会社ではたらいて体調をくずしたとき、
うつ病になって休職しているけど、給料はどうなるんだろう…?
心配でゆっくりしていられない…
こういった心配があるかもしれません。
休職する人もそこまで多くはないため、なかなかわかりづらいですよね。
そこでこの記事では、休職したら給料は出ないのかどうか、さらにうつ病での休職で活用できる手当、休職制度についても解説していきます。
「しっかり休んで体調をもどしたい!」というときには、ぜひご覧ください。
◆「労働基準法とその内容」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「労働基準法とは?労働時間などのルールもわかりやすく解説」
休職したら給料は出ない?
休職したとき、やはり気になるのは「給料が出るのか?出ないのか?」ですよね。
まずは、休職したときの給料について解説します。
原則として休職の期間は給料ナシ、ただし会社による
原則としては、休職の期間は給料は出ません。
これは「ノーワーク・ノーペイの原則(社員がはたらいたら給料を払う、はたらかなければ払わない)」にもとづく考え方です(民法624条)。
ただし「休職」は法律上で義務付けられた制度ではないため、そのルールは会社が決めてかまいません。
そのため会社によっては、給料を支払うところも。
少し古いのですが、2013年に労働政策研究・研修機構が発表したデータによれば、「病気休職期間中に給料を全額支払う」と答えた会社は、「病気休職制度がある会社」全体の7.2%でした。
〈病気休職の期間中の給与支払いがある会社の割合〉
1位:全額支払う(7.2%)
2位:一部支払う(傷病手当金 + 傷病手当付加金)(19.4%)
3位:一部支払う(傷病手当金のみ)(29.2%)
4位:なし(33.5%)
やはり9割以上の会社で、給料が全額は支払われないことがわかります。
休職中に活用できる手当・制度の利用を
休職中は「給料が出ない会社が多い」ことは前項でわかりましたが、それでは生活できず、体調がより悪化してしまいます。
そこで、休職中に活用できる手当・制度を利用しましょう。
とくに有名な制度は、健康保険の「傷病手当金制度」です。
手当・制度について、くわしくは次項でご紹介します。
給料が出ないからといって、あせって回復前に復帰することがないよう、まずは制度をよく確認しましょう
うつ病など「メンタルヘルス不調」での休職中に活用できる手当・制度
次に、うつ病など「メンタルヘルス不調」での休職中に活用できる手当・制度をご紹介します。
[休職中に活用できる手当・制度①]傷病手当金
傷病手当金とは、病気やケガのために会社を休む社員が、会社から給料を支給されない場合に支給される手当で、健康保険の制度です。
次の条件をすべて満たす場合に、傷病手当金が支給されます。
また、支給される傷病手当金の額は以下のとおり。
1日あたりの金額=1日あたりの標準報酬月額 × 1 / 30 × 2 / 3
おおよそ、毎月支給される給料の6割ほどが支給されます。
そして傷病手当金が支給される期間は最長1年6ヶ月。
休職したときは、まずはこの手当を申請するようにしましょう。
なお、くわしいルールや申請方法は、会社が加入する健康保険組合のウェブサイトをご確認ください。
[休職中に活用できる手当・制度②]障害年金
障害年金とは、病気やケガで生活や仕事が制限されるときに受け取れる年金です。
現役世代(年金を支払うほうの世代)でも受け取れることが特徴。
障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があり、次のように異なります。
- 障害基礎年金:国民年金に加入していた場合
- 障害厚生年金:厚生年金に加入していた場合
そして障害年金を受けるには、次の要件をすべて満たすことが必要です。
- 初診日を証明できること(障害の原因となった病気やケガで受診し、初診日を証明できる)
- 障害状態にあること(後述する障害等級1~3級に該当する)
- 一定期間の年金保険料の支払いがあること(保険料を2/3以上支払っている)
また障害の程度によって受けとれる年金額はかわり、以下の等級で表されます。
カラダの障害だけでなく、精神の障害も対象で、うつ病や発達障害も対象にふくまれます。
- 障害等級1級:常時介護が必要
- 障害等級2級:随時介護が必要(日常生活は極めて困難)
- 障害等級3級:労働制限(労働に著しい制限を受ける)
申請は市区町村役所や年金事務所に行ないます。
申請書類など、くわしくはそちらにお問い合わせください。
[休職中に活用できる手当・制度③]自立支援医療制度(精神通院医療)
自立支援医療制度(精神通院医療)とは、病院に通院して精神医療を続ける必要がある場合に、通院医療費の自己負担分を軽減する公費負担医療制度です。
(「精神通院医療」のほかに「更生医療」と「育成医療」もあります)
医療費の自己負担3割が、原則1割に軽減されます。
また、利用者本人の収入や世帯の所得、症状などに応じて「自己負担上限額(月額)」が設定されています。
そして、自立支援医療制度(精神通院医療)の対象となる方はこちら。
対象:精神障害により、通院による治療を続ける必要がある程度の状態の方
・統合失調症
・うつ病、躁うつ病などの気分障害
・PTSDなどのストレス関連障害や、パニック障害などの不安障害 など
申請はお住まいの市区町村役所に行うので、申請書などくわしくはそちらのウェブサイトをご覧ください。
ちなみに僕が住んでいる山形市ではこちら。
番外編:「休職手当」ではなく「休業手当」
Q&Aサイトなどで「休職手当」というコトバをみかけますが、公的にこういった制度はありません。
正確には「休職手当」ではなく「休業手当」です。
そして「休業手当」とは、「会社側の事情で休業して社員を休ませたとき、会社が社員に対して支払わなければいけない手当」のことです。
休職中に活用できる手当・制度とは異なりますが、間違うことのないよう、念のためご紹介しておきます。
◆「休業補償と休業手当の違い」については、こちらの記事でくわしくご紹介しています。
休職とは?その制度について解説
「休職」とは、社員が仕事をすることができない場合に、会社側が社員との労働契約を残したまま、はたらかない許可を与えることです。
なお、似たコトバに「休業」がありますが、こちらは「業務を休むこと」で、より意味合いが広くなります。
つまり「休業」のなかに「休職」がふくまれるということ。
そして「休職」には、大きくわけて次の2つがあり、それぞれ以下のような種類があります。
〈1.社員側の事情による休職〉
①私傷病による休職:プライベートでのことが原因で、病気やケガをした場合
②私事による休職:留学や家庭の事情などの理由ではたらけない場合
〈2.会社側の事情による休職〉
①業務の停止による休職:会社側の事情で操業を停止する場合
②業務災害による休職:仕事によって、病気やケガをした場合
「休職制度」に法律上のルールはナシ
会社によってはさまざまな「休職制度」を設けているところもありますが、じつは法律によって義務付けられたものではありません。
というのも、「休職制度」に法律上のルールはないからです。
「どういった休職制度を、どのようなルールで導入するか」は会社側の自由。
少し古いのですが、2013年に労働政策研究・研修機構が発表したデータによれば、次の休職制度が多くの会社で導入されています。
〈休職制度や慣行がある会社の割合〉
1位:私傷病による休職制度(69.1%)
2位:事故欠勤休職制度(37.4%)
3位:起訴休職制度(20.1%)
4位:自己啓発休職制度(12.5%)
5位:出向休職制度(7.2%)
まとめ:休職中は給料が出ないケースが多数、手当などの活用を
この記事では、休職したら給料は出ないのかどうか、さらにうつ病での休職で活用できる手当、休職制度についても解説してきました。
休職中は給料が出ないケースが多数ですが、手当・制度などが用意されています。
あせって復職しないよう、記事を参考に、手当・制度を活用していきましょう。
◆「労働基準法とその内容」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「労働基準法とは?労働時間などのルールもわかりやすく解説」
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参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 林智之・著『メンタルヘルスの法律問題と手続きマニュアル』三修社