「派遣社員ではたらいてみようかな…」と思って調べていて、
派遣には「常用型派遣」があるらしいけれど、どういうものなの?
という疑問をお持ちの方はいませんか?
「派遣社員」とひとくくりにしがちですが、実は大きく分けて「常用型派遣」と「登録型派遣」の2形態があり、まったく違う働き方なんです。
そこでこの記事では、「常用型派遣」とはどのよう仕組みか、「無期雇用派遣」や「登録型派遣」との違い、メリット・デメリットまでご紹介します。
「派遣社員ではたらきたいので、その仕組をよく知りたい!」というときは、ぜひご覧ください。
◆「派遣社員についての情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「派遣社員とは?わかりやすく解説」
「常用型派遣」とは?待機期間と3年ルールも解説
まずは「常用型派遣」とはどのような働き方か、待機期間と3年ルールについても解説します。
常用型派遣とは、派遣会社と常用契約を結ぶ労働者が派遣先で仕事をする派遣の形態
「常用型派遣」とは、派遣会社と常に「雇用(労働)契約」を結ぶ労働者が、「派遣会社の社員」として派遣先で仕事をする派遣の形態です。
常時、派遣会社との「雇用契約」が結ばれているため、ひとつの派遣先での仕事が終り次の仕事まで期間(待機期間)があっても、その期間も給料がもらえます。
「常用型派遣(無期雇用派遣)」を図で表すと、下図のとおり。
専門性をもつ社員を「常用型派遣」とするケースが多く、情報通信業や製造業への派遣がよく行われます。
また、「無期雇用契約」であるため、社会保険(健康・厚生年金・介護保険)や労働保険(雇用・労災保険)に加入しやすいとも言えます。
(「登録型派遣」では、派遣期間などによって加入できないことも)
◆派遣社員の「健康保険の加入条件」については、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「派遣社員は健康保険に加入できる?」
「常用型派遣」での待機期間の過ごし方と給料の支払い
待機期間とは、ひとつの派遣先での仕事が終了し、次の派遣先が見つかるまでの期間です。
「常用型派遣」での待機期間の過ごし方は、おもに次のようになります。
- 派遣元(派遣会社)で仕事をする
- 研修を行う
- 上記1・2が行えない場合、自宅待機による休業を行う
上記1・2では、通常通りの給料が支払われますが、上記3の休業では「休業手当」が支払われます。
◆「休業手当」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「休業補償と休業手当の違いとは?」
「常用型派遣」には3年ルールの適用ナシ
「常用型派遣」には3年ルールの適用はありません。
3年ルールとは、同じ事業所で3年を超えて働くことができないという期間制限ルールで、「登録型派遣」のみ適用されます。
2015年(平成27年)の派遣法改正によって設定されました。
下図のように、一定の手続きを取ることで、3年を超えて働くことは可能。
ただし別の「課」などに異動しなくてはなりません。
「常用型派遣」と「無期雇用派遣」・「登録型派遣」との違い
次に、「常用型派遣」と「無期雇用派遣」・「登録型派遣」などとの違いをご紹介します。
「常用型派遣」と「無期雇用派遣」の違い
「無期雇用派遣」とは、2015年の労働者派遣法改正によって誕生した派遣の形態です。
もともとは、2013年の労働契約法改正によって「有期雇用契約」が5年を超えると、「無期労働契約」に転換できるようになったことがきっかけ(”無期転換ルール”とよばれ、くわしくはこちら)。
このルールを派遣社員にもあてはめ、「無期労働契約」に転換した派遣が「無期雇用派遣」となります。
つまり「無期雇用派遣」とは、「常用型派遣」の一形態。
現在は「常用型派遣」と「無期雇用派遣」は、ほぼ同義語として扱われています。
「常用型派遣」と「登録型派遣」の違い
「登録型派遣」とは、派遣会社に登録しているスタッフ(労働者)が希望にあった派遣先を選び、その派遣先ではたらくときだけ派遣元と「雇用契約」をむすぶという派遣の形態です。
「一般派遣」ともよばれ、世間で認知されている「いわゆる派遣社員」というのは、この「登録型派遣」を指すことがほとんど。
「常用型派遣」と「登録型派遣」との大きな違いは、「雇用契約がつねにあるかどうか」といえます。
・常用型派遣:無期契約(派遣先の仕事がないときでも、雇用契約が続いている)
・登録型派遣:有期契約(派遣先の仕事があるときだけ、雇用契約が発生する)
「登録型派遣」では、派遣先での仕事が終了すれば、派遣元との雇用契約(雇用関係)も終了です。
また「登録型派遣」を図で表すと下図のとおり。
「常用型派遣」とくらべると、「派遣元-労働者間」に「登録」が存在するという違いがあります。
2017年データをみると、「登録型派遣」としてはたらく人は95万人で、派遣社員全体の54%。
うち男性39%、女性68%となっており、「常用型」とは逆で女性が多いのも特徴です。
◆「登録型派遣のくわしい特徴やメリット・デメリット」は、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「登録型派遣とは?」
「常用型派遣」と「特定派遣(2018年に廃止)」との違い
「特定派遣」とは、正式には「特定労働者派遣事業」という名称でしたが、労働者派遣法の改正により2018年に廃止された派遣の形態です。
内容としては、「常用雇用労働者だけで派遣事業を行う」ものですので、「常用型派遣の前身」と考えていいでしょう。
以前は、「一般派遣事業(現在でいう「登録型」)」と「特定派遣事業」に分かれ、派遣会社が事業を行うときの申請方法も違っていました。
法改正によって、2018年には派遣事業はすべてが許可制となり、「一般派遣」と「特定派遣」の区切りはなくなって一本化されています。
「紹介予定派遣」は「登録型派遣」の一形態
「紹介予定派遣」とは、「登録型派遣」のひとつで、6ヶ月以内の派遣期間後に派遣先に直接雇用されることを念頭に行われる派遣の形態です。
派遣期間後に、派遣社員と派遣先の両方が同意することで、派遣先で直接雇用となります。
ただし必ず正社員というわけではなく、契約社員というケースもあるため、注意が必要。
「紹介予定派遣」ではたらく人数としては下グラフのようになっており、2018年まで年々減少していることがわかります。
◆「紹介予定派遣のルールやメリット・デメリット」を知りたいときは、こちらの記事をご覧ください。
・記事「紹介予定派遣で直接雇用を断ることはできる?」
「常用型派遣(無期雇用派遣)」ではたらくメリットとデメリット
次に、「登録型派遣」ではたらくメリットとデメリットをご紹介します。
「常用型派遣(無期雇用派遣)」ではたらくメリット
「常用型派遣(無期雇用派遣)」ではたらくメリットとして、次のことが挙げられます。
「雇用・給料が安定している」点が、「常用型派遣(無期雇用派遣)」の最大のメリット。
また、上記3のデータとしては、時給の平均値が次のように違います(厚生労働省「平成29年派遣労働者実態調査の概況」より)。
- 常用型派遣:1,442 円
- 登録型派遣:1,296 円
◆「派遣切り」についてくわしくしりたいときは、こちらの記事をご覧ください。
・記事「派遣切りとは?」
「常用型派遣(無期雇用派遣)」ではたらくデメリット
「常用型派遣(無期雇用派遣)」ではたらくデメリットとしては、次のことが挙げられます。
「登録型派遣」のような「自由さ」がなくなってしまうのが、「常用型派遣(無期雇用派遣)」の最大のデメリットです。
「安定」をとるか、「自由さ」をとるかで、「常用型派遣(無期雇用派遣)」か「登録型派遣」を選んでみましょう。
「常用型派遣」の実態をデータから確認
次に、「常用型派遣」の実態をデータから確認していきます。
「常用型派遣」ではたらく人は81万人で、派遣社員の46%、男性が多い(2017年データ)
少し古いデータですが、2017(平成29)年の厚生労働省の調査結果(1・2)をみると、「常用型派遣」ではたらく人は81万人で、派遣社員 約176万人のうち46%となっています。
前回調査(2012(平成24)年)では52%でしたので、約6ポイント減少しました。
さらに2017年データを男女別で確認すると、次のようになっており、「常用型派遣」では男性が多いことがわかります。
常用型派遣の男女割合(総数 約81万人)
・男性:49万人(61%)
・女性:25万人(31%)
「常用型派遣」の社会保険・雇用保険の加入率は80%以上
「常用型派遣」の社会保険(健康保険・厚生年金保険)・雇用保険の加入率は、以下のように80%以上となっています。
健康保険の加入状況
・加入している:85.8%
・加入していない:9.1%
・加入の有無がわからない:2.5%
厚生年金保険の加入状況
・加入している:84.8%
・加入していない:9.3%
・加入の有無がわからない:3.3%
雇用保険の加入状況
・加入している:87.5%
・加入していない:6.6%
・加入の有無がわからない:3.7%
(厚生労働省「平成29年派遣労働者実態調査の概況」より)
加入していない割合が、「登録型派遣」よりも数ポイント低いのが特徴ですね。常用型のデータは、こちらの記事でご紹介しています。
「常用型派遣」の苦情で多いのは「業務内容」について
「常用型派遣」で苦情を申し出たことがあると回答した人は、常用型派遣全体の16.1%。
その苦情の内容で多いのは、次のとおりです。
苦情の内容(常用型派遣)
・1位:業務内容(33.7%)
・2位:人間関係・いじめ・パワーハラスメント(22.8%)
・3位:賃金(18.9%)
・4位:就業日・就業時間・休憩時間・時間外労働・休暇(11.4%)
(厚生労働省「平成29年派遣労働者実態調査の概況」より)
◆「登録型派遣のデータ」は、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「登録型派遣とは?」
「常用型派遣」の派遣元への要望で多いのは「賃金制度の改善」
「常用型派遣」で派遣元への要望があると回答した人は、常用型派遣全体の49.0%。
その要望の内容で多いのは、次のとおりです。
派遣元への要望の内容(常用型派遣)
・1位:賃金制度を改善してほしい(62.6%)
・2位:継続した仕事を確保してほしい(26.4%)
・3位:派遣先に対して、派遣先での直接雇用に切り替えるよう依頼してほしい(18.2%)
・3位:年次有給休暇を取りやすくしてほしい(18.2%)
(厚生労働省「平成29年派遣労働者実態調査の概況」より)
賞与(ボーナス)がある派遣社員は19.6%、通勤手当があるのは51%
こちらは、「常用型派遣」・「登録型派遣」で分けた調査結果がないので、派遣社員全般となりますが、賞与(ボーナス)がある派遣社員は19.6%、通勤手当があるのは51%でした。
賞与・一時金
・支給・実施がある派遣労働者:19.6%
・支給・実施がない派遣労働者:76.7%
通勤手当
・支給・実施がある派遣労働者:51.0%
・支給・実施がない派遣労働者:45.4%
昇給
・支給・実施がある派遣労働者:15.2%
・支給・実施がない派遣労働者:81.2%
(厚生労働省「平成29年派遣労働者実態調査の概況」より)
「常用型派遣」のおすすめ派遣会社を紹介
記事の最後に、「常用型派遣」のおすすめ派遣会社をご紹介します。
〈おすすめ〉総合大手派遣会社
まずは、全国的な総合大手派遣会社のご紹介です。
登録は無料ですので、検索して希望するお仕事があれば、ぜひ複数の派遣会社に登録してみましょう。
[おすすめ総合大手派遣会社]マイナビキャリレーション
おすすめする常用雇用の派遣会社は「マイナビキャリレーション 」。
「マイナビ転職」や「マイナビAGENT」なども手掛けるマイナビグループの、㈱マイナビワークスが運営するサービスです。
(登録型派遣でのサービスは「マイナビスタッフ」)
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〈おすすめ 番外編〉派遣求人サイト
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まとめ:「常用型派遣」のメリットを理解し、有効に利用しましょう
この記事では、「常用型派遣」とはどのようなものか、「登録型派遣」との違い、メリット・デメリットまでご紹介しました。
ぜひ記事を参考に、「常用型派遣」のメリットを理解し、その良さを有効に利用しましょう。
◆「派遣社員についての情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「派遣社員とは?わかりやすく解説」
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参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 飯野たから・著『「非正規」六法』自由国民社
- 書籍 労働問題研究会・著『働く人のための法律ガイドブック』労働教育センター