新しい会社で働きはじめて、
試用期間中なんだけど、もう退職したい…。「体調不良」が理由でも、退職できるの?
こんな悩みをもつ方はいませんか?
「試用期間」のルールをくわしく知る機会は、なかなかないですからね。
そこでこの記事では、働く人向けに、試用期間中に「体調不良」を理由に退職できるのか、即日退職することは違法なのか、さらに試用期間の退職ルールまでご紹介していきます。
「試用期間中だけど、もう辞めたい…」と悩んでいたら、ぜひご覧ください。
◆「退職のルール全般」・「試用期間のルール・情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「退職ルールまとめ」
・記事「試用期間とは?期間の長さや本採用拒否などのルールも解説」
試用期間中に「体調不良」を理由に退職できる?即日退職は違法?
まずは、試用期間中に「体調不良」を理由に退職できるのか、即日退職は違法なのかなどを確認しましょう。
試用期間中に「体調不良」を理由に退職できます
試用期間中でも、「体調不良」を理由に退職できます。
ただし、退職ルールは「無期労働契約か、有期労働契約か」で変わりますので、それぞれのケースを以下で解説します。
「正社員かパート・契約社員か」ではなく「無期か有期か」ですので注意!
「無期労働契約か、有期労働契約か」を確認する方法は、働きはじめたときに会社から明示された「労働条件通知書」や、とりかわした「雇用契約書」などを調べること。
書類の「契約期間」の欄が”期間の定めあり”なら「有期労働契約」、”期間の定めなし”なら「無期労働契約」です。
①無期労働契約の場合
無期労働契約の場合は、会社に、
体調不良のため、会社を退職させてください…。
と辞意を伝えれば退職できます。
できれば、会社に申し出てから退職するまでの日数は、就業規則にしたがいましょう。
多くの会社の就業規則に「退職する場合は、○日前(○ヶ月前)までに届け出ること」と規定されていますね。
ですが「体調不良で、できるだけ早く退職したい」ときは、会社にで申し出てから2週間後に退職すれば、法律上で問題はありません。
②有期労働契約の場合
有期労働契約の場合は、前述の無期の場合とはちがい、原則として契約期間中に退職することはできません。
ただし次のケースでは、契約期間や状態によって退職が可能です。
- 契約期間が1年を超えるとき:はたらきはじめて1年たてば、いつでも退職の申し入れができる
- 契約期間が1年以内のとき:契約が更新されたら、いつでも退職の申し入れができる
「試用期間中」だと、上記2が該当する可能性が高いですね。
また契約期間中でも、以下の場合には退職ができます。
「体調不良」の程度にもよりますが、「やむを得ない事由」にあたるほどであれば、契約期間中でも退職が可能です。
とはいえ「やむを得ない事由」があっても、「退職の理由」が社員側の過失によるもので、会社側に具体的な損害が発生した場合は、損害賠償の請求をされる可能性があるので注意してください。
「退職したいけれど、損害賠償が不安」というときは、記事「会社・仕事の悩みの相談先を紹介」でご紹介する「労働局」へ相談してみてください。
また”一般社団法人ボイス”なら、メールか電話で専門家に無料相談できます。
試用期間中の即日退職は「会社側が同意」すれば違法ではありません
試用期間中の即日退職(退職を伝えた日にやめること)は、「会社側が同意」すれば違法ではありません。
これは「無期労働契約・有期労働契約」のどちらであっても同じです。
ですから、「体調不良ですぐに退職したい!」というときは、会社に事情を話して「即日退職」できないか確認してみてください。
もし「会社を辞められない」なら、退職代行サービスという方法も。
おすすめは、弁護士法人運営の”退職110番”で、未払い金請求や慰謝料請求など各種請求・交渉にも完全対応です。
「試用期間中の退職」は転職に影響する?履歴書には書くべき?
次に、試用期間中の退職は転職に影響するのか、履歴書には書くべきなのか確認しましょう。
「試用期間中の退職」は転職でのデメリットになる可能性大
「試用期間中の退職」は、転職でのデメリットになる可能性大です。
元人事担当者として言わせてもらうと、やはり会社側は「すぐに辞めそうな人を避けたい」もの。
短期間で退職している人は敬遠します。
よほどのスキルをもつ人なら別ですが、同スキルなら、人事担当者はやはり「勤務した期間が長い・転職回数が少ない人」を選びがち。
「試用期間中の退職」が一度だけならまだいいですが、何度もあるようだと、印象はかなり悪いです。
ですから転職時には、「試用期間中の退職をくり返さないために、何を気をつけるべきか?」をよく考えて会社を選んでください。
不安なときは、応募書類作成から面接、内定までを無料でサポートしてくれる転職エージェントを利用しましょう。
おすすめは”DODAエージェントサービス”です。
履歴書には書くべき!書かないと「経歴詐称」に
デメリットにはなりがちですが、とはいえ試用期間中に退職したことも、履歴書には書きましょう。
あまり短い期間でヤメていると、転職先のウケが悪そう…。だったら履歴書には書かないほうがいいかな?
と思う気持ちもわかりますが、それは「経歴詐称」です。
それで転職できたとしても、バレたら「解雇」される理由になります。
また退職を履歴書に書かないと、無職の期間が不自然に空いてしまうため、面接で、
この期間は、何をされていたんですか?
と聞かれることに。
ここで不自然なウソをつくと、もし入社できたとしても、ずっとウソをつきつづけなくてはなりません。
それならば、「試用期間中に退職した理由」をよく考え、そのうえで雇ってくれる会社を探していきましょう。
もし工場のお仕事を探すなら、”工場求人ナビ”がおすすめ。
1971年創業の日総工産が、日本全国の工場系求人を紹介してくれます。
転職エージェントの利用がおすすめ
試用期間中に退職してから、転職先が見つからない…。面接でもどう説明すればいいんだろう?
というときは、転職エージェントの利用がおすすめです。
通常の転職だと、はじめに履歴書・職務経歴書などでの書類審査があります。
「試用期間中の退職」をした人は、書類審査で落とされてしまうことが多いかと思います。
その理由は前述のとおり、人事担当者は「すぐに辞めそうな人を避けたい」から。
転職エージェントを利用すれば、エージェントから「試用期間中に退職してしまったデメリットを上回るメリット」を、会社に説明してもらえます。
ほかにも「面接でどう説明すれば印象が良くなるか」など、いろいろと教えてもらえますよ。
「なかなか転職がうまくいかない」というときは、ぜひ一度転職エージェントを利用してみてください。
◆「転職エージェントの探し方とおすすめエージェント」は、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
「試用期間」の法律上の退職ルールを確認
次に、「試用期間」の法律上の退職ルールを確認していきましょう。
[試用期間の退職ルール①]本採用時とルールは同じ
試用期間の退職ルールは、本採用時と同じです。
これは試用期間中であっても、会社と社員の関係は「労働契約(解約権留保つきの労働契約)」であり、「本採用後の労働契約と同一」とされているため。
また、正社員やパート・契約社員など雇用形態も関係なく、すべてのルールが共通です。
[試用期間の退職ルール②]退職の方法は辞職と合意退職の2つ
はじめにご紹介したとおり、試用期間中でも退職はできます。
そして退職の方法としては、大きく次の2つにわけられます。
上記1が、会社に申し出て、その2週間後などに退職する方法。
そして上記2が、即日退職する方法です。
もしかすると、「試用期間」という名称から、
試用期間 = お試し期間でしょ?
辞めるのも簡単じゃないの?
このように思うかもしれませんが、「本採用後」と同じで、簡単ではありません。
「試用期間」といっても、「会社と労働契約が結ばれている」ことに変わりはないからです。
ですから会社側が、カンタンに解雇することもできません。
◆「試用期間中の解雇」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「パートの試用期間中に解雇された…違法じゃないの?」
[試用期間の退職ルール③]退職届が必要かは会社による
試用期間中の退職に退職届が必要かどうかは、その会社によります。
会社によっては「退職時の定形書類」が決まっています。
上司に「退職の意思」を伝えるときに、「どんな書類を出せばいいのか」も確認しましょう。
上司から「退職届(退職願)を出してください」と言われたら、それを出します。
試用期間だからといって「必ずこの書類がなければ退職できない」というものはありませんので、安心してください。
◆「退職願と退職届の違い、書き方」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「退職願・退職届・辞表の違いは?」
[試用期間の退職ルール④]ほとんどの場合、失業保険はもらえない
試用期間中に退職したら、ほとんどの場合、失業保険(失業給付、基本手当とも)はもらえません。
なぜなら「辞職」した場合で、失業保険をもらうには、雇用保険に加入した期間(会社ではたらいた期間)が12ヶ月以上必要なため。
ただし、会社側から「解雇」された場合や、「辞職」でも「給料が大幅に下げられた」などの理由で特定受給資格者・特定理由離職者になった場合は、6ヶ月以上でOKとなります。
◆「特定受給資格者・特定理由離職者」についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。
・記事「特定受給資格者と特定理由離職者の違いとは?」
試用期間の基本ルールを確認
記事の最後に、試用期間の基本ルールを確認していきましょう。
[試用期間の基本ルール①]試用期間とは
「試用期間」とは、法律的な定義はありませんが、一般的に次のような期間のことをいいます。
試用期間とは、社員をはじめから正式採用とせず、3ヶ月などの期間を限定して、その期間中に「社員としての適正」を確認する「試験的な採用期間」のこと
労働基準法に「平均賃金を算出するときは除外する(12条)」、「14日以内なら解雇予告手当は不要(21条)」として出てきますが、「試用期間」としては法的なルールは一切決められていません。
そのため、これまでの裁判例(判例)によってルール化されています。
[試用期間の基本ルール②]正社員と非正規社員ではルールは同じ
正社員と非正規社員(契約社員・パート・アルバイト・派遣社員など)では、「試用期間のルール」は変わりません。
これは試用期間中であっても、会社と社員の関係は「労働契約(解約権留保つきの労働契約)」であり、「本採用後の労働契約と同一」とされているため。
この「労働契約」の最低基準のルールを決めた法律が「労働基準法」で、その対象は「労働者」です。
「労働者」には、正社員・非正規社員すべてがふくまれるため、「試用期間のルールも同じ」となります。
[試用期間の基本ルール③]試用期間中の身分
試用期間中の社員の身分は、「解約権留保つきの労働契約」となります。
「解約権留保つきの労働契約」」とは、
「試用期間中に会社から”不適格”と判断されると、本採用にはならない」という、条件つきの労働契約
試用期間ののち「本採用」となった場合にようやく、何の条件もつかない「労働契約」に切り替わります。
つまり、試用期間が終了するまでは、「条件つきの社員」ということですね
そのため会社が「試用期間中の社員用」として、給料や福利厚生などのルールを、本採用された社員とは別につくることも許されています。
試用期間中のみ、本採用後とくらべ「給料の額が低い」、「月給制ではなく時給制」ということもOKです。
しかし、「試用期間中の社員」も前項でご紹介したように「労働者」ですので労働基準法が適用されます。
最低賃金を下回ることは許されませんし、残業や休日出勤をしたら割増賃金を支払うことが必要です。
また試用期間中でも、雇用保険・社会保険には加入しなければなりません。
もし会社が、
試用期間中は、会社の社会保険に入れないから、国民健康保険でお願いね…
というのは違法です。記事「仕事の悩みが相談できない方へ」で紹介している機関にご相談ください。
[試用期間の基本ルール③]期間の長さと延長・更新
試用期間の長さもやはり、労働基準法などの法律では決まっていません。
ただし判例によれば、あまり長い期間では「無効」に。
実際のデータでは最も多い会社が3ヶ月、次が6ヶ月となっています。
1ヶ月程度 | 2ヶ月程度 | 3ヶ月程度 | 4ヶ月程度 | 5ヶ月程度 | 6ヶ月程度 | 7ヶ月~1年 程度 | 1年超 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
新卒採用の場合 | 4.7% | 8.4% | 66.1% | 0.9% | 0.2% | 18.3% | 1.4% | 0.1% |
中途採用の場合 | 6.2% | 8.3% | 65.7% | 0.7% | 0.1% | 16.5% | 2.1% | 0.3% |
(労働政策研究・研修機構「従業員の採用と退職に関する実態調査」より)
そして試用期間の延長や更新は原則、できません。
就業規則などで規定され、本人が同意すれば可能ですが、規定されている場合であっても特段の事情が必要とされています。
試用期間を何度も更新する会社は「ブラック」ですので、気をつけてください
[試用期間の基本ルール④]導入する会社は8割以上
少し古いデータですが、2014年に労働政策研究・研修機構が調査した結果によれば、8割以上の会社で「試用期間」があることがわかりました。
採用した社員への試用期間がある会社:86.9%
採用した社員への試用期間がない会社:12.1%
(労働政策研究・研修機構「従業員の採用と退職に関する実態調査」より)
まとめ:試用期間での退職は「体調不良」でもできます!ただしルールをよく理解したうえで
この記事では、働く人向けに、試用期間中に「体調不良」を理由に退職できるのか、即日退職することは違法なのか、さらに試用期間の退職ルールまでご紹介してきました。
試用期間での退職は「体調不良」でもできます!
ただ、記事を参考に、ルールをよく理解したうえで行ないましょう。
◆「退職のルール全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「退職ルールまとめ」
◆「試用期間のルール・情報全般」を知りたい方には、こちらの記事もオススメです。
・記事「試用期間とは?期間の長さや本採用拒否などのルールも解説」
◆「次は失敗したくない!」なら、こちらで次の会社を探してみてください。
・記事「失敗しない転職先の探し方・見つけ方!」
・記事「派遣社員になりたいとき」
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参考文献
この記事では、下記の書籍を参考にさせて頂いております。
- 書籍 布施直春・著『Q&A 退職・解雇・雇止めの実務』労働調査会
- 書籍 小島彰・監修『管理者のための労働法の基本と実務』三修社