企業では「就業規則」を隠して、見せてくれないところもあるようです。
こんなときには、
会社が、「労働条件の明示」も「就業規則の周知」も、してくれないんです…
と労働局に相談してみてください。
求人票や求人広告の内容は労働条件の明示になる?
ハローワークの求人票や、求人広告にものっている仕事内容。
特に求人票にはくわしい条件が記載されていますが、これは「労働条件の明示」になるのでしょうか。
記事の最後に、求人票や求人広告の内容が「労働条件の明示」になるのかを解説します。
職安法の「明示」だけれど、労基法の「明示」にはならない
ハローワークの求人票などは、職業安定法での「明示」にはなりますが、労働基準法上の「明示」にはなりません。
まぎわらしいのですが、じつは「労働条件の明示」には、つぎの2段階があります。
この記事でくわしく解説しているのが、上記2ですね。
上記1「求人段階」での労働条件は、「確定前」で「一応の目安」と考えられるため、給与などは「見込み額」などを示せばいいとされます。
そして上記2「採用段階」での労働条件は、給与などは確定額を示す必要があります。
このように、同じ「労働条件の明示」でも中身がちがうため「求人票は、労基法上の明示にはならない」となります。
さらに「求人段階」と「採用段階」で労働条件がちがった場合は、会社はその内容を社員に明示しなければなりません(職業安定法5条の3 第3項)
ただし「労働条件」にはなる
それでは、労働条件が「求人段階」では明示されていた(求人票に記載されていた)けれど、「採用段階」で明示されなかった場合、「労働条件」はどうなるんでしょう。
この場合、「求人段階」での労働条件が”具体的で確定的”であれば、これが「労働条件」になるとされます。
つまり求人票で給料が「20万円/月」とあり、面接でとくに給与のハナシがなく、「採用段階」でも「労働条件の明示」がなかったなら、あなたの給料(労働条件)は「20万円/月」です。
ところがはたらいてみたら「15万円/月」だった…、というときは「労働条件がちがう」ということですので、次項でご紹介するとおり「即日退職」が可能です。
まとめ:労働条件の明示などがないなら、労働局へ相談を
この記事では、働く人に向けて「労働条件の明示」がどんな義務か、いつ明示されるのか、違反した会社の罰則など、ギモンにお答えしてきました。
僕の経験上、「労働条件の明示がない会社」は、ブラック企業である可能性が高いです
できれば早いうちに、労働局などの公的機関へ相談することをおすすめします。
◆「労働基準法とその内容」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「労働基準法とは?労働時間などのルールもわかりやすく解説」
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参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 ブラック企業被害対策弁護団・著『働く人のためのブラック企業被害対策 Q & A』LABO
- 書籍 労働問題研究会・著『働く人のための法律ガイドブック』労働教育センター
- 書籍 岩出誠・編『アルバイトパートのトラブル相談 Q & A』民事法研究会