会社の都合で休業するときに、
休業手当だと6割しかもらえないから、10割もらえる有給休暇を使ってもいいの?どうせ毎年使い切れないし…。
こんな疑問をお持ちではないですか?
せっかくなら、毎年使い切れない有給休暇を使って、少しでも多く給料をもらいたいですよね。
そこでこの記事では、働く人向けに、会社都合の休業に有給休暇を使ってもいいのか、そして会社から取得の指示があったときの対応、休業したときの有給休暇の付与までご紹介していきます。
「会社が休業するので、ルールを確認したい」というときは、ぜひご覧ください。
◆「労働基準法とその内容」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「労働基準法とは?労働時間などのルールもわかりやすく解説」
◆次の会社を探したいときには、こちらの記事が参考になります。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
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会社都合の休業に有給休暇を使ってもいい?
会社都合での休業の場合、「休業手当」が支給されますが、その額は平均賃金の6割。
一方で、有給休暇を使えば10割が支給されます。
どうせ毎年使いきれず余ってしまうのだから、「休業日に有給休暇を使ったほうがトク」と考える方も多いかもしれません。
そこでまずは、会社都合の休業に有給休暇を使ってもいいのかを確認しましょう。
休業命令後の申請では有給休暇は使えない
休業の命令後に、社員が有給休暇の申請をした場合では、有給休暇は使えません。
なぜなら、有給休暇とは「会社の就業日(労働義務のある日)」にのみ取得できる制度だから。
「会社都合で休業」する日、つまり「休業日」は文字どおり休みですから、「会社の就業日」ではありません。
そのため会社都合の休業命令後には、有給休暇は使えないということです。
ただし会社側が認めれば、休業命令後であっても有給休暇を使うことは可能となります。
就業規則などを確認するか、人事部門の担当者に聞いてみましょう。
休業命令前に申請していれば有給休暇が使える
ただし、休業命令前に申請していれば有給休暇が使えます。
たとえば、社員がもともと8月1日に休もうと有給休暇を申請しており、その後に8月1日が休業と決まったケース。
このとき有給休暇の申請時には、8月1日はまだ休業日ではありません。
そのため、この社員にとって8月1日は有給休暇取得日となり、その後に休業が決まったとしても変更はされません。
このように有給休暇が優先されるので、他の社員には休業日だったとしても、すでに申請をしていれば有給休暇として10割支給されます。
会社都合の休業と休業手当について
「会社都合の休業」とは、たとえば次のような原因による休業。
- 生産調整のための休業
- 機械の故障・検査のための休業
- 原料不足のための休業
- 会社の資金不足からの経営難による休業
- 監督官庁からの勧告による操業停止 など
このとき会社は休ませた社員に対して、労働基準法26条に定められた「休業手当」を支払わなくてはなりません。
会社が「休業手当」を支払わないときは、会社に対して30万円以下の罰金が科されます(労働基準法120条)。
また休業には次のようなケースもありますが、このような「会社の努力では休業を避けられなかった」場合は「休業手当」の支給対象外となります。
◆「休業手当」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「休業補償と休業手当の違いとは?」
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会社から「休業日は有給休暇をあてること」と指示があったときは?
次に、会社から「休業日は有給休暇をあてること」と指示があったとき、従わなくてはいけないのかを確認します。
会社に従う必要はない、労働局などへ相談を
会社から「休業日は有給休暇をあてること」と指示があったとき、会社に従う必要はありません。
もともと有給休暇は、社員が自由な時期に取ってよいことが法律で決められています。
労働基準法 39条(年次有給休暇)
5項 使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
会社側は、「繁忙期で人手不足になる」といった事情がある場合には、有給休暇の取得時季を変更させることができます(時季変更権)。
ですが会社側に、「この時期にとりなさい」と取得時期を指示する権利はありません。
さらに前項でご紹介したとおり、休業日に有給休暇は取得できません。
もし会社が「有給休暇しか認めず、休業手当は出さない」というと、次のような「有給休暇がない社員」が無給となってしまいます。
- すでに有給休暇を使い切った社員
- 働きはじめたばかりで、有給休暇がまだ発生していない社員
- 所定労働時間が短いため、有給休暇が発生しない社員
どうしても会社が有給休暇ですすめるようなら、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する「労働局」や「一般社団法人ボイス」へ相談してみてください。
休業すると有給休暇の出勤率・付与はどうなる?
記事の最後に、休業すると有給休暇の出勤率・付与はどうなるのかをご紹介します。
休業日は出勤率を計算する”全労働日”には含まれない
休業日は、出勤率を計算するときの”全労働日”には含まれません。
有給休暇を付与されるためには、次の条件をどちらも満たす必要があります。
出勤率は、次の式で求めます。
そして「全労働日」からは、以下の日は除外するとされています。
イ 全労働日から除外される日数
(1)使用者の責に帰すべき事由によって休業した日
(2)正当なストライキその他の正当な争議行為により労務が全くなされなかった日
(3)休日労働させた日
(4)法定外の休日等で就業規則等で休日とされる日等であって労働させた日
ですから休業があったとしても、ほかの労働日に出勤していれば、ちゃんと有給休暇が付与されます。
休業日は安心して休みましょう。
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まとめ:会社都合の休業命令後の申請では有給休暇を使えません
この記事では、働く人向けに、会社都合の休業に有給休暇を使ってもいいのか、そして会社から取得の指示があったときの対応、休業したときの有給休暇の付与までご紹介してきました。
記事でご紹介したとおり、会社都合の休業命令後の申請では有給休暇を使えません。
ですが会社によっては使えるところもありますので、念のため人事担当者などに確認してみましょう。
◆「労働基準法とその内容」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「労働基準法とは?労働時間などのルールもわかりやすく解説」
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参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 林智之・著『職場の法律トラブルと法的解決法158』三修社