社員の健康づくりを目的に、運動会を行う会社がまた増えているようです。
そんななかで、
日曜に会社の運動会があったんだけど、転んでケガをして…
これって労災になるの?
こんなギモンをお持ちの方はいませんか?
会社の運動会だから「労災」のようにも思えるし、でも「業務外」だし…と、判断に困りますね。
そこでこの記事では、会社の運動会でケガをしたら労災なのかどうか、そして労災か判断する2つの基準、起こったときの対応方法(病院の受診と申請方法)まで解説します。
「来週運動会があるから、労災のことを知っておきたい」というときは、ぜひご覧ください。
◆「労災保険とその内容」をくわしく知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「労災保険とは?わかりやすく解説もわかりやすく解説」
会社の運動会でケガをしたら労災なの?
「会社が開催した運動会に参加したら、転んでケガをしてしまった…」このときは労災になるのか確認しましょう。
「業務遂行性」が認められれば、会社の運動会のケガも労災(業務災害)に
結論からいえば、「業務遂行性が認められれば、会社の運動会でも労災(業務災害)になる可能性が高い」です。
(「業務遂行性」についてくわしくは次項でご紹介)
今回の「会社の運動会でのケガ」で考えると、次の3つをすべて満たすなら「業務遂行性が認められる」ため、労災(業務災害)と認定される可能性が高いといえます。
- 健康保険組合や労働組合ではなく、会社が主催している
- 参加を強制している
- 不参加者は欠勤と扱われる
なぜなら、上記の条件がそろうということは、「会社での仕事と同じ」とみなさるため。
そして「会社での仕事と同じ」とされる運動会でケガをしたのですから、「業務起因性」(これもくわしくは次項)も認められます。
ただし、同じ「会社の運動会」でも、任意参加であれば「業務遂行性がない」ため、労災(業務災害)とは認められない可能性が高いです。
ケガが労災(業務災害)になるか判断する2つの基準
ケガが労災(業務災害)になるか判断する2つの基準をご紹介します。
労災(業務災害)か判断するのは「業務遂行性」と「業務起因性」
ケガが労災(業務災害)になるかを判断するのは、次の2つの基準となります。
この2つとも満たす場合に、労働基準監督署にて労災(業務災害)と判断される可能性が高いです。
労災かどうかを判断するのは、会社ではなく、労働基準監督署となります。
カンタンにいえば、業務上の災害(業務遂行性がある)であって、ケガの原因となる事故が仕事によって生じたもの(業務起因性がある)であれば労災です。
◆「労災(業務災害)」や「業務遂行性・業務起因性」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「労災保険の業務災害とは?」
労災が起こったときの対応手順(病院の受診と申請方法)
次に、労災が起こったときの対応手順として、「病院の受診と申請方法」をご紹介します。
ここでは、「労災病院や労災指定の医療機関」で受診するかどうかで、手順は大きく変わります。
- 対応手順1:労災病院や労災指定の医療機関での受診
- 対応手順2:労災病院や労災指定の医療機関以外での受診
そこでまずは、こちら↓で近くに指定病院があるか検索して、それぞれの対応手順を確認してください。
〈対応手順1〉労災病院や労災指定の医療機関で受診した場合
まずは、労災病院や労災指定の医療機関で受診した場合です。
このときの対応手順は次のとおりです。
- 労災指定医療機関などで受診する
- 会社から「療養の給付請求書(様式第5号)」に証明をもらう
- 受診した医療機関に「療養の給付請求書(様式第5号)」を提出する
- (病院が労働基準監督署に請求書を提出)
- 労働基準監督署で調査を行う
- (病院に治療費が支払われる)
ケガをした本人が行うのは、上記3まで。
ただし場合によっては、上記5の調査に会社や社員が協力することもあります。
なお、健康保険ではなく労災保険での診察になるため、病院で保険証を提示する必要はありません。
その代わり、病院の初診時に「労災です」と伝えましょう。
〈対応手順2〉労災病院や労災指定の医療機関以外で受診した場合
次に、労災病院や労災指定の医療機関以外で受診した場合です。
このときの対応手順は次のとおりです。
- 労災指定医療機関以外で受診する
- 医療機関に治療費を全額支払う
- 医療機関と会社から「療養の給付請求書(様式第7号)」に証明をもらう
- 労働基準監督署に「療養の給付請求書(様式第5号)」を提出する
- 労働基準監督署で調査を行う
- 本人の振込口座に治療費が支払われる
こちらの場合でもやはり、病院で保険証を提示する必要はありません。
なお、医療機関で健康保険を使ってしまった場合は、「労災保険への切り替えができるか?」と、医療機関に確認してください。
- 切り替えができる:労災保険から健康保険に治療費が支払われる
- 切り替えができない:医療費をいったん全額健保組合に支払ったうえで、労災保険への請求を行なう
切り替えができないと、手続きがけっこう面倒です。
◆「労災なのに健康保険を使ったときの対応」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「労災なのに健康保険を使ってしまったらどうなる?」
労災で休業したときは「休業(補償)給付」が支給されます
なお、労災で会社を休業した場合は「休業(補償)給付」が支給されます。
「休業(補償)給付」とは、「仕事や通勤が原因でケガをしたり病気になるなど、労災(労働災害)により休職(仕事を休むこと)したため、給料をもらえない場合に、労災保険から受ける給付金」のことです。
休業4日目から”給付基礎日額(平均賃金)の8割”が、休業した日数分だけ支給されます。
ちなみに、休業当初の3日間については、業務災害か通勤災害かで支給されるルールが変わります。
- 業務災害の場合:会社が「休業補償(1日につき平均賃金の60%)」を行う義務がある
- 通勤災害の場合:会社に「休業補償」を行う義務はない
◆「休業補償」と「業務災害・通勤災害」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「休業補償と休業手当の違いとは?」
・記事「労働災害の業務災害とは?」
・記事「労働災害の通勤災害とは?」
労災では健康保険は使えません!会社による「労災かくし」で犯罪です
労災では労災保険を使わなければならず、健康保険は使えません!
もし使ってしまった場合は、前述のとおり、労災保険に切り替える必要があります。
そして労災なのに、会社から、
まあ、今回は健康保険で治療してよ…
といわれたら、それは「労災かくし」で犯罪です。
会社は労災で社員が休業・死亡した場合、労働基準監督署に報告をしなければなりません。
すると監督署の指導をうけたり、労災保険の保険料が上がったりなど、メンドウなことに。
そのため「業務上のケガ」であっても社員に健康保険を使わせて、労災をかくそうとする会社が出てきます。
社員には「労災保険ならされるはずの補償が、健康保険ではされない」などのデメリットも。
会社が「労災かくし」をするようなら、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する「労働局」に相談してみてください。
まとめ:会社の運動会でも基準を満たせば労災です
この記事では、会社の運動会でケガをしたら労災なのかどうか、そして労災か判断する2つの基準、起こったときの対応方法(病院の受診と申請方法)まで解説しました。
記事でご紹介したように、会社の運動会でも基準を満たせば労災です。
もし会社が「労災かくし」をするなら、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する「労働局」や「一般社団法人ボイス」へ相談して、損をしない対応をとりましょう。
◆「労災保険とその内容」をくわしく知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「労災保険とは?わかりやすく解説もわかりやすく解説」
〈こちら↓の記事もおすすめです〉
・「会社のことをどこかに相談したい」ときは…会社・仕事の悩みの相談先を紹介
・「次の会社をさがしたい」ときは…失敗しない転職先の探し方・見つけ方!
・「派遣社員ではたらきたい」ときは…「派遣社員になりたい!」ときはどうする?
参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。