会社でパート社員として働いていて、
今度、会社で健康診断があるらしいけど、パート社員でも受けられるの?その費用って自己負担?会社負担?
こんなギモンはありませんか?
何となく「健康診断の対象は正社員だけなのかな…?」とも考えがちですよね。
そこでこの記事では、パート社員も健康診断を受けられるのか、その費用は自己負担なのか会社負担なのか、さらに入社前(雇入時)の健康診断まで解説します。
「せっかくだから、会社の健康診断を受けたい!」と考えているときは、ぜひご覧ください。
◆「パート社員のルール・情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「パート社員とは?残業代、雇止めなどのルールも解説」
◆次の会社を探したいときには、こちらの記事が参考になります。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
・記事「派遣社員になりたいとき」
パート社員も健康診断を受けられる?受けたくないときは?
まずは、パート社員も健康診断を受けられるのか、受けたくないときはどうなるかを確認しましょう。
1年以上契約・所定労働時間3/4以上のパート社員は健康診断受診の義務がある
パート社員であっても、次の要件をどちらも満たすときには、会社側は健康診断を受診させる義務があります。
- 契約期間が1年以上
- 週の所定労働時間が正社員の3/4以上
つまり、パート社員も健康診断を受けられます。
このルールは労働安全衛生法で決められています。
よりくわしく解説すると、以下のどれかに当てはまる社員について、会社は「定期健康診断」をうけさせなくてはいけません。
該当するのに会社が健診をうけさせてくれなければ、それは労働安全衛生法違反です。
記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する”労働局”に相談してみてください。
所定労働時間1/2以上3/4未満のパート社員は「健康診断の実施が望ましい」
また、週の所定労働時間が「正社員の1/2以上3/4未満」のパート社員は、「健康診断の実施が望ましい」とされます。
これは法律などで決められたものではなく、厚生労働省の通達「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の施行について」で述べたもの。
義務ではないため、健康診断をうけさせてくれるかどうかは、会社次第です。
さらに、週の所定労働時間が「正社員の1/2未満」のパート社員については、実施させる根拠がありません。
ここまでの「健康診断の実施義務」の条件をまとめると、下表のとおり。
健診にはいくつか種類がありますが、くわしくは後述します。
実施義務がある社員は健康診断を受けなくてはならない
会社での健康診断は受けたくない…。こんなときは受けなくてもいいの?
いろいろと理由はあるでしょうが、「健康診断を受けたくない」という人もいるようです。
結論としては「実施義務の対象者なら、健康診断を受けなくてはならない」です。
(義務の対象者とは、前項の表の「◎」の社員)
これは労働安全衛生法で決められています。
労働安全衛生法 66条5項
労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。
ただし、ほかの病院で健康診断を受けて、結果を会社に提出すれば、再度会社で健診を実施する必要はありません。
パート社員の健康診断費用は会社負担?健診受診中の賃金は?
健康診断でもうひとつ気になるのが、「費用の負担がどうなるのか?」ですよね。
ここでは、パート社員の健康診断費用の負担はどうなるのかを解説します。
健康診断の実施義務がある社員分の費用は会社負担に
費用についての結論としては、「定期健康診断を実施する義務がある社員分の費用は、会社負担になる」です。
「定期健康診断の対象」とは、つまり前項でご紹介した厚生労働省の表で「◎」となっているパート社員。
費用負担については、法律などで決められてはいませんが、厚生労働省のサイトでも記載され、労働基準局長あての通達でも明言されています。
もし健診実施義務がある社員について、会社が、
パート社員の定期健康診断は、自費ね…
といってきたら、こちら↓を会社側に提示してみてください。
・厚生労働省:パートタイム労働者の健康診断を実施しましょう!!(【健康診断の費⽤負担等】を参照)
・石川労働局:労働安全衛生法に基づく健康診断に関する FAQ(Q3を参照)
それでもダメなら、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する「労働局」や「一般社団法人ボイス」へ相談してみてください。
健康診断の実施義務がない社員は自費で受診可能
もし、労働時間が短いなどで「定期健康診断」の対象外となった社員であっても、自費で受診することは可能です。
現在加入中の健康保険で実施する「定期健康診断」の費用と比較して、会社のほうがいいようでしたら、上司や健康保険の担当者に相談してみてください。
健康診断を受診中の賃金は「支払うことが望ましい」
健康診断を受診している時間は給料は出るの?
時給で働いていると、こういう疑問がでますよね。
ここについては「会社側が払うことが望ましい」とされています。
「会社は必ず給料を出さなければいけない」わけじゃないので、「もし出たらラッキー」くらいで考えておきましょう。
パート社員の「入社前(雇入れ時)の健康診断」の対象は?費用負担はどうなる?
パート社員が入社するとき、会社から「入社にあたって、健康診断の結果を持ってきてください」といわれることも。
記事の最後に、この入社前(雇入時)の健康診断についてご紹介します。
「入社前(雇入れ時)の健康診断」の対象は「常時使用する労働者」
会社側は、「常時使用する労働者を雇い入れるとき」に健康診断を実施しなければならず、これを「雇入時の健康診断」といいます。
労働安全衛生規則 43条(雇入時の健康診断)
事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。
ただし、医師による健康診断を受けた後、三月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。
そしてパート社員が、「雇入れ時の健康診断」の対象になるかどうかは、以下のどちらかに該当するかで決まります。
そしてこの条件に該当しない社員については、会社には健康診断をうけさせる義務はありません。
「入社前(雇入れ時)の健康診断」対象者なら費用は会社負担に
次に、費用についての結論としては「定期健康診断」と同様で、「雇入れ時の健康診断の対象なら、費用は会社負担になる」です。
費用負担は、法律などで決められてはいませんが、労働基準局長あての通達にて明言されています。
労働安全衛生法および同法施行令の施行について(昭和47年9月18日 基発第602号通達)
13 健康管理 (2)第六六条関係
イ 第一項から第四項までの規定により実施される健康診断の費用については、法で事業者に健康診断の実施の義務を課している以上、当然、事業者が負担すべきものであること。
もし会社が、
パート社員の定期健康診断は、自費ね…
といってきたら、こちら↓を担当者に提示してみてください。
・厚生労働省:パートタイム労働者の健康診断を実施しましょう!!(【健康診断の費⽤負担等】を参照)
・石川労働局:労働安全衛生法に基づく健康診断に関する FAQ(Q3を参照)
それでもダメなら、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する”労働局”に相談してみましょう。
ちなみに健康診断では保険証は使用できず、全額実費負担となります。
金額は病院によってちがいますが、5,000円~1万円といったケースが多いようです。
一度自費で支払って、あとで精算するという会社もありますので、病院では忘れずに領収書をもらっておきましょう。
「入社前(雇入れ時)の健康診断」で必ず実施すべき検査項目
「雇入れ時の健康診断」で必ず実施すべき検査項目は法律で決まっており(労働安全衛生規則43条)、以下のとおりです。
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
- 胸部エックス線検査
- 血圧の測定
- 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
- 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)
- 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
- 血糖検査
- 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
- 心電図検査
健康診断の種類と検査項目
記事の最後に、健康診断について理解しやすいように、その種類と検査項目をご紹介します。
健康診断は大きく分けて「一般」と「特殊」
健康診断には大きく分けて、次の2つがあります。
- 一般健康診断
- 特殊健康診断
そしてそれぞれ、以下のような健康診断がふくまれます。
〈一般健康診断〉
①雇入時の健康診断:常時使用する労働者を雇い入れの際に実施
②定期健康診断:常時使用する労働者について年に1回実施
③特定業務従事者の健康診断:暑熱な場所における業務などに配置換えの際と、6ヶ月ごとに実施
④海外派遣労働者の健康診断:海外に6月以上派遣する際と、帰国後国内業務に就かせる際に実施
⑤給食従業員の検便:給食の業務などに従事する労働者の雇入の際と、配置換えの際に実施
〈特殊健康診断〉
①入社時、有害業務への配置換え時に行う特殊健康診断
②定期の特殊健康診断(6月以内に1回)
「特殊健康診断」は、有機溶剤業務や特定化学物質の取扱いなどの業務に就く社員が対象となります。
会社側には、労働安全衛生法にもとづき「社員に健康診断を受けさせる義務」があり、年に1回行うものを「定期健康診断」とよびます。
労働安全衛生法 66条(健康診断)
事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない。
労働安全衛生規則 44条(定期健康診断)
事業者は、常時使用する労働者(第四十五条第一項に規定する労働者を除く。)に対し、一年以内ごとに一回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。
「定期健康診断」で必ず実施すべき検査項目
「定期健康診断」で必ず実施すべき検査項目は法律で決まっており(労働安全衛生規則44条)、以下のとおりです。
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査 ※
- 身長※ 、体重、腹囲※、視力および聴力の検査
- 胸部エックス線検査※および喀痰検査※
- 血圧の測定
- 貧血検査(血色素量及び赤血球数)※
- 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)※
- 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)※
- 血糖検査※
- 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
- 心電図検査※
※:各項目の基準にもとづき、医師が「必要でない」と認めるときは省略することができます。
まとめ:健康診断の対象となるパート社員の条件を知りましょう
この記事では、パート社員も健康診断をうけられるのか、その費用は自分で出すのか、さらに入社前(雇入時)の健康診断まで解説しました。
ぜひ記事を参考に、健康診断の対象となるパート社員の条件を知り、会社に対して正しい対応をとりましょう。
◆「パート社員のルール・情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「パート社員とは?残業代、雇止めなどのルールも解説」
◆次の会社を探したいときには、こちらの記事が参考になります。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
・記事「派遣社員になりたいとき」
参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 小島彰・著『パート・契約社員・派遣社員の法律問題とトラブル解決法』三修社