会社ではたらいている方が妊娠すると、
育児休業制度があるって聞いたけど、期間はいつまで取れるの?
このような疑問が出てくるかもしれません。
「育休」や「産休」と似ている言葉も多いため、わかりづらいですね。
そこでこの記事では、育児休業(育休)期間はいつまで取れるのか、取得する要件や申請方法、利用したい公的な支援策、産休との違いまで解説していきます。
「パパも育休をとりたい!」というときも、役立つ情報がありますのでぜひご覧ください。
◆「労働基準法とその内容」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「労働基準法とは?労働時間などのルールもわかりやすく解説」
育児休業(育休)期間はいつまで取れる?
まずは、育児休業(育休)期間がいつまで取れるのかをご紹介します。
期間には「原則」と「例外」があり、その要件(必要な条件)もありますので、よくルールを確認しましょう。
原則:「子どもが1歳になるまで」の期間取得可能
育児休業(育休)は、原則として「子どもが1歳になるまで」の期間、取得可能です。
これは社内的なルールではなく、育児・介護休業法という法律で決められています。
育児・介護休業法 5条(育児休業の申出)
労働者は、その養育する一歳に満たない子について、その事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができる。(略)
6条(育児休業申出があった場合における事業主の義務等)
事業主は、労働者からの育児休業申出があったときは、当該育児休業申出を拒むことができない。(略)
そして上記のとおり、事業主(会社側)は育休の申し出を、原則として断ることはできません。
(ただし、後述のとおり要件に該当しない場合は拒否できます)
ですから会社に育休を申請したところ、
ウチには育児休業の制度がないから、育休は認められないよ…
といわれたら、これは育児・介護休業法違反です。
そんなときは、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する”労働局”などの公的機関に相談してみてください。
なお育休については、厚生労働省が作成したこちら↓の動画が分かりやすいので、一度ご覧ください。
「パパ・ママ育休プラス」で1歳2カ月まで休業可能
前項で「育児休業(育休)は原則、子どもが1歳になるまで」とご紹介しましたが、例外もあります。
ここからは育休の例外的な期間についてご紹介します。
まず「両親ともに育児休業をする」ケースで、これは「パパ・ママ育休プラス」とよばれる制度。
このときは、1歳2カ月まで育児休業(育休)をとることが可能です。
ただし「パパ・ママ育休プラス」を取得するには、次の3点をすべて満たすことが必要となります。
「パパ・ママ育休プラス」制度について、くわしくはこちらをご覧ください。
「保育所に空きがない」などで1歳6カ月まで休業可能(延長)
社員またはその配偶者が、子どもの1歳の誕生日の前日に育児休業を取得し、1歳を超えても休業が必要となる以下のいずれかの場合には、1歳6カ月まで育児休業(育休)を延長可能です。
- 保育所に入所の申し込みを行っているが、子どもの1歳の誕生日以後も「当面入所できない」との通知をうけた場合
- おもに子育てを行っており、子どもが1歳以後も子育てするはずだった配偶者が、死亡、負傷・疾病、離婚などによって養育することができなくなった場合
育休の延長について、くわしくはこちらのサイトを参照にしてください。
「保育所に当面入所できない」などで2歳まで休業可能(再延長)
さらに「再延長」の制度もあります。
社員またはその配偶者が、子どもの1歳6か月の誕生日の前日に育児休業を取得し、1歳6か月を超えても休業が必要となる以下のいずれかの場合には、2歳まで育児休業(育休)を再延長することが可能です。
- 保育所に入所の申し込みを行っているが、子どもの1歳6か月の誕生日以後も「当面入所できない」との通知をうけた場合
- おもに子育てを行っており、子どもが1歳6か月以後も子育てするはずだった配偶者が、死亡、負傷・疾病、離婚などによって養育することができなくなった場合
育児休業(育休)で知っておきたいルール
次に、育児休業(育休)を取得するうえで、知っておきたいルールをご紹介します。
育休の要件:パート・派遣・契約社員でも取得できる?
育児休業(育休)を取得することができるのは、次の要件をすべて満たす社員の方です。
正社員やパート、派遣、契約社員などの「雇用形態」は関係ありません。
ただし以下の要件のどれかに該当するときは、育児休業(育休)を取得できません。
- 会社ではたらいている期間が1年未満
- 1年以内に雇用関係が終了する
- 週の所定労働日数が2日以下
- 日雇いの仕事をしている
育休の申請方法:いつ会社に申請すればいい?
育児休業(育休)の申請は、原則として開始する1ヶ月前までとされています。
「育児休業申出書(会社の様式を使用します 見本)」に必要事項を記入して、会社に提出してください。
ただし、次のような「特別の事情」があるときは、休業開始予定日の1週間前までに提出すれば認められます。
- 出産予定日前に子どもが生まれた
- 配偶者が病気やケガで養育が困難になった
- 配偶者が亡くなった
- 配偶者が子どもと同居しなくなった
男性の育児休業(育休)はいつまで取得できる?
男性も育児休業(育休)を取得することができます。
そして基本的なルールは上記のとおりで、原則は「子どもが1歳になるまで」です。
また男性については「パパ休暇」制度が設けられています。通常は1回しか取得できない育休について、特別な事情がなくとも再度取得可能です。
「パパ休暇」制度を利用するためには、次の要件をみたすことが必要。
「パパ休暇」制度について、くわしくはこちらをご覧ください。
育児休業(育休)期間の自動計算サイト紹介(厚生労働省)
厚生労働省では、育児休業(育休)期間を自動で計算してくれるサイトを作成しています。
出産予定日などを入力すれば、すぐに計算してくれますのでご利用ください。
育児休業(育休)期間に利用したい公的な支援策
出産には何かとお金がかかりますか、じつはサポートしてくれる制度もあります。
ここでは、育児休業(育休)期間に利用したい公的な支援策をご紹介します。
[支援策①]育児休業給付金
育児休業を取得し、その期間中の賃金が休業開始時の賃金とくらべ80%未満に低下したなど、一定の要件を満たした場合に支給されるのが「育児休業給付金」です。
申請は自分でも行えますが、会社側が用意する書類が多いため、申請も会社に任せるのがおすすめ。
申請先はハローワークとなります。
「育児休業給付金」制度についてくわしく知りたいときは、こちらの記事をご覧ください。
[支援策②]出産手当金
女性社員が出産のために会社を休み、その間の給料の支払いがなかった場合に支給されるのが「出産手当金」です。
前項の「育児休業給付金」は育休期間中に支給されますが、この「出産手当金」は産休期間中に支給される手当といえます
ただし「育児休業給付金」は雇用保険上の制度のためハローワークに申請しますが、「出産手当金」は健康保険上の制度となります。
そのため申請先は、勤務先の健康保険組合です。
[支援策③]育児休業期間中の社会保険料の免除
育児休業の期間中は会社を休むわけですから、どうしても収入が減少しがちです。
そこで育児休業の期間中には、社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料)の免除も行われます。
社会保険料の免除を希望するときは、育児休業を取得、または延長したときに、会社側に申し出てください。
その後、会社側が年金事務所への申請を行ないます。
免除される期間は、育児休業等開始月~終了予定日の翌日の属する月の前月までです。
育児休業(育休)と産休(産前休業・産後休業)の違い
「出産・育児のために会社を休む」というと、「育休」と「産休」というコトバを聞いたことがあるかもしれませんが、その違いはなかなかわかりづらいですよね。
記事の最後に、育児休業(育休)と産休(産前休業・産後休業)の違いをご紹介します。
[育休と産休の違い①]休業の期間
育児休業(育休)と産休(産前休業・産後休業)の違いとして、最もわかりやすいのが「休業の期間」です。
わかりやすく図解すると、下図のようになります。
産休とは、出産をはさんだ次の期間のことをいいます。
そして育休は、産後休業のあとから、原則子どもが1歳になるまでの期間です。
◆産休についてくわしく知りたいときは、こちらの記事をご覧ください。
[育休と産休の違い②]要件の有無
育児休業(育休)と産休(産前休業・産後休業)の違いの2点目は、「要件の有無」です。
育休を取得するには、前述のとおり要件を満たすことが必要。
正社員であっても、まだ1年未満であれば育休の対象にはなりません。
ですが産休には要件がなく、会社に申請さえすれば誰でも取得することができます。
[育休と産休の違い③]育休は男女とも取得可能、産休は女性のみ
3点目の違いが、育休は男女とも取得可能ですが、産休は女性のみという点です。
政府が「男性も育休を!」というはたらきかけをしていることで、取得する方も増えています。
厚生労働省の調査によると、配偶者が出産した男性のうち、育児休業を取得した男性の割合が令和2年(2020年)は過去最高の12.65%に。
育休を取得する男性がもっと増えると、奥様も子どもを育てやすくなりますね。
まとめ:育児休業(育休)期間は延長も可能、正しいルールを知りましょう
この記事では、育児休業(育休)期間はいつまで取れるのか、取得する要件や申請方法、利用したい公的な支援策、産休との違いまで解説してきました。
育児休業(育休)期間は、原則子どもが1歳になるまでですが、事情によって延長も再延長も可能です。
正しいルールを知り、家庭の事情に合った適切な休業を取得しましょう。
◆「労働基準法とその内容」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
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参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 林智之・著『休業・休職をめぐる法律と書式 活用マニュアル』三修社