念願だった会社に入社したけれど、
最初の3ヶ月は試用期間…、延長されることはあるの?残業代は出る?社会保険に加入できるのかなあ?
こんな疑問をお持ちの方はいませんか?
「試用期間のルール」って、あまり知られていませんよね。
そこでこの記事では、 働く人向けに、試用期間とはどんな制度か、定義、期間の長さ、延長、退職、本採用拒否などのルールも解説していきます。
「試用期間中のルールを正しく知りたい!」というときは、ぜひご覧ください。
◆もし会社が、試用期間を正しいルールで運用しないなら、こちらの記事でご紹介する「労働局」や「一般社団法人ボイス」へ相談してみてください。
・記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」
◆次の会社を探したいときには、こちらの記事が参考になります。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
・記事「派遣社員になりたいとき」
試用期間とは?法律上の定義と対象を確認
まずは、試用期間の法律上の定義と、適用される対象を確認しましょう。
法律上の定義はナシ、一般的には「試験的な採用期間」
試用期間に、法律上の定義はありません。
これは試用期間が、「法律によって定められたルール」ではないため。
一般的には、次のような期間のことをいいます。
試用期間とは、社員をはじめから正式採用とせず、3ヶ月などの期間を限定して、その期間中に「社員としての適正」を確認する「試験的な採用期間」のこと
試用期間のルールの「正当性」は過去の裁判例(判例)で決められる
法律上の決まりがないため、試用期間のルールは会社ごとに決められます。
期間の長さや延長の有無などは、すべて会社が決めてOKです。
とはいえ、どんなルールでも認められるわけではありません。
試用期間のルールが正しいかどうか(正当性)は、過去の裁判例(判例)で決められます。
一方、試用期間中でも、会社と社員は”労働契約”を結んでいます。
ですから労働時間や残業代など「働くうえでのルール」は、本採用後と同じと考えてOKです。
正社員も非正規社員(契約社員・パート)も適用されるルールは同じ
試用期間を「どの社員に適用させるか」は、会社の自由です。
ただし、適用される試用期間のルールは、正社員も非正規社員(契約社員・パート社員)でも同じとなります。
これは試用期間中であっても、会社と社員は”労働契約”を結んでおり、その関係は「本採用後の労働契約と同一」とされているため。
労働契約の内容の”最低基準を決めた法律”が「労働基準法」で、その対象は正社員やパートなどすべての「労働者」ですので、ルールも共通になるのです。
試用期間の基本ルール:期間の長さと延長
次に、期間の長さや延長など、試用期間の基本ルールをご紹介します。
試用期間の長さ:法律上の決まりはないが長すぎると「無効」に
試用期間の長さには、法律上の決まりはありません。
ですが判例によれば、あまり長い期間だと「無効」とされます。
これは、「試用期間中は社員の地位が不安定」となるため。
あまり長く、”不安定な状態”にするのはよくない、ということです。
実際のデータでは、下表のとおり、試用期間の長さは3ヶ月と6ヶ月の会社が8割以上となっています。
(少し古いですが、2014年に労働政策研究・研修機構が調査したデータです)
1ヶ月程度 | 2ヶ月程度 | 3ヶ月程度 | 4ヶ月程度 | 5ヶ月程度 | 6ヶ月程度 | 7ヶ月~1年 程度 | 1年超 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
新卒採用の場合 | 4.7% | 8.4% | 66.1% | 0.9% | 0.2% | 18.3% | 1.4% | 0.1% |
中途採用の場合 | 6.2% | 8.3% | 65.7% | 0.7% | 0.1% | 16.5% | 2.1% | 0.3% |
(労働政策研究・研修機構「従業員の採用と退職に関する実態調査」より)
もしも会社が、試用期間のルールを守らないなら、”一般社団法人ボイス”への相談してみましょう。
メールか電話で、専門家に無料相談できます。
試用期間の延長:原則できない
試用期間中は”労働者の地位が不安定”といえるため、原則として延長は許されません。
ただし、以下の3点をすべて守っていれば、延長が認められる場合もあります。
- 「〇〇の場合には試用期間を延長することがある」と、就業規則などで規定している
- 試用期間を延長することに、合理的な理由や特段の事情がある
- 延長する前に、本人に同意をとっている
上記2の「合理的な理由」には、次のようなものがあります。
- 試用期間中に本人が長期欠勤したため、適正を判断するだけの期間がなかったため
- 試用期間で「不適格」と判断された社員を本採用拒否とはせず、配置転換によってさらに職務適格性を見出すため
◆「試用期間の延長」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「試用期間が延長された…違法じゃないの?」
試用期間中に働くうえでのルール
次に、試用期間中に働くうえでのルールをご紹介します。
試用期間の明示:会社は求人票などに「試用期間の有無・期間」の明示が必要
会社がハローワークへの求人申し込み、求人広告の掲載を行う場合、求人票や募集要項には「労働条件」を明示することが必要です(職業安定法第5条の3)。
そして「労働条件」には「試用期間の有無と期間」もふくまれます。
また試用期間中の給料などが、本採用後とちがうときは、それも記載しなくてはなりません。
求人票になんの記載もないのに、
じゃあ半年は試用期間ね…
ということがあったら、記事「仕事の悩みが相談できない方へ」でご紹介する「労働局」や「一般社団法人ボイス」へ相談してみてください。
試用期間中の社員の身分:解約権留保つきの労働契約
試用期間中の社員の身分は、「解約権留保つきの労働契約」となります。
「解約権留保つきの労働契約」」とは、
「試用期間中に会社から”不適格”と判断されると、本採用にはならない」という、条件つきの労働契約
試用期間ののち「本採用」となった場合にようやく、何の条件もつかない「労働契約」に切り替わります。
つまり、試用期間が終了するまでは、「条件つきの社員」ということですね
そのため会社が「試用期間中の社員用」として、給料や福利厚生などのルールを、本採用された社員とは別につくることも許されています。
試用期間中のみ、本採用後とくらべ「給料の額が低い」、「月給制ではなく時給制」ということも問題なし。
とはいえ、「試用期間中の社員」も「労働者」ですので、労働基準法が適用されます。
最低賃金を下回ることは許されませんし、残業や休日出勤をしたら割増賃金を支払うことが必要です。
試用期間中の労働保険・社会保険:要件を満たすなら加入しなければならない
試用期間中でも、労働保険(雇用保険、労災保険)・社会保険(健康保険、厚生年金、介護保険)の要件を満たすなら、加入しなければなりません。
もし会社が、
試用期間中は、会社の社会保険に入れないから、国民健康保険でお願いね…
というのは違法です。
記事「仕事の悩みが相談できない方へ」でご紹介する「労働局」や「一般社団法人ボイス」へ相談してみてください。
試用期間中の給料の支払い:本採用後より安くすることが可能
試用期間中でも、もちろん給料は支払われます。
ただし、試用期間中の給料を、本採用後の給料より低くすることが認められています。
ちなみに、試用期間中は、会社が労働局に申請して許可がでれば、最低賃金の20%まで時給を減らすことも可能(厚生労働省:最低賃金の適用される労働者の範囲)。
とはいえ、この申請はほとんど出されたことがないそうですので、あまり気にしなくてOKです。
試用期間中の残業代:本採用後と同じ割増率で支給
試用期間中でも、残業をすれば残業代は出ますし、本採用後と同様で1.25倍の割増率となります。
試用期間だからといって、残業代の割増をしなかったり、最低賃金以下ではたらかせれば、会社側の労働基準法・最低賃金法違反です。
なかには、
会社から「試用期間は、残業は禁止」って言われたよ。残業自体、しちゃいけないんじゃないの?
という方もいますが、残業をすること自体は法律で禁止されていませんので問題なし。
これはあくまで「社内ルール」です。
まだ仕事に慣れていない、試用期間中の社員に残業までさせるのは「人件費がもったいない」ということなのでしょう。
◆「試用期間中の残業代」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「試用期間中の残業代は出ない?」
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試用期間中の退職・解雇と期間後の本採用拒否
次に、試用期間中の退職・解雇と期間後の本採用拒否についてご紹介します。
“試用期間中の退職ルール”は本採用後と同じ
試用期間中の退職ルールは、本採用後と同じです。
もしかすると、「試用期間」という名称から、
試用期間 = お試し期間でしょ?辞めるのも簡単じゃないの?
と思うかもしれませんが、「本採用後」と同じで、簡単ではありません。
試用期間中でも、「会社と労働契約が結ばれている」ことに変わりはないからです。
無期労働契約の場合は、会社に辞意を伝えればいつでも退職が可能。
有期労働契約の場合は、原則として契約期間中に退職することはできませんが、次のケースなら退職が可能です。
- 契約期間が1年を超えるとき:はたらきはじめて1年たてば、いつでも退職の申し入れができる
- 契約期間が1年以内のとき:契約が更新されたら、いつでも退職の申し入れができる
もし「会社を辞められない」なら、退職代行サービスという方法も。
おすすめは、弁護士法人運営の”退職110番”で、未払い金請求や慰謝料請求など各種請求・交渉にも完全対応です。
◆「試用期間中の退職ルール」や「退職ルール全般」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「試用期間中に「体調不良」を理由に退職できる?」
・記事「退職ルールまとめ」
試用期間中の解雇でも「正当な理由(指導)」と「解雇予告」が必要
試用期間中の解雇であっても、本採用後と同じで「正当な理由」と「解雇予告」が必要です。
ただし、試用期間では本採用後の社員の解雇よりも、「正当な理由の範囲」が広く認められます。
試用期間中の解雇が認められるのは、次のようなケース。
採用するときには知ることができなかった事実が「試用期間中」に判明し、そのまま雇用することが適当でないとする「客観的合理性」が認められるような場合
→ カンタンにいうと、”採用時にわかっていれば採用しなかった事実”がわかった場合
とはいえ無制限に許されるわけではなく、「やる気が見られない」や「会社に向いていない」という抽象的な解雇理由も認められません。
認められるのは、たとえば下記のような理由です。
- 出退勤の状況がわるい
- 勤務成績がわるい
- 能力や性格が業務内容にあわない
- 上司の指示や命令にしたがわない
- 病欠が多いなど、健康状態がわるい
- 重大な「経歴のごまかし」をした
ただしこういった場合でも、会社は注意・指導を行なうことが必要。
注意・指導を行ない、改善がみられない場合にのみ、解雇を検討できます。
◆「試用期間中の解雇」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「パートの試用期間中に解雇された…違法じゃないの?」
試用期間後の本採用拒否も「解雇」になる
試用期間後には、会社から本採用されないこともあります。
これを会社側は「本採用の見送り」や「本採用の拒否」ともよびます。
試用期間後の本採用拒否も、会社側の「解雇」になります。
そのため本採用拒否も簡単にはできず、「正当な理由」と「解雇予告」が必要。
会社側は指導も行わないと、「適正な本採用拒否」とはなりません。
「一度指導されたきりで、あとは教えてもらえなかった」といったケースでは、指導を行ったとは言えません。
◆「試用期間後の本採用拒否」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「試用期間後に本採用されないこともある?」
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試用期間の各種データ
記事の最後に、試用期間の各種データをご紹介します。
試用期間がある会社は8割以上
少し古いデータですが、2014年に労働政策研究・研修機構が調査した結果によれば、8割以上の会社で「試用期間」があります。
採用した社員への試用期間がある会社:86.9%
採用した社員への試用期間がない会社:12.1%
(労働政策研究・研修機構「従業員の採用と退職に関する実態調査」より)
12%の会社で試用期間後に本採用されない事例あり(ここ5年間のデータ)
前項と同じ調査によれば、12%の会社で、「試用期間後に本採用されない事例」があります。
試用期間後に本採用しないことがある会社:63.1%
〈内訳〉
・本採用しないことがあり、ここ5年間に事例がある会社:12.2%
・本採用しないことがあるが、ここ5年間に事例はない会社:50.9%
(労働政策研究・研修機構「従業員の採用と退職に関する実態調査」より)
そして、試用期間後に本採用されないときに多い、判断理由の割合は以下のとおり。
〈本採用しない場合の判断理由ランキング〉
・1位:欠勤などの勤務状況(86.4%)
・2位:素行(73.7%)
・3位:仕事上の知識、能力(72.8%)
・4位:健康状態(68.3%)
まとめ:試用期間の正しいルールを知りましょう
この記事では、 働く人向けに、試用期間とはどんな制度か、定義、期間の長さ、延長、退職、本採用拒否などのルールも解説していきます。
ぜひ記事を参考に、試用期間の正しいルールを知りましょう。
そして本採用を目指して働きましょう!
◆就活中の方、採用が内定している方には、こちらの記事もおすすめです。
・記事「オワハラ(就活終われハラスメント)とは?」
・記事「新卒応援ハローワークとは?」
・記事「採用内定を取り消されたらどうすればいい?」
◆もし会社が、試用期間を正しいルールで運用しないなら、こちらの記事でご紹介する「労働局」や「一般社団法人ボイス」へ相談してみてください。
・記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」
◆次の会社を探したいときには、こちらの記事が参考になります。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
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参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 林智之・著『職場の法律トラブルと法的解決法158』三修社
- 書籍 布施直春・著『Q&A 退職・解雇・雇止めの実務』労働調査会
- 書籍 小島彰・監修『管理者のための労働法の基本と実務』三修社