派遣社員としてはたらいていて、
派遣先から急に「今日は関連会社で仕事をしてくれ」っていわれたけど、これって問題ないの…?
このようなことはありませんか?
じつはコレ、「二重派遣」といわれる違法行為なんです。
そこでこの記事では、「二重派遣」について、出向での注意点や禁止される理由、罰則、相談先までわかりやすく解説していきます。
「派遣社員としてはたらくうえでの、正しいルールを知りたい」というときは、ぜひご覧ください。
◆「派遣社員についての情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「派遣社員とは?わかりやすく解説」
・記事「「派遣社員になりたいときはどうすればいい?」
「二重派遣」とは?図解でわかりやすく紹介
まずは、「二重派遣」とはどのようなものか、図解でわかりやすくご紹介します。
二重派遣とは、派遣先からさらに別の企業に派遣されて働くこと
「二重派遣」とは、派遣先からさらに別の企業に派遣され、その企業で働くことで、法律で禁止されている違法行為です。
わかりやすく図解すると、下図のような状態。
通常であれば「労働者(派遣社員)」は、「派遣元A社(派遣会社)」から派遣されて、「派遣先B社」で働きます。
「派遣先B社」から、さらに「注文者」に派遣され、「注文者」のもとで働かされるのが「二重派遣」。
そして、紹介された企業がさらに別の企業を紹介して…、と下図のようにくり返して「3社の派遣元」が入った場合は「三重派遣」。
これら「2社以上の派遣元」が入ることを、総称して「多重派遣」とよびます。
正しい「労働者派遣」は、下図のように「派遣元・派遣先・労働者」の三者による関係でできあがります。
そこにもうひとつ企業が入ってくるのは違法ということです。
ちなみに、東京電力福島第一原子力発電所での作業員にも、「二重派遣」が横行していたようで、厚生労働省は注意喚起のチラシまで作成しました。
二重派遣の抜け道として行われる「偽装請負」にも注意
二重派遣の抜け道として行われる「偽装請負」にも注意が必要です。
正しい請負は下図(参考3)のとおりで、注文主と労働者のあいだに「指揮命令関係」がありません。
上図(参考4)のように、注文主と労働者のあいだに「指揮命令関係」が発生すると偽装請負。
偽装請負は、たとえ「請負契約」を結んでいても請負とはみなされず、法的には労働者派遣に該当します。
ですから、下図のように「請負契約(と称するもの)」を結び、多重請負を行った場合でも「二重派遣」となるのです。
たとえ雇用主から「これは請負だから、二重派遣にはならないよ」と言われても、働く現場で発注者から指揮命令を受ければ二重派遣です。後述する労働局に相談しましょう。
派遣社員の出向が「二重派遣」になるケースとならないケース
派遣社員を出向させたケースでも、やはり「二重派遣」になるのでしょうか?
再度、下図で考えてみましょう。
「派遣先B社」に派遣された「労働者(派遣社員)」が、「注文者」のところに「出向」するケースです。
このとき、次のようなケースでは「二重派遣」になり違法です。
とくに下記3を行うと「悪質」と判断されます。
「二重派遣」になるケース
1.派遣契約を「派遣元A社」と「派遣先B社」で結んでいる
2.派遣社員が「注文者」の指揮命令をうけて働いている
3.「派遣先B社」が、派遣社員を「自社の社員だ」と偽って「注文者」に出向させている
ですが、下記のケースなら「二重派遣」ではないため、違法にはなりません。
「二重派遣」にならないケース
1.派遣契約を「派遣元A社」と「注文者」で結んでいる
2.就業場所が「注文者」でも、「派遣先B社」の指揮命令はをうけて働いている
派遣社員としてはたらく方も、このことを理解しておきましょう。
「二重派遣」が法律で禁止される理由と罰則
次に、「二重派遣」違反は労働者派遣法違反になるのか、罰則も紹介します。
「二重派遣」が法律で禁止される理由:雇用関係・責任があいまいになる など
「二重派遣」が禁止される理由としては、次のことが挙げられます。
- 雇用関係が曖昧になる(誰が雇用主かわからなくなる)ことで、社会・雇用保険の適用や雇用の保障を誰が行うのかが不明になる
- スタッフに労災が生じた場合の責任が曖昧になる
- 利益(手数料)が二重に取られるため、派遣社員の給料が不当に下がってしまう
結果として損をするのは、実際にはたらく派遣社員です。
もし「二重派遣」にあったらすぐに、派遣会社や次項で紹介する機関に相談してください。
罰則:労働者派遣法ではなく職業安定法違反となり刑罰も!
派遣における違反というと「労働者派遣法違反」かと思われがちですが、「二重派遣」については職業安定法44条違反となります。
- 職業安定法44条(労働者供給事業の禁止)
何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。 - 罰則:1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
上記のとおり刑罰もありえます。
「二重派遣」はそれほど重い罪だということを、理解してください。
「二重派遣」で罰則をうけるのは派遣した・受け入れた企業の両方
「二重派遣」で罰則をうけるのは、「違法に派遣した企業」だけではありません。
社員を受け入れた「派遣先の企業」にも罰則があります。
つまり前述の下図でいえば、「派遣先B社」だけでなく「注文者」まで罰則があるということ。
もしかすると、派遣先(「注文者」)としては「知らなかった、てっきりB社の社員かと思っていた」との言い分があるかもしれません。
ですが、「他社の社員を受け入れる」ということは、それほど重大ということです。
「二重派遣」があったときの相談先
記事の最後に、「二重派遣」があったときの相談先をご紹介します。
まずは派遣会社へ報告、解決しなければ労働局へ
派遣先で「二重派遣」があったときの相談先は、まずは派遣会社です。
指示された会社に行ったところ、別の会社に行くように言われました。
と、派遣会社の担当営業に報告してください。
できれば、派遣先から「今日はこの会社に行って」と言われた時点で報告しましょう。別の会社でケガなどすると、いろいろモメて面倒です。
もし、派遣会社が「二重派遣」であることを知っていたなら”労働局”に相談しましょう。
次の書類やメールなどを持参すると、証拠になり、話がしやすくなります。
- 就業条件明示書など、本来の就業場所などがわかる書類
- 別の会社ではたらくように指示されたことがわかる書類・メール
なお、派遣会社の「派遣元責任者」には、派遣社員からの苦情処理を受ける義務があります。
「苦情の申出を受けたこと」を理由として「解雇その他不利益な取扱いをすること」は、厚生労働省の指針により禁止されています。
安心して相談してください。
なお、”労働局”の連絡先については、こちらの記事でご紹介しています。
記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する「労働局」や「一般社団法人ボイス」へ相談してみてください。
まとめ:「二重派遣」の違法性を知り、あったときはすぐに相談を
この記事では、「二重派遣」について、出向での注意点や禁止される理由、罰則、相談先までわかりやすく解説してきました。
ぜひ記事を参考にその違法性を知り、「二重派遣」にあったときはすぐに相談をしてください。
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参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 飯野たから・著『「非正規」六法』自由国民社