すぐにでも退職したいけど、今伝えるとボーナスが減らされたりするの?
ボーナス(賞与)の支給日を間近に退職を考えていると、支給額がどうなるか気になりますよね。
どうせなら、多くもらって辞めなきゃもったいない。
そこでこの記事では、ボーナス(賞与)支給前に退職を伝えると減額されることがあるのか、減額されないベストなタイミングはいつなのか、ボーナスが出なかったときの対応方法などを解説していきます。
「退職を考えているけれど、ボーナスもしっかり受け取りたい」というときは、ぜひご覧ください。
◆「退職のルール」については、こちらの記事でまとめてご紹介しています。
・記事「退職ルールまとめ」
◆次の会社を探すときは、こちらの記事を参考にどうぞ。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
・記事「派遣社員になりたいとき」
ボーナス前に退職を伝えるのはもったいない?減額されることもある?
まずは、ボーナス前に退職を伝えるのはもったいないのか、減額されることもあるのかを確認しましょう。
ボーナス前に退職意思を伝えると減額されることもある
ボーナス前に会社に退職を伝えると、減額されることもあります。
そして、会社側がこういった手順で減額することは、法的に問題ナシです。
なぜなら「ボーナスの査定方法」については、法律上で決まりがないから。
合理的な内容であれば、「ボーナスに関するルール」は、原則的には会社が独自に決めてよいことになっています。
また、退職の意思を伝えることで「査定が下がる」こともあり得ます。
これは会社側が、ボーナスに対して次のような意義を込めることができるため。
- 過去への報償を与える意義
- 未来への貢献を引き出す意義
就業規則などで、ボーナスの算定ルールとして「未来への貢献度」が含まれているなら、退職の意思を伝えることで、減額される可能性があるということです。
ただし判例ではボーナス(賞与)の減額は20%減まで
ただし、減額できるからといって、
どうせ退職するんだから、「通常時の1割」だけ支給しておけばいいだろ!
ということは許されません。
この点について過去の裁判例(判例)では、「ボーナス(賞与)の減額は20%減まで」とされています。
非退職予定者の17%の金額しか支給しない規定は違法として、非退職予定者の賞与額の 80%の金額の支払いを命じた(ベネッセコーポレーション事件)
いくら就業規則で「減額」について規定していたとしても、減らしすぎはダメです!
もし、ボーナスが20%以上減らされていたなら、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する「労働局」や「一般社団法人ボイス」へ相談してみてください。
支給日前に退職したらボーナス(賞与)はもらえないの?
たとえば6月にボーナスが支給される会社にて、5月末で辞める社員が、
1~5月までの5ヶ月分だけでも、ボーナスを払ってもらいたい!
というのは認められるのでしょうか?
ここでは、「支給日前に退職したらボーナス(賞与)はもらえないのか」を確認しましょう。
ボーナスがもらえないケース:会社に「支給日在籍要件」がある場合
まずボーナスがもらえないケースとしては、「支給日在籍要件」がある会社であれば、支給日前に退職するとボーナス(賞与)はもらえません。
「支給日在籍要件」とは、「支給日に在籍する社員にのみボーナス(賞与)を支給する」というルール。
多くの会社が取り入れており、就業規則などで規定しています。
この「支給日在籍要件」は、判例でも「有効である」と認められています。
ただし、「支給日在籍要件」が認められるためには、就業規則などに要件を記載していることが必要。
社内で何の決まりもないのに、突然、
今回からは、退職日に在籍していないとボーナスを支給しません!
ということは認められません。
支給日前の退職でもボーナス(賞与)がもらえるケース
次に、支給日前の退職でもボーナス(賞与)がもらえるケースは、以下のような場合です。
ケース1:年棒制の場合
年棒制とは、社員の成果や業績に応じて、給料の額を1年単位で決める賃金制度。
その多くは、次のどちらかの支給方法をとっています。
- 年俸額を12等分して、毎月支給する
- 年俸額を16等分にして、夏と冬にボーナスとして2ヶ月分を支給する
そして年俸制では、期間中の減額は原則認められません。
ですから上記2のケースでは、あくまで「期間に応じた差額」が支給され、「退職するための減額」は認められません。
ケース2:就業規則などで「5月末に在籍する社員に支給する」と規定している場合
たとえばボーナスは6月中旬に支給されるものの、就業規則などで「5月末に在籍する社員に支給する」と規定している場合。
5月末の退職ならば、ギリギリですが在籍はしており、「支給日在籍要件」を満たします。
そのためこのケースも、支給日前の退職でもボーナス(賞与)がもらえます。
「会社を辞められない」なら、退職代行サービスという方法も。おすすめは、弁護士法人運営で、未払い金請求や慰謝料請求など各種請求・交渉にも完全対応の退職110番です。
「ボーナスを減額されない」ベストな退職のタイミングは?
次に、「ボーナスを減額されない」ベストな退職のタイミングを確認しましょう。
「ボーナス支給の翌月」に退職の申し出がベスト
「ボーナス支給の翌月」に、退職の申し出をするのが、「ボーナスを減額されない」ベストなタイミングです。
ボーナスが支給されるまでは誰にも悟られないようにし、支給後にはじめて上司に相談しましょう。
また、しっかり引き継ぎを行えば、「ボーナスもらい逃げ」の悪印象も軽減します。
とはいえ、そこまでボーナスの額と退職のタイミングにこだわった結果、入りたい会社の求人が埋まってしまっては本末転倒です。
まずは転職先での入社の時期を確認し、そのうえで余裕があれば、「ボーナス支給の翌月退職」を目指してみましょう。
◆これから転職先を探すときは、こちらの記事を参考にどうぞ。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
・記事「派遣社員になりたいとき」
ボーナス(賞与)についての法律・ルールを確認
次に、ボーナス(賞与)についての法律・ルールを確認します。
ボーナス(賞与)について法律上の決まりはナシ
結論として、ボーナス(賞与)について法律上の決まりはありません。
「ボーナスを支給しなければならない」というルールもないんです。
つまり「ボーナスを支給するかどうかは会社しだい」で、平成29年の厚生労働省の調査によれば「賞与制度がない」企業は全体の9.9%でした。
「支給金額」や「支給対象者」、「算定期間」もすべて会社が決めてよいことになります。
名称も「ボーナス」や「期末手当」、「報奨金」など、会社によってさまざまです。
ボーナス(賞与)を支給するときは「就業規則」での規定が必要
ですが「ボーナスがいつ、いくら支給されるのか?」などが決まっていなくては、社員は生活の見通しが立ちません。
そのため、ボーナス(賞与)を支給するときは、会社は「就業規則」での規定が必要となります。
労働基準法89条(作成及び届出の義務)1項
常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。
4号
臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項
この「就業規則」や「賃金規程」などに決められた社内ルールが、その会社におけるボーナスの全ルールです。
ですから「会社の業績により支給しないことがある」という規定があれば、不支給でもやむをえません。
そのかわり、就業規則に「減額するルール」が記載されていない場合は、「退職するなら減額する」といったことはできません。
退職を考えたら、まずは就業規則や賃金規定で「ボーナスのルール」を確認しましょう。
支給されるはずのボーナスが出なかったときの対応方法
記事の最後に、支給されるはずのボーナスが出なかったときの対応方法をご紹介します。
[対応方法①]まずは会社に「ボーナスが出ない理由」を確認する
まずは会社に、「支給されるはずのボーナスが出なかった」理由を確認しましょう。
もしかするとボーナスは出るものの、支給日がずれ込んでいるだけかも知れません。
そして会社側に確認するときには、できればスマホやICレコーダーなどで会話を録音してください。
このあと公的機関などに相談するときの、証拠とするためです。
[対応方法②]会社側の理由に納得できなければ労働局へ
会社側の「支給されるはずのボーナスが出なかった」理由に納得できなければ、労働局へ相談しましょう。
このときは、録音した会話が入ったスマホなどを、「証拠」として持参してください。
ただ、「公的機関に相談しづらい…」というときには、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する「一般社団法人ボイス」へ相談してみてください。
もしも、「もうこんな会社とはかかわりたくない」ということであれば、記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」を参考に、次の会社を探しましょう。
まとめ:支給前に退職を伝えるとボーナスが減額されることも!就業規則の確認を
この記事では、ボーナス(賞与)支給前に退職を伝えると減額されることがあるのか、減額されないベストなタイミングはいつなのか、ボーナスが出なかったときの対応方法などを解説してきました。
ボーナスが減額されることもあり、それが適法だということもわかりましたね。
退職を考えている方は、すぐに就業規則を確認して、「ボーナスが減額されないタイミング」を調べてみましょう。
◆「退職のルール全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「退職ルールまとめ」
◆「仕事ができないから辞めたい…」という方へのアドバイスは、記事「「仕事ができないから会社辞めたい」はNG!」でご紹介しています。
参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 岩出誠・著『働く人を守る職場六法』講談社
- 書籍 弁護士による退職代行サービス研究会『退職のプロが教えます!会社のキレイなやめ方』自由国民社
- 書籍 小畑史子・著『よくわかる労働法』ミネルヴァ書房