派遣社員として働こうとして、
今度、派遣先の「事前面接」があるっていわれたんだけど、問題ないの…?
こんな体験はありませんか?
厚生労働省のデータによれば、2018年に「事前面接」などの「特定目的行為」により指導をうけた件数は100件だったそう。
派遣先による「事前面接」は違法ですが、何だかんだと理由をつけて行う派遣会社・派遣先はまだあるようです。
そこでこの記事では、違法である派遣先による派遣社員の「事前面接」について、罰則や「紹介予定派遣」でのルール、問題のない適法なケースについてもご紹介します。
「派遣社員ではたらくうえで、正しい知識をもっておきたい!」というときは、ぜひご覧ください。
◆「派遣社員についての情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「派遣社員とは?わかりやすく解説」
派遣先による派遣社員の「事前面接」は違法!
まずは、派遣先による派遣社員の「事前面接」が違法である根拠を確認しましょう。
派遣先の「事前面接」は労働者派遣法で禁止されている
派遣会社によっては、「面談」や「派遣現場の下見」という名目で、派遣予定のスタッフ(社員)を派遣先に連れていき、派遣先担当者と面談させることがあります。
そして派遣予定のスタッフ(社員)が「不採用」となることも。
こうした行為は「事前面接」とよばれ、派遣先による派遣社員の「事前面接」は、下記のとおり労働者派遣法によって禁止されています。
労働者派遣法 26条(契約の内容等)第7項
労働者派遣(紹介予定派遣を除く。)の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約の締結に際し、当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない。
また、厚生労働大臣による「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」・「派遣先が講ずべき措置に関する指針」でも、「派遣労働者を特定することを目的とする行為の禁止」として規定されています。
これは「派遣社員の雇用主は派遣会社(派遣元)である」という原則からくる考え方です。
ですから「採用の可否を決めるのも派遣会社」。
ということは、派遣会社が派遣したスタッフがどのような人物でも、派遣先は受け入れなければいけません。
そのため「派遣先による派遣社員の事前面接」は、行ってはいけない行為となるのです。
事前面接のほか「特定することを目的とする行為」も違法行為
派遣業務において禁止となるのは、派遣先による「事前面接」だけではありません。
上記の労働者派遣法26条 第7項にあるとおり「特定することを目的とする行為」が違法行為とされています。
そして禁止される「特定することを目的とする行為」には、具体的には次のような行為がふくまれます。
- 事前面接
- 履歴書などを提出させること
- 若年者に限ること
- 性別を限定すること
- 適性検査を行うこと
前に派遣先から「『面接』だとマズイから、『職場見学』ということで連れてきて」といわれ、断ったことがあります。名称が問題なのではなく、「特定すること」がNGなのだと、理解しましょう。
派遣先が事前面接など「特定することを目的とする行為」をしたときの罰則
次に、派遣先が事前面接など「特定することを目的とする行為」をしたときの罰則をご紹介します。
事前面接などに罰則はないが行政指導を受けることも
派遣先が、事前面接など「特定することを目的とする行為」をしたときの罰則は、残念ながらありません。
これは、前述の労働者派遣法26条 第7項をみるとわかるとおり「努めなければならない」とした「努力義務」だからです。
ですが「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」・「派遣先が講ずべき措置に関する指針」で禁止が規定されていますので、派遣会社・派遣先ともに労働局による行政指導を受けることになります。
実際に、2018年には「特定目的行為」によって100件が指導をうけたとされています(厚生労働省のデータより)。
もし派遣会社が、事前面接をあたり前のように行っているようでしたら、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する”労働局”などに相談してみてください。
派遣社員の「事業所訪問・履歴書送付」が問題のない適法なケース
前項では禁止とご紹介しましたが、すべての「事業所(派遣先)訪問」や「履歴書送付」をしてはいけないわけではありません。
ここでは、問題のない適法な、派遣社員の「事業所(派遣先)訪問」・「履歴書送付」をご紹介します。
[適法なケース1]すでに特定の派遣社員が派遣されることが決定している場合
適法なケースの1つめが、「すでに特定の派遣社員が派遣されることが決定している場合」です。
派遣会社が、
よし!このスタッフさんを○社に派遣しよう!
と決定したら、派遣先に対して「氏名・性別・社会保険の有無」などを通知しなくてはなりません(派遣法35条)。
この通知のあとに、派遣社員を連れて派遣先にて業務の打ち合わせをすることは、適法です。
ただし、この打ち合わせ後に派遣先から、
今日のスタッフさん、どうもイマイチだから、べつのスタッフさんに変更ね…
と連絡するなど、「派遣労働者の特定の余地を生じさせる」ようならば、やはり前項にあてはまるため違法となります。
[適法なケース2]派遣スタッフが判断するために「事業所訪問」を希望する場合
適法なケースの2つめは、「派遣スタッフが判断するために「事業所訪問」を希望する場合」です。
派遣スタッフとしては、派遣会社の担当営業から「こういう職場で、こういう仕事を…」と聞いても、イマイチ判断がつかず、
う~ん、一度派遣先の環境をみてみないと、わからないな…
と思うかもしれません。
こうしたときのために、「派遣スタッフが希望して派遣先を訪問し、就業場所や業務について確認すること」は、許されています。
(もちろん派遣会社の担当営業は同行します)
ただし、これがあるから、
派遣先から事前面接を求められてるんだけど、それは禁止だから、君が「事業所訪問を希望している」ということにして、面談していいよね…。
といってくる派遣会社もあるようです。
(前にスタッフさんに聞きました)
こういった派遣会社は、ほかにも法令違反を行う可能性が高いところですので、べつの派遣会社に移ることをおすすめします。
[適法なケース3]紹介予定派遣では「事前面接」や「履歴書の提出」もOK
最後の適法なケースは、前の2つとは少し違って「紹介予定派遣」の場合です。
「紹介予定派遣」とは、派遣先との直接雇用を前提とした派遣の制度で、「事前面接」や「履歴書の提出」などがOKとされています。
これは「紹介予定派遣」では、「派遣先が派遣社員を、直接雇用する可能性があるため」とされています。
◆「紹介予定派遣」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「紹介予定派遣で直接雇用を断ることはできる?」
まとめ:派遣先による派遣社員の「事前面接」は違法!労働局へ相談を
この記事では、違法とされる派遣先による派遣社員の「事前面接」について、罰則や「紹介予定派遣」でのルール、問題のない適法なケースについてもご紹介しました。
派遣先による派遣社員の「事前面接」は禁止です!
派遣会社がどうしても「事前面接」をやめないときは、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する「労働局」や「一般社団法人ボイス」へ相談してみてください。
◆「派遣社員についての情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
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参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 佐々木亮・著『武器としての労働法』KADOKAWA