パートで働く方で、
パート先から「パートは残業代は出ない」っていわれてるけど…、ホントなの?
このような疑問を持つ方はいませんか?
パートでも残業代は出ます!
ですが、残業代をごまかそうとしたり、労働時間を単位で切り捨てるなど、まちがった対応をしている会社は多いようです。
そこでこの記事では、パートは残業代が出ないのか、会社が出さないときの対応方法、割増の計算方法、労働時間の単位、未払いの会社への罰則までご紹介していきます。
「残業代計算の正しいルールを知りたい」というときは、ぜひご覧ください。
◆「パート社員のルール・情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「パート社員とは?残業代、雇止めなどのルールも解説」
◆次の会社を探したいときには、こちらの記事が参考になります。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
・記事「派遣社員になりたいとき」
パートは残業代が出ない?労働基準法での考え方
まずは、パートは残業代が出ないのは、ホントかどうか。
そしてパートの残業代と、「労働基準法」の関係をご紹介します。
パートも割増の残業代が出る
結論としては、「パートも残業をすれば、割増の残業代が出る」です。
なぜ出るのかといえば、残業代のルールは「労働基準法」で次のように決められているから。
そして「労働基準法」の対象者に、パートもふくまれるからです。
1日8時間、週40時間を「法定労働時間」とし、その時間を超えてはたらいた(時間外労働)ときは、25%以上の割増賃金をはらうこと
ちなみに、労働基準法はあくまで「最低基準」をきめているだけですので、会社が好意で「50%の割増賃金をはらう!」といっても、何の問題もありません。
労働基準法はパートを含めた全労働者に適用される
パートで働いている人のなかには、
でも「労働基準法」って、「正社員のための法律」なんでしょ…
と思っている人もいるようですが、実は違います。
「労働基準法」の対象者は「すべての労働者」。
「労働者」とは、雇用形態に関係なく、正社員のほかパート・アルバイト・契約社員・派遣社員など、あらゆる従業員に適用されます。
そのため「労働基準法」で決めた次のことは、パートにも与えられるんです。
- 年次有給休暇
- 休日
- 休日出勤代
- 休憩時間
「えっ!パートでも有給休暇ってもらえるの!」と思った方は、記事「パートは有給休暇がもらえない?」をぜひご覧ください。
その一方で、下記については「労働基準法など、法律で決まりがない」ため、「出す・出さない、誰に出す、いくら出す」を、会社が自由に決められます。
- 交通費
- 賞与(ボーナス)
- 退職金
会社のいうことが、すべて正しいわけではありません。
「知らない、まちがっている」ことも。
「ホント?」と思ったら、調べてみましょう
◆「労働基準法」については、こちらの記事でわかりやすくご紹介しています。
・記事「労働基準法をわかりやすく解説」
会社が残業代を支払わないときの対応方法
次に、会社が残業代を支払わないときの対応方法をご紹介します。
[対応方法①]まずは会社に確認
会社が残業代を支払わないとき、まずは会社に「給料の支給額にまちがいがないか」を確認しましょう。
特に働きはじめなどでは、担当者の給与計算ミスということも起こります。
このときは念のため、上司などとのやり取りを、スマホやICレコーダーなどで録音しておきましょう。
もし会社が「パートだから残業代は出ないよ」などと言っているなら、次項の公的機関に相談してください。
[対応方法②]会社に相談しても解決しないときは労働局へ
会社に相談しても解決しないときは、労働局へ相談しましょう。
もし上司や人事担当者とやり取りした録音があれば、証拠として持参してください。
ちなみに労働局とは、各都道府県に設置された、厚生労働省の出先機関。
労働者のさまざまな相談にのってくれ、場合によっては会社への指導なども行ないます。
ただ、「公的機関に相談しづらい…」というときには、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する「一般社団法人ボイス」へ相談してみてください。
割増残業代の計算方法と具体例
次に、パートの残業代の、割増の計算方法と具体例をご紹介します。
割増残業代の計算方法
割増残業代の計算方法は下記のとおり。
割増残業代 = 「法定労働時間」を超えて働いた時間 × 時給 × 割増率(1.25)
なお「働いた時間(労働時間)」には、「休憩時間」は含まれませんので注意してください。
働いた時間と、拘束時間(パート先に出勤してから退勤するまでの時間)は別に考えます。
これは「ノーワーク・ノーペイの原則」(民法624条)によるもので、「働いた分だけ払う、働かない分は払わない」というルールです。
ただし後述するとおり、着替えや朝礼、休憩時間に来客対応した場合などは、「労働時間」に含まれます。
このへんの「〇〇時間」はまぎらわしいので、しっかり区別しておぼえておきましょう
残業代計算の注意点:「法定内残業」と「時間外労働」
前項でご紹介したとおり、割増残業代が発生するのは「法定労働時間(1日8時間、週40時間)」を超えた時間です。
こう聞いて、
いつも4時間勤務の私が、5時間はたらいたとき。
残業した1時間は、割増になるの?
というギモンをもつ方もいるかと思います。
結論としては「会社には、割増する義務はない」です。
(ただし、会社が割増したいならしてもいい)
このように「いつもの労働時間からすれば”残業”だけれど、”法定労働時間”は超えない」ような残業は「法定内残業」とよばれます。
「法定内残業」の場合は、会社には賃金を割増にする義務はありません。
そして「法定労働時間」を超えてはたらくことは「時間外労働」です。
「時間外労働」では、賃金の割増が必要となります。
たとえば、いつも9時~17時(休憩1時間)ではたらいており、19時まで残業した場合
・17時~18時:法定内残業なので割増にならない
・18時~19時:時間外労働なので割増になる
割増残業代の計算の具体例
たとえば、次のような具体例をみていきます。
- 時給:900円
- 拘束時間:朝8時~20時(12時間)
- 休憩時間:12時~13時(1時間)
このとき割増残業代は、次のように計算します。
手順①:労働時間 = 拘束時間(12時間)− 休憩時間(1時間) = 11時間
手順②:「法定労働時間」を超えた時間 = 労働時間(11時間)− 法定労働時間(8時間)= 2時間
手順③:割増残業代 = 「法定労働時間」を超えた時間(2時間)×時給(900円)×割増率(1.25)
= 2時間 × 900円 × 1.25
= 2,250円
残業代のほかで賃金が「割増」になるケース
残業以外にも、次のようなときには割増賃金が発生します。
(すべて「労働基準法」できめられています)
(※:中小企業では2023年4月から、このルールがはじまります)
残業代は何分から出る?15分単位?
次に、残業代は何分から出るのか、15分単位でしか出ないのか確認します。
労働時間の端数切捨てはできない
会社のなかには、タイムカードの時間をそのまま「労働時間」とはせず、15分単位や30分単位で計算し、端数を切り捨るところもあります。
ですが厚生労働省が公表するルールでは、「本来は1分単位だけれど、15分・30分などの単位は自由。そして切り上げることはいいが、切り捨てはダメ」とされています。
これは「切り捨てられた時間分の給料が、未払いとなってしまう」ため。
ただし「1か月の通算で30分未満の端数を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げること」は、認められています。
残業代未払いの会社への罰則は?あとから請求できる?
次に、残業代未払いの会社への罰則はあるのか、あとから残業代を請求できるのかを見ていきましょう。
残業代未払いの会社には6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が
残業代を支払わない「未払い」の会社に対しては、次の罰則があります。
「サービス残業」というと、なんとなく、
ちょっとくらいならしょうがないか…、お世話になってるパート先だし…
と思ってしまうかもしれません。
ですが「残業代未払い」であり「労働基準法37条に違反し、懲役もありえる行為」です。
残業代未払いは、それほど重大な違反です。会社にしっかり請求しましょう。
もらえなかった残業代は過去2年分まで請求できる
会社側が、
サービス残業でよろしくね…
といって、残業代を出してくれなかった…。
こんなときは、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する「労働局」や「一般社団法人ボイス」へ相談してみてください。
給与明細やタイムカードの写しなどの「証拠」で確認できれば、過去2年分までさかのぼって請求できます。
(残業代のほか、休日出勤手当や深夜手当もおなじく請求可能)
その他の残業ルール
記事の最後に、残業代についてのその他のルールをご紹介します。
[残業のルール①]会社側の指示が必要
残業は、社員が勝手にするものではなく、必要性がある「会社側の指示」によって行うものです。
そのため、会社の指示をうけていない社員が、「残業代を稼ぎたいから」といって残業した場合、会社は残業代をはらう必要はありません。
こういった原則があるため、会社によっては「残業をする場合は、事前に上司の許可を得ること」というルールをきめているところもあります。
[残業のルール②]着替えや朝礼の時間も「労働時間」になる
パート先で「制服への着替え・朝礼が終わってから、タイムカードを押すように」っていわれるけど、朝礼は仕事にふくまれないの?
じつは労働基準法では、「労働時間」についての定義(明確なルール)がきめられていません。
そのため、このような↑あいまいな部分について、これまで多くの裁判で争われてきました。
結果的に、次のような時間は「会社側の指揮命令下におかれている」ものであり、「労働時間にふくまれる」と厚生労働省でも指導しています。
[残業のルール③]休憩時間に作業をすれば「労働時間」になる
たとえば、お昼の休憩時間に「電話当番」や「来客応対」をさせる。
上司は、
休みながらでいいから、来客や電話があったときだけ、対応してね
というかもしれませんは、このような時間は「待機時間」とされ、休憩時間になりません。
この時間は「労働時間」とみなされるため、ホントウならば会社はべつに休憩をあたえることが必要です。
このお昼休憩(待機時間)が「1時間」であれば、実質的な労働時間(はたらいた時間)は、プラス1時間で計算してください。
まとめ:パートも残業代は出ます!計算方法を知って会社に対抗を
この記事では、パートは残業代が出ないのか、会社が出さないときの対応方法、割増の計算方法、労働時間の単位、未払いの会社への罰則までご紹介してきました。
パートも残業代は出ます!
ぜひ記事を参考に、計算方法を知って、会社に対抗していきましょう。
◆「パート社員のルール・情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「パート社員とは?残業代、雇止めなどのルールも解説」
◆次の会社を探したいときには、こちらの記事が参考になります。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
・記事「派遣社員になりたいとき」
参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 小島彰・監修『労働基準法と労働条件の基本がわかる事典』三修社
- 書籍 林智之・監修『最新 労働法実務マニュアル』三修社