パート社員として働いたことがない方で、
パート社員でも残業代は出るの?有給休暇は?健康診断は受けられる?
こんな疑問はありませんか?
実際に働いてみないと、パート社員の実態はなかなかわからないですよね。
そこでこの記事では、 働く人向けに、 パート社員とはどんな働き方か、試用期間や残業代、退職、雇止め、解雇などのルールも解説していきます。
「パート社員として働きたいので、正しいルールを知りたい!」というときは、ぜひご覧ください。
パート社員とは?定義を確認
まずは、パート社員とはどんな働き方を指すのか?その定義を確認しましょう。
法律上の定義:パートタイム労働者とは簡単に説明すると「短時間労働者」
法律上の定義として、パートタイム労働者とは簡単に説明すると「短時間労働者」を指します。
くわしく解説すると、次のとおり。
- 「パートタイム労働法」の対象である「短時間労働者(パートタイム労働者)」とは、1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者
- たとえば、「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」など、呼び方は異なっても、この条件に当てはまる労働者であれば、「パートタイム労働者」としてパートタイム労働法の対象
- この「通常」の判断は、業務の種類ごとに行い、「正社員」、「正職員」など、いわゆる正規型の労働者がいれば、その労働者をいう
「短時間労働者(パートタイム労働者)」に該当する社員は、労働基準法のほかに、「パートタイム労働法」が適用されます。
ただし「パート社員」の定義は会社によってバラバラ
前項では法律上の「パートタイム労働者」の定義をご紹介しましたが、ただし「パート社員」の定義は会社によってバラバラです。
一般的には「労働時間が短い人」とする会社が多いようですが、とはいえ「フルタイムのパート社員」も存在します。
また「時給で働く人」や「主婦層の社員」を指すケースも。
そこで、パート社員として働くうえで、ぜひこちらを覚えておいてください。
「パートやアルバイト」などの雇用形態ではなく、労働日数や時間によって適用される法律・ルールが異なる
たとえば、「有給休暇が何日付与されるか」は、「正社員か、パートか」ではなく、「所定労働日数・時間がどのくらいか」です(くわしくは後述)。
パート社員として働いていて、
会社のこのルールは、ホントに正しいの?でもパート社員だからしょうがないのかな…。
とあきらめず、次項からの内容で、正確なルールを確認してみてください。
パート社員で働くときのルールを確認
次に、契約社員で働くときのルールを確認しましょう。
労働基準法の適用範囲:パート社員も含めた「すべての労働者」が対象
パートとしてはたらいている人のなかには、
でも「労働基準法」って、「正社員のための法律」なんでしょ…
と思っている人もいるようですが、実はちがいます。
「労働基準法」の対象者は「全ての労働者」。
そして「労働者」とは、雇用形態は関係なく、正社員のほかパート・アルバイト・契約社員・派遣社員など、あらゆる従業員に適用されます。
そのため「労働基準法」できめているような次のことは、パートにもあたえられるんです。
- 年次有給休暇
- 休日
- 休日出勤代
- 休憩時間
その一方で、下記については「労働基準法など、法律で決まりがない」ため、「出す・出さない、誰に出す、いくら出す」を、会社が自由に決められます。
- 交通費
- 賞与(ボーナス)
- 退職金
◆「労働基準法」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「労働基準法とは?わかりやすく解説」
試用期間:ルールは正社員と同じ、期間満了後の採用拒否は「解雇」に
パート社員にも、会社によっては試用期間があります。
そしてそのルールは正社員と同様です。
試用期間中に解雇されることも、「適正な理由があり、適正な通知をした」うえであれば適法です。
また、期間満了後の採用拒否も「解雇」にあたります。
なお、試用期間中の解雇が認められるのは、次のようなケースです。
採用するときには知ることができなかった事実が「試用期間中」に判明し、そのまま雇用することが適当でないとする「客観的合理性」が認められるような場合
→ カンタンにいうと、”採用時にわかっていれば採用しなかった事実”がわかった場合
とはいえ無制限に許されるわけではなく、「やる気が見られない」や「会社に向いていない」という抽象的な解雇理由も認められません。
「認められる」のは、たとえば下記のような理由です。
- 出退勤の状況がわるい
- 勤務成績がわるい
- 能力や性格が業務内容にあわない
- 上司の指示や命令にしたがわない
- 病欠が多いなど、健康状態がわるい
- 重大な「経歴のごまかし」をした
ただしこういった場合、会社は注意・指導を行なうことが必要。
注意・指導を行ない、改善がみられない場合にのみ、解雇を検討できるとされています。
◆「無期転換ルール」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「パートの試用期間中に解雇された…違法じゃないの?」
残業代・休日出勤手当:正社員と同じ割増率が適用
パートも残業・休日出勤をすれば、残業代・休日出勤手当が出ます。
そして割増になる場合の割増率は、正社員と同じです。
そして割増残業代の計算方法は下記のとおり。
割増残業代 = 「法定労働時間」を超えて働いた時間 × 時給 × 割増率(1.25)
なお、ここで「労働時間」には、「休憩時間」はふくまれませんので注意してください。
◆「パート社員の残業代ルール」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「パートは残業代が出ない?割増の計算方法なども紹介」
有給休暇:パート社員にもありますが、付与日数が少ないことも
まず、次の2つの条件をみたせば、パートも有給休暇はもらえます。
- はたらきはじめてから、6ヶ月たっている
- その期間の全労働日の8割以上出勤している
毎日出勤するパートだけでなく、「シフト制で週に1日だけはたらく」という場合でももらえます。
ただし「付与される日数」が変わることに。
まずは、一般の社員(いわゆる正社員)や、パートでも次の時間・日数のどれかではたらいている場合。
- 所定労働時間が、週30時間以上
- 所定労働日数が、週5日以上
- 1年間の所定労働日数が、217日以上
この人たちには、下表のように有給休暇が与えられます。
勤務期間 | 半年 | 1年半 | 2年半 | 3年半 | 4年半 | 5年半 | 6年半以上 |
有給休暇の 付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 15日 | 18日 | 20日 |
次に、パート社員などで、前項の時間や日数よりも少なくはたらいている(週30時間未満・週4日以下)ときは、はたらく日数に合わせて、下表の有給休暇日数が付与されます。
なお、所定労働日数が「週で決まっている」ときは「週所定労働日数」を、それ以外の場合は「1年間の所定労働日数」で判断します。
◆「パート社員の有給休暇ルール」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「パートは有給休暇がもらえない?取得義務化などのルールも解説」
健康診断:1年以上契約・所定労働時間3/4以上なら会社に実施義務が
パート社員であっても、次の要件をどちらも満たすときには、会社側は健康診断を受診させる義務があります。
- 契約期間が1年以上
- 週の所定労働時間が正社員の3/4以上
このルールは労働安全衛生法で決められています。
また、週の所定労働時間が「正社員の1/2以上3/4未満」のパート社員は、「健康診断の実施が望ましい」とされます。
費用についての結論としては、「定期健康診断を実施する義務がある社員分の費用は、会社負担」になります。
もし、労働時間が短いなどで「定期健康診断」の対象外となった社員であっても、自費で受診することは可能です。
◆「パート社員の健康診断ルール」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「パート社員も健康診断を受けられる?」
パート社員と無期転換ルール
次に、パート社員のなかでも「有期契約社員」に適用される”無期転換ルール”をご紹介します。
無期転換ルール:有期契約の契約社員が無期契約に転換できる
無期転換ルールとは、次のようなルールのことです。
労働契約法の改正によって、2013年4月からこの「無期転換ルール」が使えるようになりました。
そして、社員が「無期転換の申し込み」をすれば、会社は断ることができません。
申し込んだ時点での「有期労働契約」が終了した翌日から、無期に転換です。
また「5年を超えたら自動的に無期に転換」となるわけではなく、「労働者が申し込む」ことが必要な点もポイント。
ただし、無期転換したからといって正社員になれるわけではありません。
あくまで無期契約となるだけで、給与や労働時間などの条件は変わらないことがほとんどです。
無期転換ルールについては、厚生労働省が作成したこちらの動画が、わかりやすく教えてくれます。
◆「無期転換ルール」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「無期転換ルールのデメリットとは?」
クーリング期間:無期転換の時期に影響することも
契約社員のクーリング期間とは、一定期間あることで、それ以前の契約期間が、無期転換の「通算対象」からのぞかれてしまう「無契約期間」のことです。
「無契約期間」とは、会社を退職して「労働契約をむすんでいない期間」。
無期転換ルールでは、「一度退職 → また同じ会社にもどる」というケース、つまり「無契約期間」がある場合でも、退職前の契約期間を「通算対象」と認めています。
ただし「無契約期間」があまり長いようなら、退職前の期間を「通算対象」にふくめないのが「クーリング」の考え方です。
「転換逃れ」のためにクーリング期間を設ける会社もあるので、注意しましょう。
◆「クーリング期間」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「契約社員のクーリング期間とは?」
パート社員の退職・雇止め・解雇
次に、パート社員の退職・雇止め・解雇ルールをご紹介します。
退職:有期契約では原則、契約期間中にはできない
パート社員として働く人には、「有期雇用(労働)契約」と「無期雇用(労働)契約」の両ケースがあります。
- 有期雇用(労働)契約:「3ヶ月」や「6ヶ月」など、期間の定めのある労働契約のこと。更新されている場合も含む
- 無期雇用(労働)契約:期間の定めのない労働契約のこと
このうち「有期労働契約」ではたらく人は、原則として、契約期間中に退職することはできません。
これは、「会社と社員が合意して、契約期間を決めている」とみなされるため。
ただし次の場合は、それぞれのケースで退職が可能です。
- 契約期間が1年を超えるとき:はたらきはじめて1年たてば、いつでも退職の申し入れができる
- 契約期間が1年以内のとき:契約が更新されたら、いつでも退職の申し入れができる
また契約期間中でも、「やむを得ない事由」をふくめた以下の場合には、退職ができます。
ただ、「やむを得ない事由」があっても、「退職の理由」が社員側の過失によるもので、会社側に具体的な損害が発生した場合は、損害賠償の請求をされる可能性があるので注意してください。
◆「退職のルール」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「退職ルールまとめ」
雇止め:有期契約の満了時に更新しないことで、認められないケースも
「雇止め(雇い止め)」とは、わかりやすくいうと次のことを指します。
雇止めとは、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)において、契約期間の満了時点で更新を行わないこと
本来、「雇止め」を行うことは、会社の自由。
しかし労働者保護の観点から、次のような場合は「雇止め」が制限され、認められません(労働契約法19条)。
- 有期労働契約が何度も更新され、更新しないことが解雇と同様といえる場合
- 有期労働者が労働契約の更新がなされるという合理的な期待を持っている場合
このどちらかに該当するときは、「合理的な理由」と「社会通念上相当性」がなければ、以前の契約と同一条件での更新が成立します。
◆「雇止め」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「雇止めとは?制限されるケースや解雇との違いなどわかりやすく解説」
パート社員も解雇されると「会社都合」に
パートの仕事を解雇された場合、次の項目に該当するため「特定受給資格者」であり「会社都合退職」となります。
特定受給資格者の範囲
2.「解雇」等により離職した者
(1) 解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く。)により離職した者
(ハローワークインターネットサービスより)
ただし「社員側に重大な責任がある解雇」の場合は「自己都合退職」扱いです。
ちなみに「自己都合退職」と「会社都合退職」では、下表のように違いがあります。
失業手当 給付制限期間 | 失業手当 給付日数 | 国民健康保険料の 軽減措置 | |
---|---|---|---|
1.自己都合退職 | 7日+3ヶ月 | 90日~150日 | なし |
2.会社都合退職 | 7日 | 90日~330日 | あり |
◆「パートが解雇されたときの対応」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「パートの仕事を解雇されたら離職理由は「会社都合」になる?」
パート社員で働くうえでの注意点
次に、契約社員で働くうえでの注意点をご紹介します。
もし、以下のようなことで悩んだときは、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する「労働局」や「一般社団法人ボイス」へ相談してみてください。
正社員登用制度:法律上のルールはない
正社員登用制度とは、おなじ会社ではたらく、契約社員やパート・アルバイトなどの「非正規社員」から、正社員に雇用形態が変更される制度です。
試験などに合格した「非正規社員」の雇用契約を「正社員」に切り替えます。
ただし「正社員登用制度」は、法律などでルールが決まっていないため、方法や基準などはすべて会社しだいです。
事例としては、日産自動車が「本社などの全契約社員約800人を、2021年4月から原則として正社員登用する」と発表しています。
厚生労働省の「労働経済動向調査(令和3年2月)」によれば、正社員登用制度のある会社の割合は次のとおり。
- 正社員登用制度あり:77 %(うち登用実績あり:41 %、実績なし36 %)
- 正社員登用制度なし:22 %(うち登用実績あり:6 %、実績なし16 %)
正社員登用の基準・条件の「実施する会社の割合ランキング」は、下記のとおりです。
- 1位:本人の希望(76.2 %)
- 2位:勤務評定(60.7 %)
- 3位:上司の推薦(43.0 %)
- 4位:一定期間の継続勤務(33.0 %)
- 5位:面接(26.8 %)
- 6位:試験(8.3 %)
- 7位:講習や研修(40 %)
正社員登用の基準・条件として実施する会社の割合ランキング(複数回答可)
(東京都産業労働局「平成27年度企業の正社員化取組事例集」より)
◆「正社員登用制度」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「正社員登用制度とは?」
人手不足でパートの仕事が辞められないときの対応方法
パートの仕事をやめたいけれど、「人手不足だから」とやめさせてくれない…、こんなときは次の方法を試してみてください。
- 「やむを得ない状態」なら、会社にそのことを伝える
- 労働局など公的機関に相談する
「やむを得ない状態」とは、たとえば以下のような状態。
- 仕事をつづけることで、社員の身体・生命に対する危険が予測される場合
- 近親者の介護が必要な場合
- 家庭の事情が急激に変化した場合
それでも辞められないなら、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する「労働局」や「一般社団法人ボイス」へ相談することをおすすめします。
◆「人手不足で辞められないときの対応方法」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「人手不足でパートの仕事が辞められない…どうすればいい?」
パート社員についてのデータ
記事の最後に、パート社員についてのデータをご紹介します。
退職金:制度があるパート社員は8%
厚生労働省の調査によれば、パート社員のうち、「現在の会社に退職金がある」と答えたのは8.0%でした。
「現在の会社に退職金がある」と答えた割合
・正社員:77.7 %
・出向社員:74.8 %
・嘱託社員:19.5 %
・契約社員:20.1 %
・パート:8.0 %
・臨時労働者:10.8 %
・派遣社員:17.0 %
(厚生労働省の「令和元年度 就業形態の多様化調査」より)
まとめ:パート社員の正しいルールを知りましょう
この記事では、 働く人向けに、 パート社員とはどんな働き方か、試用期間や残業代、退職、雇止め、解雇などのルールも解説してきました。
パート社員として働くときは、ぜひ記事を参考に正しいルールを把握しましょう。
会社に”いいように使われてしまう”ことがなくなりますよ。
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・「派遣社員ではたらきたい」ときは…「派遣社員になりたい!」ときはどうする?
参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 労働問題研究会・著『働く人のための法律ガイドブック』労働教育センター
- 書籍 佐々木亮・著『武器としての労働法』KADOKAWA
- 書籍 小島彰・著『パート・契約社員・派遣社員の法律問題とトラブル解決法』KADOKAWA
- 書籍 布施直春・著『Q&A 退職・解雇・雇止めの実務』労働調査会