派遣社員として働いていて、
都道府県によって「最低賃金」が違うって聞いたけど、派遣元と派遣先が別の県にあるときは、どちらが適用されるの?
という疑問をお持ちの方はいませんか?
「雇用元(派遣会社)」と「働き先(派遣先企業)」が違う、派遣社員ならではの疑問ですよね。
そこでこの記事では、派遣社員の「最低賃金」は派遣元・派遣先どちらの地域が適用されるのか、給料が最低賃金以下だったときの対応方法、「最低賃金制度」の基本情報、「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の違い、2021年改定の最低賃金額までご紹介します。
「自分の時給は、最低賃金以下かも…」と思ったら、ぜひご覧ください。
◆「派遣社員についての情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「派遣社員とは?わかりやすく解説」
派遣社員の「最低賃金」は派遣元・派遣先どちらの地域が適用される?
まずは、派遣社員の「最低賃金」は派遣元・派遣先どちらの地域が適用されるのか、確認しましょう。
派遣社員には派遣先の最低賃金が適用される
派遣元と派遣先がべつの都道府県にある場合、派遣先の最低賃金が適用されます。
つまり「どの都道府県で働いているか?」が重要です。
たとえば下図のように、埼玉県や千葉県の派遣会社に登録している場合。
派遣先が東京都であれば、東京都の「最低賃金」が適用されます。
また、「特定(産業別)最低賃金」(くわしくは後述)でも、同じく「派遣先の最低賃金」が適用されます。
もし派遣会社から、
はたらき先は東京だけど、うちの会社は千葉にあるから、「最低賃金」は千葉の925円ね…。
なんて言われたら、それは最低賃金法違反です。
記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する”労働局”などに相談してみてください。
「最低賃金」は派遣元・派遣社員どちらが受けとる金額?
次に、「最低賃金」は派遣元(派遣会社)と派遣社員どちらが受けとる金額なのかを確認します。
派遣社員の受けとる金額が「最低賃金」以上でなければならない
派遣社員は、派遣先から直接、給料をもらうわけではありません。
派遣先が派遣元(派遣会社)に「派遣料金」を支払い、派遣元はマージンを差し引いたうえで、派遣社員に「給料」が支払われます。
それでは「最低賃金」とは、派遣元と派遣社員の、どちらが受けとる金額になるのでしょうか?
答えは、「派遣社員の受けとる金額が、最低賃金以上でなければならない」です。
派遣会社からの給料が「最低賃金」以上になっているかをよく確認しましょう。
ちなみに、2012年の労働者派遣法改正により、各派遣会社はマージン率を公表しなくてはならなくなりました。
たとえば、リクルートスタッフィング 仙台事業所での、マージン率などは次のとおりです(もとデータはこちら)。
- マージン率:28.5%
- 労働者派遣に関する料金の額の平均額 (1日8時間あたりの額):13,900円
- 派遣労働者の賃金の額の平均額 (1日8時間あたりの額):9,944円
自分が利用する派遣会社のマージン率も、一度調べてみるといいですよ。すべての派遣会社ではありませんが、ウェブサイトで確認できるところもあります。
自分の給料が「最低賃金」以下だったときの対応方法
次に、自分の給料が「最低賃金」以下だったときの対応方法をご紹介します。
[対応方法①]まずは労働条件通知書などで賃金を確認
給料を受け取って、計算してみたところ、最低賃金を下回っていた…。
このときまずは、働く前に派遣会社から出されたはずの「労働条件通知書」などで賃金を確認しましょう。
賃金がすでに「最低賃金」を下回っているなら、次項の労働局に相談してください。
ですが、通知書に記載された賃金は「最低賃金」以上だけど、受け取った給料が「最低賃金」以下となっているなら、派遣会社の給料計算がまちがっている可能性があります。
派遣会社の担当営業に、通知書と給与明細を見せて、「給料の金額がまちがっているようです」と確認しましょう。
特に働きはじめでは、担当者の入力間違いということも起こります。
◆「最低賃金の計算方法」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「ちゃんと上回ってる?最低賃金の計算方法を紹介」
[対応方法②]通知書に記載の賃金が「最低賃金」以下なら労働局へ
「労働条件通知書」に記載された賃金が「最低賃金」を下回っているなら、労働局へ相談しましょう。
労働局とは、厚生労働省の管轄にあり、労働者の相談に応じてくれる公的機関です。
ただ、「公的機関に相談しづらい…」というときには、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する「一般社団法人ボイス」へ相談してみてください。
最低賃金制度とは?地域別最低賃金と特定(産業別)最低賃金も解説
次に、最低賃金制度とはどのようなものか、地域別最低賃金と特定(産業別)最低賃金も解説します。
最低賃金制度とは
最低賃金制度とは、会社側が社員に支払う賃金(給料)を、国が決めた「賃金の最低基準(最低賃金)」以上にしなければならないとする制度です。
制度は、最低賃金法にもとづき運用され、都道府県ごとに「時給に換算した最低額」が決められています。
たとえ会社側と社員で「時給500円で合意」したとしても、最低賃金法によってその約束は無効になり、「最低賃金額で合意した」ものとされます。
そのため北海道であれば、会社側は「差額の361円」を支払わなくてはなりません。
「最低賃金」には「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の2種類があり、くわしくは次項でご紹介します。
なお、「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の両方が同時に適用される場合には、会社側は高い方の最低賃金額以上の賃金の支払いを行うことが必要です。
「最低賃金」以上を支払わなかった場合、会社側には下記の罰則があります。
- 「地域別最低賃金」以上を支払わない場合:50万円以下の罰金(最低賃金法4条違反)
- 「特定(産業別)最低賃金」以上を支払わない場合:30万円以下の罰金(労働基準法24条1項違反)
「最低賃金制度」を正確に知りたいときには、こちら↓の厚生労働省のサイトをご覧ください。
地域別最低賃金とは、産業・職種にかかわりなく都道府県ごとに設定される最低賃金
「地域別最低賃金」とは、産業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場(会社や工場など)ではたらく、すべての労働者とその使用者に適用される「最低賃金」です。
各都道府県に1つずつあり、全部で47件の「地域別最低賃金」が、国によって決められています。
特定(産業別)最低賃金とは、特定の産業について設定されている最低賃金
「特定(産業別)最低賃金」とは、特定の産業について設定されている「最低賃金」です。
都道府県ごとに、鉄鋼業や自動車小売業など特定の「業種」が決められ、それぞれの「最低賃金」が設定されています。
2020年4月時点では、全国で228件の「特定(産業別)最低賃金」が決まっています。
各都道府県の「特定(産業別)最低賃金」を知りたいときは、こちら↓からどうぞ。
最低賃金は正社員・パート・アルバイトなどすべての労働者に適用
「最低賃金」が適用されるのは、それぞれ次の労働者です。
「地域別最低賃金」については、正社員だけでなく、パート・アルバイトにも適用されます。
もし最低賃金以下だったら、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する”労働局”などに相談してみてください。
なお、以下のような方については、会社側が労働局に届け出ることで、個別に「最低賃金の減額の特例」を受けることができます。
- 精神または身体の障害により、著しく労働能力の低い方
- 試用期間中の方
- 基礎的な技能等を内容とする「認定職業訓練」を受けている方のうち、厚生労働省令で定める方
- 軽易な業務に従事する方
- 断続的労働に従事する方
【2021年改定版】全都道府県の「最低賃金」金額まとめ
記事の最後に、全都道府県の「最低賃金」金額をまとめてご紹介します。
「最低賃金」は毎年10月1日をメドに改定され、2021年改定の「地域別最低賃金」は、下表のとおりです。
都道府県 | 最低賃金時間額 | 発効年月日 |
---|---|---|
北海道 | 889円 | 令和3.10.01 |
東北 | ||
青森県 | 822円 | 令和3.10.06 |
岩手県 | 821円 | 令和3.10.02 |
宮城県 | 853円 | 令和3.10.01 |
秋田県 | 822円 | 令和3.10.01 |
山形県 | 822円 | 令和3.10.02 |
福島県 | 828円 | 令和3.10.01 |
関東 | ||
茨城県 | 879円 | 令和3.10.01 |
栃木県 | 882円 | 令和3.10.01 |
群馬県 | 865円 | 令和3.10.02 |
埼玉県 | 956円 | 令和3.10.01 |
千葉県 | 953円 | 令和3.10.01 |
東京都 | 1,041円 | 令和3.10.01 |
神奈川県 | 1,040円 | 令和3.10.01 |
北陸 | ||
富山県 | 877円 | 令和3.10.01 |
石川県 | 861円 | 令和3.10.07 |
福井県 | 858円 | 令和3.10.01 |
甲信越 | ||
新潟県 | 859円 | 令和3.10.01 |
山梨県 | 866円 | 令和3.10.01 |
長野県 | 877円 | 令和3.10.01 |
東海 | ||
岐阜県 | 880円 | 令和3.10.01 |
静岡県 | 913円 | 令和3.10.02 |
愛知県 | 955円 | 令和3.10.01 |
三重県 | 902円 | 令和3.10.01 |
関西 | ||
滋賀県 | 896円 | 令和3.10.01 |
京都府 | 937円 | 令和3.10.01 |
大阪府 | 992円 | 令和3.10.01 |
兵庫県 | 928円 | 令和3.10.01 |
奈良県 | 866円 | 令和3.10.01 |
和歌山県 | 859円 | 令和3.10.01 |
中四国 | ||
鳥取県 | 821円 | 令和3.10.06 |
島根県 | 824円 | 令和3.10.02 |
岡山県 | 862円 | 令和3.10.02 |
広島県 | 899円 | 令和3.10.01 |
山口県 | 857円 | 令和3.10.01 |
徳島県 | 824円 | 令和3.10.01 |
香川県 | 848円 | 令和3.10.01 |
愛媛県 | 821円 | 令和3.10.01 |
高知県 | 820円 | 令和3.10.02 |
九州 | ||
福岡県 | 870円 | 令和3.10.01 |
佐賀県 | 821円 | 令和3.10.06 |
長崎県 | 821円 | 令和3.10.02 |
熊本県 | 821円 | 令和3.10.01 |
大分県 | 822円 | 令和3.10.06 |
宮崎県 | 821円 | 令和3.10.06 |
鹿児島県 | 821円 | 令和3.10.02 |
沖縄 | ||
沖縄県 | 820円 | 令和3.10.08 |
なお、表中の各都道府県名をクリックすると、厚生労働省ウェブサイトでその地域の「特定(産業別)最低賃金」も確認できますので、利用してみてください。
まとめ:派遣では派遣先での最低賃金をよく確認しましょう
この記事では、派遣社員の「最低賃金」は派遣元・派遣先どちらの地域が適用されるのか、給料が最低賃金以下だったときの対応方法、「最低賃金制度」の基本情報、「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の違い、2021年改定の最低賃金額までご紹介しました。
ぜひ記事を参考に、派遣では「派遣先での最低賃金」をよく確認し、違反しているようなら記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する「労働局」や「一般社団法人ボイス」へ相談してみてください。
◆「派遣社員についての情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
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参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 佐々木亮・著『武器としての労働法』KADOKAWA